霊光の守護者たち 最後の浄化
心霊スポットの調査から帰った寮達は、再び、心霊スポットに行くのか?
8月が終わりを告げる風が、静かな町を吹き抜けていった。寮は窓辺に立ち、遠くに広がる山々を眺めていた。あの日々から1週間が過ぎ、日常の穏やかさが戻ってきたかに見えた。しかし、心の奥底では、あの体験が鮮明に残っていた。
「寮君、麦茶を入れたよ」
陽菜の声に振り返ると、彼女が優しい笑顔で麦茶を差し出していた。寮は感謝の言葉を述べ、コップを受け取った。
二人は静かにお茶を飲みながら、窓の外の景色を眺めていた。しばらくの沈黙の後、陽菜が口を開いた。
「ねえ、寮君。また、心霊スポットに行くの?」
その言葉に、寮は少し考え込んだ。「正直、迷っているんだ」彼はコップを置き、真剣な表情で続けた。「前回は陽菜に頼りすぎてしまったし、危険も多かった。無理をして出向く必要があるのかな、って」
陽菜も同意するように頷いた。「確かに。私も自分の実力不足を感じたわ。霊光弾は使えたけど、それだけじゃ足りないって分かった」
二人の脳裏に、あの日々の記憶が蘇る。数え切れないほどの亡霊や怨霊との対峙。仲間たちとの協力。そして、危うく命を落としかけた瞬間。全てが鮮明に甦ってきた。
「でも」寮が静かに言った。「あの時、多くの魂を救えたのも事実だよね」
陽菜は少し驚いたように寮を見つめた。「そうね。私たちにしかできないことだったかもしれない」
その時、寮のスマートフォンが鳴った。画面を見ると、一之瀬先輩からのメッセージだった。
「高台の調査に行くことになった。君たちも来ないか?」
寮は陽菜に画面を見せた。「どうする?」
陽菜は一瞬躊躇したが、すぐに決意を固めたように答えた。「行くわ。私が居ないと、みんな危ないから」
翌日、二人は再び山小屋へと向かった。到着すると、以前よりも少ない人数に気がついた。由香、葵、海斗、沙織の姿がなかった。
「みんなは?」寮が尋ねると、一之瀬先輩が少し寂しそうに答えた。
「由香は消耗が激しくて、しばらく休養が必要なんだ。葵は...もう近寄りたくないって。海斗と沙織も今回は辞退した」
寮と陽菜は互いに目を合わせた。仲間たちの決断は理解できた。あの恐怖と緊張を再び味わいたくない気持ちは、十分に分かる。
山小屋では、新しく加わった部員の佐藤が出迎えてくれた。「お帰りなさい!これまでの状況をお伝えします」
佐藤の報告によると、山小屋一帯は意外にも平穏を保っていた。寮たちが去った後、大きな異変は起きていないという。
「不思議ですね」陽菜がつぶやいた。「私たちがいなくても、大丈夫だったなんて」
一之瀬先輩が真剣な表情で答えた。「それが気になるんだ。表面上は平穏でも、何か大きなものが蓄積されているかもしれない」
準備を整えた一行は、車に乗り込んだ。目的地である高台まで、約1時間の道のりだ。
車窓から流れる景色を眺めながら、寮の脳裏にタイムリープ前の記憶が蘇る。この高台で起きかけた事件を、かつては防ぐことができた。しかし、タイムリープ後の今回は...。悔しさが胸に残る。
「寮君、大丈夫?」陽菜の声に我に返る。
「ああ、ちょっと考え事をしてた」寮は微笑んで答えた。
車は山道を登り、やがて高台に到着した。眼下に広がる町の景色は、平和そのものに見えた。しかし、寮たちは肌で感じていた。この地に漂う異様な空気を。
一之瀬先輩が指示を出す。「まずは結界を張る。佐藤、準備を頼む」
佐藤は素早く動き、魔法陣の結界シートを広げ始めた。
寮、陽菜、一之瀬先輩は、その魔法陣の中心に立った。寮が古文書を取り出し、魔法陣の上に置く。
「準備はいいか?」一之瀬先輩の声に、二人は頷いた。
寮が呪文を唱え始めた瞬間、周囲の空気が変わった。突如として、悪霊や怨霊の気配が濃厚になる。
「来たわ!」陽菜が叫び、霊光弾を放ち始めた。眩い光が次々と放たれ、迫り来る悪霊を浄化していく。
しかし、浄化される速度以上に新たな悪霊が押し寄せてくる。まるで、この地に眠っていた全ての負の感情が一斉に噴出したかのようだ。
「くっ...」一之瀬先輩が呻いた。「こんなに多いとは...」
陽菜の霊光弾が次々と放たれる。霊光弾で浄化される霊光の光が絶え間なく照らす。しかし、それでも次々と現れる悪霊達の姿が目に映った。
