霊視ゼロの僕とオカルト研究会 スピリチュアルズ ジャーニー 寮 スピンオフ版
この物語は、寮が大学を卒業し2年経ったオカルト研究部に1年生として入学した青年の話になります。
寮が大学を卒業して2年が過ぎていた。
春風が桜の花びらを舞わせる中、緑大学の正門をくぐった僕、高橋亜希彦18歳。この瞬間から大学生活が始まる。でも、僕の頭の中は入学式のことなんかじゃない。ただ一つのことで頭がいっぱいだった。オカルト研究部。
高校1年生の頃から、緑大学のオカルト研究会が運営するYouTubeチャンネルの大ファンだった僕は、このチャンネルをきっかけに緑大学に興味を持ち、必死で勉強して合格した。正直、学部のことなんてどうでもよかった。僕の目的はただ一つ。オカルト研究会に入ることだった。
オカルト研究部のユーチューブでは、色々な怪奇現象の調査報告や科学的な分析など、他の心霊ユーチューブと違い、納得できる説明が多くあった。また、当時、オカルト部員だった寮さんが、霊について詳しく説明しており、必ずしも霊は邪悪な存在とも限らないことを指摘されていた。寮さんのやさしさや思いやりを感じることができ、僕は強く惹かれていった。
その影響から、不思議な世界を調べたいという強い気持ちが芽生えた。ただ、正直に言うと、僕には霊感がまったくない。文字通り霊感ゼロだ。オカルト雑誌は山ほど読んだし、有名な心霊スポットの話だってほとんど暗記しているくらいだ。でも、本当に幽霊がいるなんて、どこか信じられない自分もいる。そんな僕がオカルト研究会に入りたいなんて、矛盾しているのかもしれない。
キャンパスに入り、オカルト研究会の部室を探し始めた僕は、ふと立ち止まった。目の前にスラッとした綺麗な女性が立っている。長い黒髪が春風に揺れ、大きな瞳が僕を見つめていた。思わず息を呑むほどの美しさだった。
「あの、この辺にオカルト研究会はありますか?」と、僕は緊張しながら声をかけた。
女性は僕を見て、柔らかな笑顔を浮かべた。「君はオカルト研究会に入部するの?」
その声は、春の陽気のように明るく温かかった。ちょっとキモいと思われたくない気持ちもあって、僕は少し素っ気なく答えた。「いや、ちょっと怪しい感じの所だから、試しに覗いてみたかっただけ。」と、さり気ない感じで答えた。
「フーン」と女性は楽しそうに笑った。その笑顔に、僕は思わず見とれてしまった。「私は今度オカルト研究会に入部することになった陽菜です♪」
僕は驚いた。こんな綺麗な人がオカルト研究会に?しかも、新入部員?
「君も、良かったら私と一緒に入部しようよ」と陽菜は明るく誘ってきた。その笑顔に、僕は断る理由を見つけられなかった。
「亜希彦です」と僕は自己紹介した。名前を言った瞬間、何か運命的なものを感じた。
「じゃあ、一緒に行こう!」
次の瞬間、陽菜は僕の手を取り、オカルト研究部の方へ引っ張っていった。その手の温もりに、僕は戸惑いながらも、彼女についていくしかなかった。廊下を曲がり、階段を上がり、そして古びた扉の前で陽菜は立ち止まった。
部室のドアの前で、陽菜は軽くノックした。「こんにちは、新入部員希望の亜希彦君を連れてきた陽菜です♪」
ドアが開き、優しそうな顔の先輩が現れた。「僕が今のオカルト研究部の鈴木です。陽菜ちゃん、待っていたよ。」鈴木先輩は僕を見て、少し驚いた表情を浮かべた。「えっと、君は亜希彦君?陽菜ちゃんと何か関係があるの?」
「いえ、さっき初対面です…」僕は慌てて答えた。陽菜と知り合いだと思われたことに、どこか嬉しさを感じながら。
「陽菜ちゃんの知り合いだから、何か霊能者かと思って。ごめんね」鈴木先輩は申し訳なさそうに笑った。「入部希望はこっちで受け付けるよ。」そう言って、鈴木先輩は僕に申込用紙とアンケートを渡した。
僕は緊張しながらも、一生懸命にアンケートに記入し、入部動機を書いた。YouTubeチャンネルのファンだったことや、寮さんの影響で興味を持ったことなど、正直に書いた。書き終えると、鈴木先輩が僕と陽菜を部室の中心に立たせた。
