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スピリチュアルズ ジャーニー 寮  作者: waku


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浄化後の平穏と新たなる課題

 アパート周辺の心霊スポトの浄化を終え、帰還する寮達。寮たちは、自分たちが心霊現象に慣れ過ぎている事を改めて実感する事になっていた。

 寮たちはアパート周辺に広がる心霊スポット——公園、路地裏、そして廃墟と化した洋館の浄化に成功し、霊道やポータルの封印を終えた。闇の中に隠れていた霊的な存在は消え、空気がようやく静かに落ち着いた。皆が長い戦いを終えた達成感に包まれていたが、同時に、霊たちとの接触で蓄積した疲労が体の隅々に広がっていた。


アパートに戻った寮たちは、それぞれが重い足取りで部屋に入り、腰を下ろした。何も言わずにただ座り込むその姿には、安堵と疲労が混ざり合った表情が浮かんでいる。


「寮君、大変だったけど、1日で解決できて良かったね」と陽菜が微笑みを浮かべた。しかし、その目の奥にはまだ薄い緊張が残っており、ほんの少しの油断も許されないといった慎重さが伺える。


 春香も穏やかに頷き、「この地域が平穏を取り戻すことを心から願っているわ」と、静かに続けた。彼女の言葉には、単なる祈り以上の、個人的な思いが強く込められていた。自分たちが霊的なものと向き合う中で、どれだけの人々が日常を取り戻せるか。それが彼女の心を支えているのかもしれない。


 由香は少し驚いた様子で、「思ったより早く解決できたね。もっと何日もかかると思ってたけど」と声を上げた。その口調には安心感があったが、一方で、霊的な浄化があまりにも「日常化」しつつあることに対する戸惑いが含まれていた。最近は、いつ何が起こっても不思議ではないと感じ始めている自分がいることに、無意識のうちに気づいていたのだ。


 寮は腕を組みながら、「僕たち、もしかして霊現象に慣れすぎてるのかな。普通の生活を忘れちゃってるような気がする。いつの間にか、こういうことが当たり前になってしまったんだ」と自分たちの状況を冷静に振り返った。


「確かに普通、幽霊が現れたら回りは大騒ぎしてしまうのに私たちは、慣れっこになっているね。今日の出来事も、初めの頃と比べたら、かなり大変な出来事だったけれど当然といった気になっている」由香が改めて冷静に振り返り話す。


その時、部屋のチャイムが鳴り、寮は立ち上がってドアを開けた。そこには隣人の真田さんが立っていた。彼の顔には心配そうな表情が浮かんでいる。


「寮さん、大丈夫でしたか? 長く帰ってこないので、みんな心配してました」と真田は問いかけた。


「なんとか解決しました。ご心配をおかけして申し訳ないです」と寮が答えると、真田さんは安堵の笑みを浮かべ、「それなら良かったです」と頷いた。そして、手に持っていた寿司の袋を差し出した。「これ、近くのお寿司屋で頼んだんですけど、皆さんでどうぞ。疲れているでしょうから、少しでも力になればと思って。」


「ありがとうございます! 本当に助かります。ちょうど食事をどうしようかって話してたんです」と寮は嬉しそうに受け取り、真田さんを部屋に招き入れた。


 部屋のテーブルには次々と寿司が並べられ、陽菜や春香、由香も笑顔で感謝を述べながら食事を始めた。お寿司の香りが部屋いっぱいに広がり、和やかな雰囲気が少しずつ広がっていく。これまでの緊張がゆっくりと解けていくようだった。


「わあ、お寿司だ! こんなに豪華なの、久しぶりだね」と陽菜が目を輝かせている。彼女のその無邪気な笑顔が、今日の疲労感を少しだけ和らげてくれたようだった。


 しばらくお寿司を楽しんでいたが、やがて話題は自然と今日の出来事へと移っていった。真田は少し神妙な面持ちで口を開いた。「陽菜さん、この前は本当にありがとう。まさか自分が霊現象を体験するなんて…未だに信じられません。何もかもが夢のようで、不思議な気持ちです。」


 陽菜は微笑みながら頷いた。「初めての時はみんなそうだよ。私も、霊の話をしても誰も信じてくれなかったり、変な目で見られたりしてた。でも、実際に体験すると、やっぱり感じ方が変わるよね。」


 寮も静かに口を開いた。「僕も、中学生の頃までは普通の生活を送ってたんだ。霊の存在なんて信じてなかったし、興味もなかった。でも、今ではこんな生活が当たり前になってる。もう、後戻りはできないんだろうな…。」