「寮君、急いで!」陽菜の声に焦りが混じる。
寮は深く息を吸い、集中力を高める。古文書に記された最後の言葉。それを唱えれば、この地域全体を浄化できるはずだ。
しかし、その瞬間、予想外の事態が起こった。
巨大な黒い影が、突如として魔法陣の中心に現れたのだ。その影は人の形をしていたが、どこか歪んでいて、見るものの心を凍らせるような不気味さがあった。
「な...何なの、これ!?」陽菜の声が震えた。
寮は古文書を強く握りしめた。「わからない...でも、これを倒さないと浄化は完了しない!」
巨大な影は、ゆっくりと二人に近づいてきた。その足跡には、地面が焦げたような跡が残る。
「陽菜、僕に力を!」寮が叫んだ。
陽菜は即座に反応し、寮の背中に手を当てた。二人の間に、淡い光の糸が浮かび上がる。
寮は古文書を掲げ、力強く呪文を唱え始めた。その声は、周囲の喧騒を押し切るほどの迫力があった。
巨大な影が、まるで苦しむかのように身をよじる。しかし、それでも諦めずに二人に近づいてくる。
「もう...限界...」陽菜の声が弱々しくなる。
寮も息が上がっていた。「あと...少し...!」
その時、突然、古文書が眩い光を放った。その光は、寮と陽菜を包み込み、やがて高台全体に広がっていく。
巨大な影は、光に包まれるとゆっくりと形を失っていった。そして最後に、光の粒子となって消えていった。
光が収まると、辺りには不思議な静けさが広がっていた。寮と陽菜は、互いに支え合いながら、立ち尽くしていた。
「成功...したの?」陽菜が小声で尋ねた。
寮はゆっくりと頷いた。「うん...でも、あれは一体...」
一之瀬先輩が二人に駆け寄ってきた。「大丈夫か!?すごい光だったぞ」
寮は古文書を見つめながら答えた。「はい...なんとか。でも、最後に現れたあの影...あれは普通の悪霊じゃありません」
一之瀬先輩の表情が曇った。「そうか...これは予想外だ。早急に調査が必要だな」
高台から町を見下ろす三人の表情には、達成感と共に、新たな不安が混じっていた。
夕暮れの空が、静かに彼らを包み込んでいった。しかし、その美しい景色の中にも、何か不穏な空気が漂っているように感じられた。
「どちらにしても、これ以上、僕たちが悪霊と戦えるだけの力は残されてない。これが、手間の我々に出来る最良の策だ。寮君、陽菜ちゃん、ありがとう感謝するよ。」一之瀬先輩は、お礼を言った。
***浄化後の後***
数日後、大学のキャンパス。寮と陽菜は、ベンチに腰掛けていた。
「不思議だよね」寮がつぶやいた。「あんなに激しかった体験なのに、今はまるで夢だったみたいだ」
陽菜も同意するように頷いた。「でも、私たちの中に、確かに何かが変わったわ」
二人は黙ってキャンパスの風景を眺めていた。学生たちが行き交い、木々が風に揺れる。普通の日常。しかし、その裏側に潜む世界を知ってしまった今、全てが新鮮に感じられた。
「ねえ、寮君」陽菜が静かに言った。「私たち、これからどうする?あの影のこと、気になるわ」
寮は空を見上げた。「正直、怖いよ。でも...」
彼は陽菜の目を見つめた。「今の僕たちにしかできないことがあるんじゃないかな。あの影の正体、そして、心霊スポツトに隠された真実。それを明らかにする事が出来るのかは、分からない。」
陽菜は微笑んで頷いた。「うん、そうね。私も、もっと力をつけなきゃ。」
その後、一之瀬さん達オカルト研究部は、
これまでの心霊スポットの調査結果や歴史など発表した。
ただ、心霊現象については、錯覚や心理的影響で感じられた可能性も高いと記されていた。
今回で、心霊スポット編は、一旦、終了です。
けっこう長いシリーズになりましたが、他にも色々続けるときりがないので今回は一旦、浄化されたよ。と、いった形で心霊スポット編は幕を閉じます。
あまり引っ張ると、ホラーゲームみたいになるので
この辺りで引く形にしました。連続で色々な建物や廃村の調査が続くと
地味な展開になると思った所もあります。
感想をお待ちしています。また、誤字脱字などあれば、連絡して頂けると助かります。
ご購読、ありがとうございました。
これで、しばらく充電できそうな気持もあります^^




