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スピリチュアルズ ジャーニー 寮  作者: waku


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瑞希の憂鬱『緑ダムの呪縛』 スピンオフ (寮、卒業後のオカルト研究部)編

瑞希たちは、あらたなる調査依頼を受けた。それは、緑ダムの怪奇現象の調査だった。


 緑大学オカルト研究部の部室に、夕闇が忍び寄っていた。窓から差し込む薄暗い橙色の光が、古びた本棚や散らかった調査機材に長い影を落とし、部屋全体に異様な空気を漂わせている。部長の瑞希は、届いたばかりの調査依頼を無言で見つめていた。その依頼書には、「緑ダムの調査依頼」と血のように赤い文字で書かれていた。


「緑ダムの調査か…」瑞希の声は硬く、冷たい。彼女は数々の心霊スポットを調査してきたが、このダムの名前を耳にしただけで、背筋が凍るような不安を感じた。噂によると、このダムには悪霊が潜んでいるという。建設中に発生した謎の事故、行方不明となった工事関係者たち、そして夜ごとに湖から響く不気味な泣き声――それらが頭をよぎり、瑞希は無意識のうちに手元の依頼書を握りしめた。その瞬間、彼女の指先から紙が焦げるような錯覚を覚えた。


部員たちは瑞希の言葉に重苦しい沈黙で応じた。徹が最初に口を開いた。「本当に行くんですか?大丈夫なんですか…」彼の声は震えていた。


「…あの場所には、非常に強力な悪いものが潜んでいる気がします…」霊感の強い麗香が震える声で答えた。「その何かが私たちを待っている…私には、あの場所から血の匂いがするんです」


情報分析担当の鈴木は真剣な表情で頷いた。「調査は進めなければならないが、安全第一を最優先にしよう。ただ、この依頼書…触れただけで寒気がする」


瑞希は少し考えた後、決意を固めた「行きましょう。でも、何かあったらすぐに撤退します。それを絶対に守ります」彼女の声には、自分自身に言い聞かせるような響きがあった。


数日後、オカルト研究部の7人は、薄曇りの中、緑ダムに向けて出発した。車内は異様な静けさに包まれ、誰も口を開こうとしなかった。ダムの近くにある管理施設の職員宿泊施設が彼らの拠点となる予定だったが、収容人数の制限があり、瑞希たちは車中泊とテントでの宿泊を余儀なくされた。


ダムに到着すると、辺り一帯に広がる静寂と不気味な雰囲気に包まれた景色が、瑞希たちを出迎えた。湖面は鏡のように静かで、その暗い水面には何か得体の知れないものが潜んでいるような錯覚を覚えた。風が吹くたびに、木々がざわめき、まるで誰かのささやき声のように聞こえた。


瑞希たちはすぐに準備を始めた。鈴木と瑠偉は、ドローンを使ってダム全体を上空から撮影し、心霊現象が報告されているポイントを確認していった。その間、瑞希、麗香、徹の三人は、ダムの回りを調べた。「想像していたより広いエリアね」と、瑞希は呟いた。その言葉が、まるで何かに飲み込まれるかのように空気に吸収されていった。


周辺を見回った後、一旦、拠点に戻り、会議を開いた。鈴木「ドローンで調べた所、ダム周辺で怪奇現象や事故が多発している事が判明しました。特に、北側の崖下で奇妙な影が映っていました」瑠偉が続けて、「ダムの奥地をドローンで調査しましたが、山奥まで入る事が必要になりそうです。ただ…映像を確認していると、何か視界の端を動くものが…」


***ダムの内部通路の調査***


 瑞希は「今回は、ダムを中心に調査します。まずは、拠点を整えてから、先に進みます」と方針を決めしばらくの間、宿泊施設の掃除や近辺の調査に力を入れた。しかし、清掃中も、壁から聞こえる奇妙な音や、突然冷たくなる空気、そして誰もいないはずの場所から聞こえる足音に、全員が神経を尖らせていた。


体制が整い、新たにダムの内部調査を行う事を決定した。全員が装備を整え、ダムに向かう途中、瑞希は空気が変わったのを感じた。まるで、ダム全体が彼らの到来を待ち構えているかのようだった。


