さらなる調査活動の行方
寮たちは優の住んでいる地域の調査を続けていた。
***公園での作戦会議***
神社での不可解な体験から、寮たちは一旦引き上げ、霊道のルート上で近くに位置する公園へと向かった。下り坂を進み、ミレニアム・ファルコン2号は静かに公園の片隅に停車した。
優は先に出発しており、自転車に乗って公園の入り口で待っていた。彼女は大きく手を振った。全員が車から降りると、寮が提案した。「ここを中継地点として使うのはどうだろう?神社やお墓、さらには山奥まで道が繋がっているし、調査の拠点としては近くて最適だと思う」
沙織が頷きながら付け加えた。「それに、ここにある石碑の謎も解けたわ。100年前に行方不明になった探検家のための碑なのよ」
その言葉に、全員が驚きの表情を浮かべた。水野が興味深そうに尋ねた。「探検家?その人たちの消息はどうなったんだ?」
沙織は首を横に振った。「それが、まだ分からないの。ただ、彼らが最後に向かったのが、あの山の方角だったということは判明しているわ」
寮は車のルーフキャリアに積んであったマウンテンバイクを降ろしながら、新たな提案をした。「よし、じゃあこのバイクを使ってお墓まで調査に行ってみよう。まだ昼前だから、大丈夫なはずだ。僕が先に行って様子を見て来る」
葵が少し心配そうな表情で言った。「でも、一人で行くのは危険じゃないかしら?」
水野が即座に答えた。「俺たちが後から徒歩で追いかけるよ。葵、一緒に行こう」
寮は安心したように笑顔を見せた。「ありがとう。じゃあ、沙織と優はここで待機してくれるかな?何かあったらすぐに連絡するから」
優は少し不安そうな表情を浮かべながらも、勇気を振り絞って言った。「分かりました。気をつけて行ってきてください」
沙織は優の肩に手を置き、優しく微笑んだ。「大丈夫よ、私たちもここでしっかり見張っていましょう」
寮はリュックを背負い、マウンテンバイクにまたがり、決意に満ちた表情で言った。「よし、行ってくる!」
ペダルを踏み込むと、バイクは静かに動き出した。後ろを振り返ると、仲間たちが手を振っている。寮は大きく手を振り返し、お墓への道を進んでいった。
公園から神社までは400メートル程先にあり、そこからお墓のルートは800メートル程、緩やかな登坂が続いていた。10分程度で寮の乗ったマウンテンバイクは、お墓の入り口に辿り着いた。マウンテンバイクから降りると寮はカメラを設置し周辺を調査した。ペンデュラムでエネルギー反応を確かめながら、お墓の中に進んだ。
木々が鬱蒼と茂っており、お墓は昼でもうす暗かった。寮は、リュックから香炉を取り出し魔除けのお香に火を付けた。甘い香りの煙が周囲に広がっていった。霊的な存在は、昼間ということもあり、特別強く感じられなかった。
さらに木々の間を縫うように進むにつれ、周囲の空気が徐々に変化していくのを感じた。鳥のさえずりも次第に聞こえなくなり、代わりに枯れ葉を踏む音だけが耳に届く。それは風に揺れる草木の影に過ぎなかった。
「落ち着け、寮…」自分に言い聞かせるように呟き、再び進み始めた。
しかし、その時である。前方に人影のようなものが見えた。寮は思わず立ち止まり目を凝らした。確かに誰かがいる。でも、その姿は少し…おかしい。
「あの…すみません」寮は声をかけてみた。しかし返事はない。
その人影はゆっくりと寮の方を向いた。そして、次の瞬間、霧のように消えてしまった。
寮の背筋に冷たいものが走った。「これは…まずいかもしれない」
彼は急いで携帯電話を取り出し、仲間たちに連絡を入れようとした。しかし、画面を見ると「圏外」の表示が。「くそっ、電波が届かない!」
寮の周りには次第に黒い影が集まってきた。
寮は香炉を置き、周囲に魔除けの塩を円を描くように身の回りに撒いた。リュックから浄化スプレーを取り出し周辺に撒き、黒い影が近寄れないようにした。そして浄化の呪文を唱え始めると、黒い影は怯えるように姿を消していった。
