スピンオフ 陽菜の廃村編 終
洞窟に入り、調査を行うオカルト部研究部たち、陽菜も春香と一緒に調査に挑む事になった。
夜明け前の静寂を破り、廃村の古びた洞窟の入り口に集まったのは、緑大学オカルト研究部のメンバーたちだった。朝靄が立ち込める中、洞窟から漂う冷気が肌を刺すように感じられる。陽菜は首から下げた魔法のペンダントを握りしめ、緊張した面持ちで佐藤部長の指示を待っていた。
佐藤部長の声が、霧に包まれた空気を切り裂いた。「準備はいいですか?」その声には、普段の自信に加え、わずかな緊張が混じっていた。「この洞窟には、村の歴史と僕たちがまだ知らない真実が眠っているはずです。」
部員たちは無言で頷き、それぞれが持参した装備を最後に確認し合う。春香は祖母から受け継いだ数珠を握りしめ、小さな祈りを捧げていた。その姿を見た陽菜の心に、かすかな安堵感が広がった。
「よし、みんな行きましょう。」佐藤部長の一声で、一行は未知なる闇へと足を踏み入れた。
洞窟内は想像以上に広く、湿った空気が肌を刺すように冷たかった。懐中電灯の光が岩肌を照らし出し、不気味な影を壁に映し出す。陽菜は、薄暗い空間の中で耳を澄ませた。微かな囁き声が聞こえるような気がして、心臓が鼓動を早めた。
「大丈夫?」春香が陽菜の肩に手を置いた。陽菜は微笑んで頷いたが、その笑顔には不安が滲んでいた。
由香がペンデュラムでエネルギー反応を調べると、洞窟の中に強い反応を感じ取った。「この中に何かが封印されているみたいね。」と、由香は慎重に言った。
「何かを封印したり鎮めるために作られたもののようだね。」と佐藤部長が答えた。「とにかく洞窟全体を清めよう。」
陽菜や春香は、お経を唱えながら洞窟全体の浄霊を行った。青空大学の部員たちも合同で慰霊碑の前で祈りを捧げ、浄霊の活動に協力した。その効果が現れ、洞窟内の霊的なエネルギー反応が次第に静まり始めた。
「これで洞窟内の調査も行いやすくなったはずだ。」と佐藤部長は話した。
その後、無数にある小さな祠を浄化し、封印していく過程で、霊道やポータルを減らしていった。最後に洞窟内の大きな石碑に対して、浄化と封印の儀を行うことになった。
陽菜、寮、春香、由香、葵たちが石碑の前に立ち、呪文を唱え、陽菜が浄化のエネルギーを石碑に向かって注いだ瞬間、強烈な光が発せられた。
***タイムスリップ***
陽菜が異変に気付いた瞬間、全身を鳥肌が走った。彼女の心臓は激しく鼓動し、周りの光景が一変していることに気づく。元々廃村だった場所が、見違えるほど整備されているのを見て、彼女は現実感を失いそうになった。「これがタイムスリップ?それとも夢?」陽菜の頭の中は混乱の渦に巻き込まれていた。
春香、寮、由香、葵の5人だけがそこにいた。さっきまで一緒にいた仲間たちの姿は消えていた。遠くから見ても住民たちが普通に生活している様子が目に入った。
寮たちは、困惑しながらも「さっきの封印の儀を行った影響から、時空のゆがみが生じたのかもしれない。」と、みんなに話した。
「そんな事が起こるなんて信じられません。」と、葵が青ざめていた。
寮は冷静さを保とうと努めながら、住人の元に近寄り、「僕たちは山登りで道に迷ってしまいました。今は、何時頃ですか?」と尋ねた。
村人の話では、ちょうど60年前の同じ日時だということが分かった。寮は驚きを隠しつつ、しばらく、この近くに住まわせてもらえないか交渉した。
親切に村にある公会堂を使うことを許可してくれた。お風呂も近くの住人に貸してもらえることになり、しばらく留まって様子を見ることにした。