ダム内部に入ると、通路を通り抜けて行く霊的なエネルギーの痕跡を探りながら慎重に進んでいった。湿気の多い通路には、壁一面に黒いシミが広がり、そのシミはまるで生き物のように蠢いているように見えた。天井からは水が滴り、冷たい空気がまとわりつく。「ここには強烈な霊的エネルギーが渦巻いている…何かが私たちを見ているわ…」麗香は顔を歪めて囁いた。瑞希も感じていた。この場所全体が、まるで邪悪な力に包まれているような重圧感があった。


しばらく進むと、通路の奥にぼんやりと人影が浮かび上がった。黒い長髪の女性が、白いスーツを身にまとい、無表情で佇んでいた。瑞希と麗香はその異様な雰囲気に気づき、直感的に危険を感じたが、瑠偉は「観光客か何かじゃないか?」と軽く考え、女性に声をかけに行ってしまった。


「すみません、ここで何をしているんですか?」瑠偉が慎重に尋ねたが、その声は女性に届いたようには見えなかった。彼女はゆっくりと顔を上げた。その顔は異常なほど青白く、瞳は漆黒の闇そのものだった。瑞希と麗香は凍りつき、次の瞬間、女性は瑠偉に飛びかかり、両肩を鷲掴みにして彼の顔に自分の顔を近づけてきた。


「ぎゃあああっ!」瑠偉の叫びがダムの通路にこだました。彼は全身が凍りつくような冷たさを感じ、意識が遠のいていくのを感じた。彼の目の前には、女性の青白い顔がじわじわと近づいてきた。その顔は徐々に歪み、口が耳まで裂けるように開いていった。瑠偉は恐怖のあまり気を失った。


「瑠偉君!」瑞希は叫び、即座に護符を取り出して呪文を唱えた。「破邪の光よ、我が前に現れよ!」光が放たれると、女性の霊は一瞬怯んだように見えたが、そのまま消え去ってしまった。しかし、その直後、通路全体に女性の笑い声が響き渡った。その声は、まるで壁の中から聞こえてくるかのようだった。


「瑠偉、大丈夫?」徹が倒れた瑠偉に駆け寄り、彼を起こそうとするが、彼の体は冷たく、震えていた。瑠偉はようやく目を覚ましたが、恐怖で顔色が青ざめていた。「あの女…僕を睨んで…全身が凍りついた…」


 瑠偉が上着を脱いで肩を確認すると、そこにはくっきりとした手形のアザが残っていた。それはまるで彼女の存在がこの世に実在していた証のようだった。瑞希はそれを見て険しい表情を浮かべ、「これは呪いかもしれない。お守りがあったから助かったけれど、彼女が瑠偉に何かを残したのは間違いない…」と呟いた。


 瑞希はすぐに調査を中断することを決断した。これ以上の危険は避けるべきだと判断し、一行は急いでダム内の通路から脱出した。戻る途中、麗香が慎重に結界を張り、瑞希は魔除けの札を一定間隔で貼りながら、部員らを守るために必死だった。徹は重い荷物を背負いながらも、後ろを何度も振り返っていた。そのたびに何かが背後にいるような気配がしたが、彼にはそれを確認する勇気はなかった。


***宿泊設内の一夜***


 宿泊施設に戻ると、瑞希は全員を集め「この場所には、想像以上に強力な霊が潜んでいます。今回の調査で、悪霊が非常に攻撃的であることがわかりました。私たちは撤退し後日、検討して再度調査を行います」すぐに車に乗り込みダムを降りる予定だったが、何故か車が故障しエンジンが掛からなかった。点検と修理を行っている間に時間は午後6時を過ぎてしまい、車の点検は、翌日に繰り越された。



瑞希は皆に指示を出した。「施設の周りに結界を強化して。今夜は全員、施設の部屋の中で待機しましょう。何が起こっても外に出てはダメよ。」瑞希は、施設内の部屋の窓から外を眺めていた。