「まずは新しく入部希望の陽菜ちゃんと亜希彦君。これからよろしく。」部員たちから拍手が起こる。僕は緊張しながらも、どこか嬉しさを感じていた。これから、僕はオカルト研究会の一員として第一歩を踏み出すことになる。霊感ゼロの僕に何ができるのか。不安と期待が入り混じる中、僕の大学生活が始まった。
それから、幾らか新入部員として色々な説明を受けたり、勉強を励むことになった。鈴木先輩に「亜希彦君は、心霊関係のことに詳しいね。心霊研究班に参加するといいよ」と勧められ、「ありがとうございます。僕も寮さんみたいに、色々な心霊問題に興味があります。僕も、寮さんみたいに、頑張りたいです」と答えた。
陽菜も明るく挨拶して部室に入って来た。「亜希彦君って、心霊現象に興味があるんだね。寮君のことにも興味があるんだ。では、特別に教えて進ぜよう。私は、寮君から古代魔法を教えて貰ったの。さらに、霊光弾と言った魔法も使えるの。すでに寮君を超えているのよ。魔法使いとしてはね」陽菜は話を続けた。「私も元々、霊感は無かったんだけど、ある事で霊能力に目覚めたんだ。亜希彦君は指導霊って信じる?」
亜希彦は驚いて尋ねた。「古代魔法?霊光弾?寮君から教えてもらった?あの…寮君と知り合いだったんですか?指導霊って、、、話は聞いた事があります。」と、少し混乱して答えた。
陽菜は答えた。「まぁ、寮君は、遠い親戚ね。霊感が無くても大丈夫。今度、インターネットからの調査依頼で出かけるみたいだから、亜希彦君も一緒に行こう」と誘われ、亜希彦は自然に「はい、わかりました」と答えていた。
その日から、僕の大学生活は予想もしなかった方向に進んでいった。授業よりも、オカルト研究会の活動に熱中する日々。特に、陽菜との時間が楽しみだった。彼女の話す不思議な世界は、僕の想像を遥かに超えていた。
***はじめての心霊調査***
調査当日、僕たちは部室に集合した。鈴木先輩が機材の確認をしている間、陽菜は僕に近づいてきた。
陽菜:『緊張してる? 大丈夫、私がついてるから。安心してね』
陽菜の言葉に、僕は少し勇気をもらえた気がした。それでも、人生初の心霊スポットの調査に、僕の心臓は高鳴っていた。「よし、僕も霊をカメラに写すぞ」と意気込んだが、内心では不安でいっぱいだった。
依頼があった場所は、依頼者の近くに建てられている空き家だった。夕暮れ時、その家は不気味な影を落としていた。時々、霊を視た目撃情報も噂されており、近所では気味が悪いと噂になっていた建物だった。
鈴木先輩を含めた5名で調査をする事になっていた。鈴木先輩たちは、建物の外回りや裏庭から建物に入り調査する事になった。亜希彦と陽菜は玄関から建物の中に入って調査する事になった。
玄関の戸を開けると、埃っぽい空気が僕たちを迎えた。家の中は暗く、僕たちの足音だけが静寂を破っていた。
亜希彦は、少し緊張して「なんだか、本当に幽霊が出て来そうな感じだね。。。」と、陽菜に問いかけた。
陽菜は落ち着いた様子で答えた。「そうね。でも、怖がることはないわ。霊の多くは、ただ自分の存在を認めてほしいだけなの。」
順番に部屋の中を見て回り、居間に入った所で「亜希彦君、そこにカメラを向けて」と陽菜が亜希彦に指示した。「今よ」と陽菜が合図する。
亜希彦は、言われるままに、カメラのシャッターボタンを押した。ファインダーを覗き込むと、何か白い靄のようなものが写っているように見えた。
亜希彦は写った画像を見て、本当にこれが霊なのか信じられない気持ちだった。陽菜は何かを感じ取ったのか、「亜希彦君、気を付けて」と声を掛けた。亜希彦は何がどうなのか分からなかった。
「別に何もないと思います」と陽菜に向かって答えかけると、陽菜が手を前に出し、「霊光弾」と呟いた。その瞬間、何か霊光の光が一瞬見えた。その後、亜希彦の頭上で黒い影のようなものが霊光に覆われて光の粒子となって消滅していった。その空間の周りは歪んでいるように見え、亜希彦は目の錯覚なのかと疑った。