黒い影の気配が消えると再び寮はお墓の周りを歩きながら調査を行ったが、特別なものは見つからなかった。お墓の入り口まで戻ってくると、水野と葵が登ってくるのが見えた。寮は手を振った。水野と葵も寮に気付き手を振り返した。
お墓の入り口で合流し、寮は出来事を水野と葵に知らせた。
水野は「どうやらお墓は特別重要でもなさそうだな」と話した。
葵も「神社の封印の石碑の方が気になるわ」と答えた。
再び3人でお墓を回り、気になる所に向けて浄化を行った。水野はドローンを飛ばし、お墓周辺を調査する。お墓の規模は特別広くもなく、奥で再び山に続く道と合流していた。霊道としては、お墓も影響があるかもしれないが大きな原因ではなさそうだった。
寮が「やっぱり、もっと先の山道の奥かもしれない」と、水野と葵に話した。
水野が再びドローンを飛ばし山道のルートを探ってみたが、かなり山の奥深くまで続いていた。
「ここから、10キロ以上は歩いて行く必要がありそうだ。今の装備で進むにはリスクが大きすぎる」と、話した。
葵が「仮に奥まで調査を行う場合、神社とお墓を完全に浄化してからでないと危険だわ」と答える。
寮も、確かに今の人数では難しいと判断した。ひとまず、お墓の入り口に浄化グッズを設置し結界を張り、これでいくらか霊的な影響も少なくなるだろうと考えた。
寮は先に進む山道も少しマウンテンバイクで進んで様子を見たが、これ以上先に進むことは難しいと判断し、お墓の前で待っている水野と葵と合流し公園まで引き返すことにした。
***公園で待機している沙織と優***
沙織と優は、ミレニアム・ファルコン2号のバックテントのテーブルの前に座り、仲間たちの帰りを待っていた。沙織は、ダンボール箱から様々なお菓子を見つけて優に勧めた。
「あいかわらず、色々なお菓子を積んでいるわね。優ちゃん、何か欲しいのがあったら好きに取っていいよ」ポータブル冷蔵庫も開けて「麦茶、ウーロン茶、緑茶、サイダー、オレンジジュース、ポカリスエット、コーラ、カルピス、アイスコーヒー、色々あるから好きなのを選んで」と勧めた。
沙織は他の食料品の入ったダンボール箱も開けた。「チキンラーメン、焼きそばUFO、味噌ラーメン、とんこつラーメン、レトルト食品は、カレー、ハヤシライス、親子丼、牛丼。お米もあるし、1人だったら1ヶ月くらいは、十分車中泊できそうね」と話した。
他にも、ポータブルのDVDプレイヤーがあり、スターウォーズ全シリーズも揃っていた。
***帰還後の作戦会議***
寮、水野、葵が公園に戻ってくると、沙織と優が飲み物を用意して出迎えた。全員がミレニアム・ファルコン2号の近くに集まり、これまでの調査結果を共有することにした。
寮が口火を切った。「お墓での調査結果だけど、特に大きな手がかりは見つからなかった。ただ、不気味な体験はしたんだ」
寮はお墓で見た人影と、黒い影に囲まれた経験を詳しく説明した。他のメンバーは真剣な表情で聞き入った。
水野が考え込むように言った。「霊的な活動が活発になっているのは間違いないな。でも、その原因がどこにあるのかは、まだ分からない」
葵が付け加えた。「神社の封印の石碑と、100年前に行方不明になった探検家たちの関係も気になるわ」
沙織がノートを取り出しながら言った。「その探検家たちの情報をもう少し調べてみる必要がありそうね。地元の図書館や資料館にあたってみましょう」
優が少し緊張した様子で意見を述べた。「私、地元の人たちに話を聞いてみるのはどうかと思います。古い言い伝えとか、伝説みたいなものがあるかもしれません」
寮が優の提案に賛同した。「それはいい考えだ、優ちゃん。地元の人の証言は貴重な情報源になるかもしれない」
水野がドローンの映像を見せながら説明を始めた。「山奥へ続く道はかなり険しくて、簡単には進めそうにない。本格的な登山装備が必要になりそうだ」