「これはタイムスリップしてしまったのか?それとも異次元に入り込んでしまったのか?」と寮たちは判断に困りながらも、住人たちからこの地域の昔話や伝説を色々聞いた。
ある村人からは「戦国時代、この村は金山で賑わっていたが、他国に攻め込まれる直前に、秘密を守るため口封じで多くの住民が殺されてしまった」という悲惨な歴史を知った。その話を聞いた陽菜は、胸が締め付けられるような痛みを感じた。
また、山崩れで生き埋めになった村落の住人の話や、トンネル工事の計画に対する住民の反対運動があったことも語られた。特に、トンネル工事を行うことで、封印が解かれ悪霊が現れる危険性など警告されていた。
これまでの心霊現象やトラブルの要因が明らかにされたようだった。陽菜たちは、この地に眠る多くの魂の苦しみを感じ取り、何かをしなければならないという使命感に駆られた。
その後、寮たちは公会堂で集まり元の時代に戻るために再び洞窟に向かい、石碑に対し改めて封印の儀を行うことについて話し合った。
寮「元の時代に戻るためには再び、あの洞窟の中にある石碑に向かって封印の儀を行ってみようと思う。」
由香「今、できそうなことは、それくらいだね。試してみよう」
陽菜「この世界で生きていくなんて無理よ。スマホもエアコンもないし、コンビニもない世界なんて」
春香「私は、今のこの時代でも平気です。でも、元の時代に戻りたいです。」
葵「私も元の時代に戻りたいです。江戸時代でなくて良かったけど、不便な時代ね」
寮「明日の朝、また洞窟の祠に集まって封印の儀を行おう。」
翌日、みんなで集まり、再び封印の儀を行った。全員で石碑に向かい封印の儀を行う。再びまぶしい光が辺りを包んでいった。
気付くと、寮たちは元の場所に戻っており、他の部員たちが見守っていた。
***現在への帰還***
「私たち、帰ってきたの?」と陽菜が喜びながら佐藤部長に話しかけた。
「光が発せられたのはわかったが、何も起きていなかったよ」と佐藤部長は答えた。寮たちが体験した出来事を話すと、「なるほど、不思議だ。もしかしたら、村人たちの霊が君たちに事情を知らせたかったのかもしれないね」と佐藤部長は言った。
「とにかく、祠の封印の儀は成功したみたいだ。これで大丈夫だろうね、当分の間は」と付け加えた。
その後、この話を手がかりに、再び山頂の高台を調べることにした。廃墟になっていた建物の調査を進めていくと、地下に続く梯子があり、その下には洞窟が広がっていた。奥に進むと、そこにも石碑があり、改めて封印の儀を行った。
佐藤先輩も「これで一安心だね」と安心した様子だった。
これで、この心霊スポット全域に対する封印が完了した。
その後もオカルト部は、しばらく調査を続ける予定だったが、陽菜や春香、由香は、ゴールデンウィークが終わることから帰ることにした。帰りの車の中で、春香が静かに陽菜に話しかけた。
「陽菜ちゃん、これで良かったのかな?」
陽菜は窓の外を見つめながら、しばらく考えてから答えた。「私には全てを理解することはできないけれど、今できるだけのことはやったと思うわ。今回の活動で、たくさんの霊を救うこともできたし、悪い霊もたくさん浄化したんだから十分よ。それに、私たちも大切なことを学んだと思う。」
由香が続ける「私も寮君に出会ってから色々と不思議体験をしているから。放っておいてもまた次の事件が起きるよ。当分の間は、来なくて良いけどね。でも、これからも私たちにしかできないことがあるかもしれない。」
陽菜と春香はお互いに見つめ合い、納得したかのような笑顔を交わした。陽菜は、心の中で何かが解放された感覚を覚えていた。「私たちが今できることを全力でやったわ。これで良かったのかもしれない」と、彼女は春香に静かに話しかけた。春香は、陽菜の言葉にうなずきながら、未来に希望を感じた。