「何かあったんですか?」と亜希彦は陽菜に向かって尋ねた。心臓が激しく鼓動していた。
陽菜は軽く答えた。「ちょっと悪霊が亜希彦君に憑りつこうとしていただけ。浄化したから大丈夫よ♪」
亜希彦は驚いて尋ねた。「あ、悪霊って本当にいるんですか?」声が震えていた。
陽菜は明るく笑って返事をした。「だから、オカルト研究部が必要とされているのよ。」その笑顔に、僕は少し安心した。
陽菜は鈴木部長に向かって、「今の悪霊が多分、ここの主だと思います。他の霊は、特別危害を加える可能性は低いです」と話した。
鈴木先輩もその話を聞いて、「ありがとう陽菜ちゃん。やっと、オカルト研究部の心霊対策班も、寮先輩がいた時のように活動できるようになった」と喜んでいた。
一通り調査を終えた後、陽菜が亜希彦に向かって「初体験はどうだった?」と尋ねた。
亜希彦は赤くなりながら答えた。「は、初体験は、まだです。」
陽菜は茶化すように言った。「そっちの話じゃなくて、心霊体験よ。」その言葉に、僕は更に顔を赤らめた。
「正直、怖かったです。でも、すごく興味深かった。」僕は正直に答えた。「陽菜さんの力を見て、本当に霊が存在するんだって実感しました。」
陽菜は優しく微笑んだ。「良かった。これからもっと色々な経験ができるわ。一緒に頑張りましょう。」
その言葉に、僕は強く頷いた
***現実の心霊***
数日後、オカルト研究会の部室で、亜希彦は鈴木先輩に初めての心霊スポット体験について報告することになった。部室の薄暗い照明の下、古びた本棚や不思議な道具に囲まれながら、亜希彦は緊張した面持ちで話し始めた。
亜希彦「鈴木先輩、初めての心霊スポット体験について報告したいんですけど、実は僕、霊を視たり感じられなかったんです。何がどうなったのか、全然わからなくて…。心霊スポットが危険って言われても、正直ピンと来ないんです。」
鈴木先輩は少し考え込んでから、優しく微笑んだ。窓から差し込む夕日の光が、彼の穏やかな表情を照らしていた。「亜希彦君、それは自然なことだよ。実際のところ、ただの噂だけの場所も多いし、ユーチューブや心霊情報でもやらせっぽいところもあるからね。」
亜希彦は頷きながら聞いた。心の中で少し安堵しながらも、まだ納得できない何かがあった。「そうですよね…。本当に幽霊がいるなんて、どこか信じられなくて。」
鈴木先輩は立ち上がり、窓際に歩み寄った。外では、夕暮れの空が鮮やかな色彩を見せていた。「実は、心霊スポットって、案外身近な場所にあることが多いんだよ。本当の意味での心霊スポットは、人々が無意識に危険を感じたり、察知して近寄らない場所なんだ。だから、あまり有名じゃない場所の方が本当に危険な場合もある。」
亜希彦「身近な場所…例えばどんなところですか?」好奇心に駆られて、亜希彦は身を乗り出した。
鈴木先輩「例えば、古い空き家や廃墟、誰も住んでいない家なんかがそうだね。人々が無意識に避ける場所には、何かしらの理由があることが多い。霊的なエネルギーが強い場所や、過去に悲劇があった場所など、そういうところが本当の心霊スポットなんだ。」
亜希彦は少し考え込んだ。自分たちが調査した空き家のことを思い出し、背筋が少し寒くなった。「なるほど…。だから、ただの噂だけじゃなくて、本当に危険な場所もあるんですね。」
鈴木先輩は頷いた。「そうだよ。心霊スポットを調査する時は、そういう場所を見極めることが大切なんだ。無意識に感じる危険を信じることも必要なんだよ。」
亜希彦は鈴木先輩の言葉に納得しながらも、まだ半信半疑の部分が残っていた。自分の経験と先輩の言葉を結びつけようと必死だった。「それでも、やっぱり実際に霊を見たり感じたりできるようになるにはどうすればいいんでしょうか?」