 彼の言葉には、運命を受け入れた者の静かな覚悟が滲んでいた。その言葉を聞いて、陽菜も少し俯きながら語った。「私も、いつの間にか霊の浄化が日常になってしまった。でも、これで本当に良いのかって、時々疑問に思うこともあるんだよね。何か大切なことを忘れている気がして…。」


 部屋の空気が静けさに包まれた。春香が少し考えた後、静かに口を開いた。「私たちは、ただ霊に巻き込まれているだけじゃなくて、自分自身の人生も大切にしないといけないと思います。霊的なことにばかり気を取られて、現実を見失わないようにしないと、私たちの人生と向き合って行く事も大切です」


由香も頷いた。「そうだね。私たちは神様でも何でもない。ただの人間だから、自分を見失わずに進んでいかなきゃ。」


その言葉に、全員が一瞬黙り込んだ。霊的な活動と現実の生活——そのバランスをどう取るべきか、それぞれが考え始めていた。


夜が更け、真田さんが帰った後、寮たちはそれぞれ静かな時間を過ごした。寮は窓の外を眺め、ふと小さく息をついた。


「いつか、この生活にも終わりが来るのかな…」


寮の心の中で、霊的な使命と現実の生活との間で揺れる思いが交錯していた。


 翌朝、寮たちは再び公園、裏路地、そして廃墟の洋館を巡った。昨夜まで感じた霊的な異常は完全に消え去り、霊道やポータルも封印されていた。地域全体に平穏が戻ったことを実感し、寮たちは深い安心感に包まれた。


 午後になり、陽菜たちは帰る事になった。駅で別れ際、陽菜が笑顔で言った。「寮君、また何かあったら連絡してね。いつでも協力するから。」


寮は感謝の気持ちを込めて答えた。「ありがとう、陽菜ちゃん。仕事も頑張らないとね。」


「寮君、このまま霊能者として活動するのも悪くないかも。でも、全部解決しちゃったら、仕事が無くなっちゃうね」と、陽菜は冗談交じりに笑った。


寮も微笑みながら、「まあ、編集者の仕事みたいに終わりが見えないのも辛いけど、時にはすっきりするのもいいかもね。陽菜ちゃんも勉強で困ったことがあったら、いつでも相談してよ。」


「そうだ、宿題忘れてた! 帰ったらすぐにやらなきゃ」と陽菜は慌てた表情を見せ、由香が笑顔で手を振った。「またね、寮君。」


寮も笑顔で答えた。「ありがとう、由香。いろいろ助かったよ。」


春香に向かって、寮は感謝の意を伝えた。「春香さん、またお寺に行ってみるよ。」


春香は穏やかに微笑み、「いつでも気軽に訪ねて来てくださいね」と優しく答えた。


***新たなる相談***


 しばらく経ち、寮の仕事が忙しい中、オカルト研究部の瑞希から深刻な相談が持ち込まれた。寮は編集部の仕事を優先しつつ、瑞希に助言をし、彼女の挑戦に対する支援を続けていた。


 ある日、寮は瑞希の相談に大学の同級生だったオカルト部の葵に連絡し瑞希たちの相談に乗って貰う約束をした。待ち合わせで大学前のカフェで寮と葵は瑞希の相談に乗っていた。


 緑ダムの事で瑞希の決意を聞き、寮は静かに彼女に言った。「瑞希、今回の件は強力な怨霊が関与しているかもしれない。無防備で挑むと危険すぎる。慎重に行動しないと、取り返しのつかないことになるよ。」


瑞希はその言葉を真剣に受け止めつつも、強い決意を見せていた。「それでも、調査する必要があるんです。何か見逃している大切なことがある気がして…。」


その決意を見た寮は、彼女の挑戦を後押しするために、自分にできる限りのサポートをすることを決意した。


 瑞希の強い決意に心を打たれた寮は、慎重に言葉を選びながら提案をした。「僕は仕事で一緒に行くのは難しいけど、代わりに陽菜と春香を派遣しようと思う。ちょうど二人とも今度の休日に休みが取れて、何か霊的な相談があれば手伝ってくれるって言ってたんだ。彼女たちなら瑞希の力になれると思う。」


瑞希はその提案に感謝の気持ちを込めて深く頭を下げた。「本当にありがとうございます、寮先輩。陽菜さんと春香さんの力をお借りできるなら、私たちも安心して調査に集中できます。」