陽菜たちが車から降りると、ひかりさんや真紀が笑顔で手を振っていた。
ひかり「ごくろうさま」
真紀「これから一緒にみんなで食事に行こうよ。今夜は打ち上げパーティーよ。予算はオカルト研究部持ちだって、さっき、佐藤部長から電話があったよ」
陽菜「やったね♪春香ちゃん」
春香「うん。陽菜ちゃん」
陽菜と春香はお互いに見つめ合い、納得したかのような笑顔を返した。彼女たちの冒険はこれで一旦終わりを迎えるが、彼女たちの未来はまだまだ広がっている。
そして数日後、陽菜は自宅で一人、今回の出来事について振り返っていた。タイムスリップの経験は、彼女の中で大きな変化をもたらしていた。過去の悲劇を目の当たりにし、現代の生活の有り難さを実感したのだ。
彼女は日記を開き、ペンを走らせ始めた。
「私たちが体験したタイムスリップ。それは単なる偶然ではなく、過去と現在を繋ぐ何かの意志だったのかもしれない。60年前の村人たちの思いが、私たちを呼び寄せたのだろうか。
今回の経験で、歴史の重みと、人々の想いの強さを感じた。現代に生きる私たちにも、過去とのつながりがあることを忘れてはいけない。
そして、オカルト研究部での活動を通じて、仲間たちとの絆の大切さも学んだ。春香ちゃんの優しさ、寮君の冷静さ、由香さんの知識...みんなが互いを支え合ってこそ、困難を乗り越えられたんだと思う。
これからも、不思議な出来事は起こるかもしれない。でも、怖がるのではなく、その意味を考え、向き合っていきたい。そして、仲間たちと一緒に、新たな冒険に踏み出す勇気を持ち続けたい。
私たちの冒険は、ここで終わりではない。むしろ、新たな始まりなのかもしれない。過去と現在、そして未来をつなぐ架け橋として、私たちにできることがまだあるはずだ。」
陽菜は日記を閉じ、窓の外を見た。夕暮れの空が美しく染まっていた。彼女の心に、新たな決意と期待が芽生えていた。この経験を糧に、彼女の人生はさらに豊かなものになっていくだろう。そして、オカルト研究部の仲間たちと共に、まだ見ぬ不思議な世界への冒険 が、彼女たちを待っているのかもしれない。
(私はまだ、中学3年生。後4年後には、緑大学のオカルト研究部に入ろう)
陽菜は深呼吸をし、窓を開けた。夕暮れの風が部屋に流れ込み、彼女の長い髪を優しく揺らした。その瞬間、彼女のペンダントが微かに光ったような気がした。
翌日、教室で知佳と再会した陽菜は、昨夜の出来事を話した。
「ねえ、知佳ちゃん。昨日、不思議なことがあったの」陽菜は小声で話し始めた。
知佳は興味深そうに耳を傾けた。「何があったの?」
「私のペンダントが、急に光ったの。それで...」陽菜は言葉を探すように少し躊躇した。「なんだか、私たちの冒険はまだ終わっていない気がするの」
知佳は驚いた表情を見せたが、すぐに優しい笑顔に変わった。「そうね。私もそんな気がするよ。陽菜ちゃんには、まだやるべきことがあるのかもしれないわ」
授業が終わると、二人は急いで春香の居るお寺に向かった。そこには春香と住職がいつもの様に居た。
「春香ちゃん、今日も座禅しに来たよ」
「今日も元気ですね。知佳ちゃん」
また、いつもの様に平穏な日々が戻っていた。 陽菜の廃村編 終
今回でやっと、廃村の心霊スポット編が終わります。
スピンオフ版の陽菜編も、今回で一旦終了です。
本編の最終回で気になっていた廃村の出来事もこれで解決です。
ご購読、ありがとうございました。
なんとか、ここまで漕ぎつける事が出来ました。