鈴木先輩は優しく答えた。「霊を見たり感じたりする能力は、訓練や経験を積むことで少しずつ身につくこともあるよ。でも、何よりも大切なのは、自分の直感や感覚を信じること。無理に霊を見ようとするんじゃなくて、自然に感じることを大事にしてほしい。」
亜希彦はその言葉に勇気をもらい、決意を新たにした。「わかりました。これからもっと経験を積んで、霊を感じられるようになりたいです。」
鈴木先輩は満足そうに頷いた。「その意気だよ、亜希彦君。これからも一緒に頑張ろう。」
こうして、亜希彦は鈴木先輩のアドバイスを胸に刻みながら、オカルト研究会での活動にますます情熱を注ぐことを誓った。彼の大学生活は、まだまだ始まったばかりであり、数々の心霊体験が彼を待ち受けていることを知る由もなかった。
***深まる謎と新たな挑戦***
それから数週間が過ぎ、亜希彦はオカルト研究会の活動にすっかり馴染んでいった。授業の合間を縫って部室に通い、先輩たちから様々な知識を吸収していった。特に陽菜との時間は、彼にとって特別なものになっていた。
ある日の午後、部室で資料整理をしていた亜希彦の元に、陽菜が興奮した様子で駆け込んできた。
「亜希彦君!大変なのよ!」陽菜の声には、普段には無い緊迫感があった。
「どうしたの、陽菜さん?」亜希彦は手元の作業を止め、陽菜を見つめた。
陽菜は息を整えながら話し始めた。「私たちが前に調査した空き家、覚えてる?あそこで、また怪しい現象が起きているみたいなの。今度は、近所の人が夜中に奇妙な光を見たって言うの。」
亜希彦は驚いて聞いた。「え?あの時、陽菜さんが悪霊を退治したんじゃなかったの?」
陽菜は首を横に振った。「そう思っていたんだけど…どうやら、私たちが見逃していた何かがあったみたい。鈴木先輩も心配してて、もう一度調査に行くことになったわ。」
亜希彦は少し躊躇いながらも、決意を固めた。「僕も行きます。前回よりも何か感じられるかもしれない。」
陽菜は嬉しそうに笑った。「そう言ってくれると思ってた。じゃあ、明日の夜、現地集合ね。」
翌日の夜、亜希彦たちは再び例の空き家の前に立っていた。今回は鈴木先輩も同行し、より慎重な調査が行われることになっていた。
家の中に入ると、以前よりも重苦しい空気が漂っているように感じられた。亜希彦は緊張しながらも、鈴木先輩から教わった通り、自分の感覚に集中しようとしていた。
突然、二階から物音がした。全員が凍りついたように動きを止めた。
「上に何かいるわ。」陽菜が小声で言った。
鈴木先輩が指示を出した。「みんな、気を付けて。ゆっくり二階に上がろう。」
階段を上がりながら、亜希彦の心臓は激しく鼓動していた。二階の廊下に出ると、奥の部屋から微かな光が漏れているのが見えた。
鈴木先輩が先頭に立ち、その部屋のドアをゆっくりと開けた。
部屋の中央には、淡い青白い光に包まれた人影のようなものが浮かんでいた。それは人の形をしているようで、しかし完全に透明ではなかった。
亜希彦は息を呑んだ。これが本物の幽霊なのか?彼の頭の中で、科学的な説明を探そうとする理性と、目の前の現実を受け入れようとする感覚が激しくぶつかり合っていた。
陽菜が一歩前に出た。「こんばんは。私たちはあなたを害するためではなく、理解するために来ました。」
人影はゆっくりと陽菜の方を向いた。そして、かすかな声が聞こえてきた。
「助けて…私を…解放して…」
その瞬間、部屋中の空気が凍りついたように感じた。亜希彦は、初めて霊の存在を明確に感じ取ることができた。それは恐怖というよりも、深い悲しみと孤独感だった。
鈴木先輩が静かに言った。「この霊は、何かに縛られているんだ。おそらく、この家で起こった過去の出来事と関係があるんだろう。」
陽菜は霊に向かって優しく語りかけた。「あなたの苦しみ、わかります。でも、もうこの世界に留まる必要はないのよ。安らかに次の世界へ行けますように。」