その夜、全員が狭い部屋に押し込められ、瑞希は魔除けのお香を焚きながら、皆に厳しく言い聞かせた。「今夜は特に注意して。悪霊たちが瑠偉を狙ってくるかもしれないわ…」


時間が経つにつれ、部屋の中は緊張感で満たされ、全員が疲労と緊張で眠れずにいた。部屋の窓には雨が降り始め、冷たい風が建物全体を揺らしていた。


 鈴木が「こんな所で閉じ込められると嫌な気分ですね」と、ポツリと語った。

瑠偉は、「あの女性が来るかもしれない」ダムの通路内で遭遇した霊の顔と声がハッキリと記憶に刻まれており恐怖に震えた。瑠偉が部屋の内側にも「魔除けのお札を貼って結界を強化しています。」と答えた。


 深夜11時を過ぎ、霊の襲来に備え、瑞希と麗香が魔除けのお経を唱え、魔よけのお香を焚き続けた。


午前2時を過ぎた頃、建物全体が突然激しく揺れ始めた。壁や天井から黒い霧が染み出し、腐敗臭が部屋中に充満した。


「地震だ!」鈴木が叫んだ。「これは大きいぞ…建物が倒壊するかもしれない…外に避難するべきだ!」


 しかし、瑞希は冷静に首を振った。「待って、これはただの地震じゃない…何かがこの揺れを引き起こしている。悪霊の仕業かもしれないわ。ここに留まって、結界の中で様子を見ましょう。」


揺れが収まると、外から聞き覚えのある声が聞こえてきた。「瑞希部長、心配で来ました。ここを開けてください。」その声は、確かにオカルト研究部の部員たちのものだった。しかし、瑞希は即座に異変に気づいた。彼女の心臓が早鐘のように打ち始める。


「それは悪霊の罠よ…絶対に扉を開けないで。」瑞希は冷静に言い、他の部員たちを制止した。しかし、声は次第に大きくなり、さらに執拗に扉を叩き始めた。叩く音が次第に狂気じみたものに変わり、まるで扉が今にも壊されそうな勢いだった。


「助けて…お願い、助けて…」今度は、瑞希の母親の声が聞こえてきた。彼女は窓越しにその声を聞いた瞬間、凍りついた。母親の泣き声が、耳に直接響き渡り、頭が真っ白になる。「母さん…?」瑞希は唇を震わせながら呟いた。しかし、その声に応じてはいけないと直感的に感じた。母親の声がこの場所にあるはずがない。


「瑞希、絶対に騙されないで!」麗香がすぐに彼女の手を掴んで制止した。母親の声は次第に苦しげなものに変わり、叫びへと変わっていった。それはまるで何かに引きずり込まれているような、絶望的な叫び声だった。


その後、声は消え、再び静寂が訪れた。しかし、部屋の中に漂う異様な空気は消え去ることはなかった。


夜明けが近づき、窓の外がようやく薄明るくなり始めた頃、瑞希はお香が燃え尽きたのを確認し、ようやく扉を開けた。彼女たちが外に出ると、そこには無数の足跡が残されていた。その足跡は、人間のものとは異なり、泥のようでありながらも泥ではない、異様な痕跡だった。


「…終わったの…?」瑞希は呟きながら、瑠偉の肩を確認した。驚くべきことに、彼の肩に残っていたアザは消えていた。しかし、その安堵もつかの間、瑞希は背後に何かの気配を感じた。背筋に冷たいものが走る。


振り返ると、誰もいないはずの場所に、一瞬だけ白いスーツの女性の影がちらついた。彼女は微笑んでいた――それは、まるで「まだ全てが終わっていない」とでも言わんばかりの不気味な微笑みだった。


 翌朝、車は不思議な事に直っており、全員車に乗り込み撤収する事にした。

 

 帰り道、全員が沈黙を守っていた。車内には、誰も口を開こうとはしなかった。瑞希の心には、ダムに潜む悪霊たちの影が消えないまま残っていた。彼らがこのダムの呪いから逃れることができるのかどうか、確信はなかった。彼女たちが再びその地を訪れることになったとき、さらなる恐怖が待っていることは間違いないと感じていた…。



 ご購読、ありがとうごさました。今回はオカルト部が以前より弱体化しているシーンを描いてみました。ホラーぽい感じの話になったと思います。


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