隣にいた葵も同意し、瑞希に向けて静かに言葉を重ねた。「私もできる限り協力するわ。でも、今回の件は非常に難しい調査になるはず。霊現象に対しては慎重な対応が求められるし、無理をしてはいけないわ。」


寮は瑞希たちを見つめながら、心の中で静かに考えていた。瑞希たちはまだ学生で、霊的な力に対しての経験が浅い。彼女たちがこれ以上の危険に晒されることを避けるためにも、確かなサポートが必要だと痛感していた。しかし、彼自身も霊能者としての活動と編集者としての仕事とのバランスを取るのが難しくなってきている。自分がこれ以上深入りするべきなのか、それとも霊的な世界から少し距離を置くべきなのか、その答えはまだ見つかっていなかった。


その後、カフェを出た寮は葵を車で駅まで送った。車内で、寮は瑞希たちのことを話し始めた。「瑞希たちだけでは、今回のような案件は荷が重すぎると思うんだ。オカルト研究部の活動が趣味の域を超えていることは、瑞希自身も理解していると思っていたんだけどね。」


 葵は静かに頷きながら、寮に向かって言った。「そうね。瑞希たちはまだ経験が浅いし、霊的な力で解決できる人は限られているから、どうしても興味を持ったり、頼られることが多くなるのよ。でも、私たちもただの人間だから、無理をしてしまうと心身ともに疲れ果ててしまうこともある。だからこそ、支える側もバランスが大事よ。」


 寮はその言葉に同意しつつも、霊能者としての自分の役割に対する責任感が増していくのを感じた。葵の言う通り、自分たちには限界がある。それでも、霊現象に巻き込まれる人々を放っておくことはできない。どうすれば、現実の生活と霊的な使命をうまく両立できるのか。彼の心は静かに揺れていた。


駅に到着すると、葵は寮に向かって穏やかに微笑んだ。「瑞希たちには、慎重に行動するようにしっかり伝えておくわ。私たちが無理をしないことも、彼女たちにとって良い教訓になるかもしれないし。」


寮は頷きながら、「ありがとう、葵。僕も、彼女たちにできる限りのサポートをしていくよ。今回の件が無事に終わることを祈ってる。」と言った。


数日後、陽菜と春香、葵は瑞希たちと合流し、霊的な調査に参加することになった。葵は瑞希たちにとって頼れる先輩であり、的確なアドバイスを送りながら、霊的な対処法を伝授していった。調査の現場では、陽菜がその場の霊的な波動を感じ取り、春香が冷静に状況を分析して適切な行動を取る。瑞希たちはその様子を目の当たりにし、霊的な活動が単なる力任せではなく、深い経験と知識が必要なものであることを改めて実感した。


ある晩、調査が終わり、瑞希と葵が一緒に夕食を取っていると、瑞希がふと口を開いた。「葵先輩、私たちがこれから霊現象に立ち向かうためには、もっと経験が必要だと感じました。今回の調査でも、まだまだ自分たちの未熟さを痛感しました。でも、どうすればもっと成長できるのか、その道筋が見えてこなくて…。」


 葵は瑞希の悩みに真剣に耳を傾けた後、優しく微笑んで答えた。「成長するためには、焦らずに一つずつ経験を積むことが大切だよ。霊的な力は急に身につくものじゃないし、何よりも大事なのは、自分自身を守りながら進んでいくこと。無理をせずに、少しずつ学んでいけば、きっと瑞希たちも強くなれるはずだよ。」


瑞希はその言葉に少しだけ安心し、深く頷いた。「ありがとうございます、葵先輩。これからも少しずつ、頑張っていきます。」


その夜、彼女たちは静かにテントに戻り、翌日の調査に備えるための休息を取った。瑞希たちの挑戦はこれからも続いていくが、陽菜や春香、そして寮と葵の助けがある限り、彼女たちはきっと道を切り開いていけると信じていた。


 その後も、寮は編集の仕事に追われながらも、時折オカルト研究部や瑞希たちからの相談に乗っていた。霊的な問題が再び持ち上がるたびに、彼は自分の限界を感じつつも、その度に仲間たちの支えがどれほど大切かを実感していた。霊的な世界と現実の世界、その二つの狭間で生きる自分たちの役割を再確認しながら、寮たちはそれぞれの道を歩み続けて行った。

ご購読、ありがとうございました。今回の話までは、スピンオフ 瑞希編の時間軸と並行した時期の話になっています。

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