陽菜が両手を前に出すと、温かな光が彼女の手から放たれ、霊を包み込んでいった。霊はゆっくりとその姿を消していき、最後に「ありがとう…」というかすかな声を残して完全に消えた。
部屋に静寂が戻った。亜希彦は、自分が何か大切なものを目撃したという感覚に包まれていた。
鈴木先輩が亜希彦の肩に手を置いた。「よく頑張ったな、亜希彦。どうだ、何か感じるものはあったか?」
亜希彦はゆっくりと頷いた。「はい…霊の悲しみと、解放されたときの安堵を…感じました。」
陽菜が優しく微笑んだ。「それが大切なの、亜希彦君。霊を見るだけじゃなく、感じること。あなたも少しずつ、その能力が育ってきているわ。」
その夜の経験は、亜希彦に大きな影響を与えた。霊の存在を明確に感じ取れたことで、彼の中にあった懐疑心は薄れ、代わりに新たな好奇心と使命感が芽生えていった。
オカルト研究会での活動は、これまで以上に真剣なものとなった。亜希彦は霊感を磨くための瞑想や、陽菜から教わる基礎的な霊力の扱い方を熱心に学んだ。同時に、鈴木先輩から学ぶ科学的なアプローチも忘れなかった。
大学の授業と部活動の両立は決して楽ではなかったが、亜希彦は充実感を感じていた。時には危険な目に遭うこともあったが、仲間たちと協力して乗り越えていった。
亜希彦も一人前のオカルト研究部員として認められるようになっていた。彼の経験は、YouTubeチャンネルでも紹介され、多くの視聴者の関心を集めた。
亜希彦は時々、あの春の日に陽菜と出会わなければ、今の自分はなかったのだろうと思い返す。オカルト研究会での活動は、単なる趣味を超えて、彼の人生を大きく変える転機となったのだ。
***運命の再会***
秋の日差しが部室の窓から差し込む午後、亜希彦は古い資料の整理に没頭していた。突然、廊下から聞き覚えのある声が響いてきた。亜希彦の心臓が高鳴り始める。その声は、彼がYouTubeで何度も聞いた、憧れの先輩のものだった。
「久しぶりだね、鈴木くん。部室の雰囲気、少しも変わってないな」
亜希彦は息を呑んだ。ゆっくりと振り向くと、そこには伝説の先輩、寮の姿があった。スーツ姿でありながら、どこか昔の面影を残す寮の姿に、亜希彦は言葉を失った。
鈴木先輩が嬉しそうに寮に駆け寄る。「寮先輩!本当に来てくれたんですね!」
寮は優しく微笑んだ。「約束したからね。オカルト研究部は私の原点だ。忘れるわけがないよ」
その時、寮の目が亜希彦に向けられた。亜希彦は緊張で体が硬直するのを感じた。
「君が亜希彦くんだね」寮が静かに言った。「鈴木から聞いていたよ。君のことを」
亜希彦は驚いた。「え?僕のことを?」
寮はゆっくりと亜希彦に近づいた。「ああ、霊感はないけど、オカルトへの情熱は誰にも負けない。そんな後輩がいると聞いてね」寮の目には温かな光が宿っていた。「君の成長ぶりは、このオカルト研究部のYouTubeチャンネルで見させてもらったよ」
亜希彦の目に涙が浮かんだ。憧れの先輩に認められた喜びが、彼の心を満たしていく。
「寮先輩...僕、先輩のようになりたいんです。オカルトを通じて、人々の心に寄り添えるような...そんな人間に」
寮は優しく亜希彦の肩に手を置いた。「君ならきっとなれる。いや、もう十分なっているよ。大切なのは、霊感の有無じゃない。人の心を感じる力さ」
その瞬間、部室全体が温かな空気に包まれた。まるで、過去と現在、そして未来が一つにつながったかのような感覚。
寮は懐かしそうに部室を見回した。「今日は取材で来たんだけど、それ以上に大切なものを見つけられた気がするよ」彼の目には、かすかな涙が光っていた。
亜希彦は深く頷いた。この出会いが、彼の人生の新たな転機になることを、心の奥底で感じていた。
部室の窓から差し込む夕日が、寮と亜希彦の姿を優しく照らしていた。それは、オカルト研究部の新たな章の始まりを告げるかのようだった。
スピンオフ版として、今回は書いてみました。
最終回から数年経った頃の話になります。