一同が頷く中、寮が決意を込めて言った。「よし、じゃあこれからの作戦を立てよう。まずは以下の3つのことを並行して進めていくのはどうだろう」
沙織と水野で、図書館や資料館での調査
優と葵で、地元の人々からの聞き込み
僕は神社とお墓の浄化を続けながら、周辺のエネルギー変化を観測する
全員が同意し、それぞれの役割を確認した。
***調査の開始***
翌日から、チームは手分けして調査を開始した。
沙織と水野は地元の図書館に向かい、古い新聞記事や地域の歴史書を丹念に調べ始めた。100年前の探検隊に関する情報を探すのは困難を極めたが、少しずつ手がかりを見つけていった。
優と葵は地元の古い店やお年寄りに話を聞いて回った。多くの人は霊道についてあまり知らなかったが、ある老人が興味深い話をしてくれた。
「昔から、あの山には入ってはいけないと言われてきたんじゃ。『山の神様が怒る』って言ってな。でも、その理由を知っている者はもういないんじゃのう」
一方、寮は神社とお墓を訪れ、浄化の儀式を続け周囲のエネルギーの変化を観測していた。日が経つにつれ、わずかではあるが、霊的なエネルギーが弱まっていくのを感じ取った。
しかし、山の奥深くからは依然として強い霊的な波動が感じられた。寮は、そこに何かがあるはずだと確信を深めていった。
***新たな発見***
調査を始めて1週間が経った頃、チームは再び公園に集まり、これまでの発見を共有した。
沙織が興奮気味に報告を始めた。「100年前の探検隊について、いくつか重要な情報が見つかったわ。彼らは何かの古代遺跡を探していたみたいなの。でも、その遺跡の正確な場所や性質については記録が残っていなかったわ」
水野が続けた。「ただ、彼らの装備リストを見つけたんだ。通常の登山用具の他に、何か特殊な測定器や儀式用の道具らしきものも含まれていたようだ」
優が地元での聞き込み結果を共有した。「山に入ってはいけないという言い伝えは確かにあったみたいです。でも、その理由はあいまいでした。ただ、『山の奥に眠るもの』という表現をよく耳にしました」
葵が付け加えた。「それと、満月の夜に山頂付近で不思議な光が見えるという証言もありました」
寮は自身の観測結果を報告した。「神社とお墓周辺の霊的エネルギーは少し弱まってきているけど、山の奥からの波動は相変わらず強いんだ。何か重要なものが山の中にあるのは間違いないと思う」
全員で情報を整理していく中で、一つの仮説が浮かび上がってきた。100年前の探検隊が探していた遺跡が、霊的活動の源になっている可能性が考えられた。そして、その遺跡が「山の奥に眠るもの」なのかもしれない。
寮が決意を込めて言った。「これらの情報を総合すると、やはり山に登る必要がありそうだ。でも、単なる登山ではなく、霊的な備えも必要になりそうだ。ここは、一旦、海斗に連絡してみよう」
寮たちは、調査範囲が広いことや人員不足、活動の進展に時間がかかることから、一旦、調査を打ち切り引き上げることにした。理由は、調査する人員の不足と、準備不足もあった。
これまでの寮たちの活動により、以前と比べて霊的な現象も起きなくなり、優の母親や近所の人も安心していた。また、引き続き調査を行う予定であることも知らせ、地元からも協力の声が上がり、次回の調査活動では、地元の公会堂を調査拠点として提供することなどが提案された。
沙織が帰り際、優に声をかけた。「優ちゃん、元気でね。また調査に来るからね。危険な所には近づかないでね」
寮も優に言葉をかけた。「優ちゃん、思っていたより時間がかかりそうだ。今度はもっと本格的に調査に乗り出す予定だから」
葵も「私のお守りを持っていてね」と手を振った。
水野も「今度来る時は、優にもドローンをプレゼントするよ」と別れを惜しんだ。
こうして、寮たちの調査活動も一旦、終了することになった。
ご購読、ありがとうございます。
夏休みモードで書いていますが、けっこう長編になりました。




