新たな手がかり
寮たちはトンネルの調査を行った後、引き続き、この地の歴史を調べていた。
そんなある日、一之瀬先輩から、新たなる情報を得る事ができた。
***新たな手がかり***
寮たちは、編集部に戻ってからも引き続き、トンネル周辺とその歴史に関する調査を続けていた。この地域にまつわる謎が、悪霊の存在と深く関係していることは明らかだったが詳細な情報が不足していた。そんなある日、一之瀬先輩から新たな発見の報告が届いた。
「寮くん、ついに古い封印の伝説に関する記録を見つけたんだ。悪霊を封じ込めるために行われた儀式の痕跡だよ!」一之瀬先輩は、電話の向こうで興奮気味に語った。「その儀式では、特定の場所に祀られている石碑や祠が重要な役割を果たしていたらしいんだ。記録は断片的で完全なものではないけど、今の状況を打破するための貴重な手掛かりになりそうだ」
寮はその情報を受け、すぐに編集部の涼子編集長や國府田、前田と共有することにした。
***編集部のミーティング***
「この封印の儀式は、トンネル周辺にある祠や石碑と深い関連があるようです。これが悪霊を封じ込める鍵になるかもしれません」と寮は説明した。
涼子編集長は資料に目を通しながら、黙り込んで考え込んだ。「封印が行われた正確な場所を特定できれば、再現することで悪霊を封じ込めることができる可能性があるわ。ただ、まだ不明な点が多すぎるわね。もう少し深掘りして調査を進める必要がありそう」
寮のスマホが鳴り、鈴木からのメールが届いた。メールには、ドローン映像を基にした調査報告と資料が添付されていた。
***鈴木からの調査報告***
鈴木が送ってきた報告には、ドローンで撮影したトンネル周辺の映像が含まれていた。そこには、複数の祠や石碑が映し出されていた。それらは決して偶然そこにあるものではなく、意図的に配置されていることが明白だった。
「これらの石碑や祠は、単なる装飾ではなく、かつて封じ込められていた悪霊を抑え込むための結界の一部だったと考えられます」と鈴木の報告には記されていた。さらに、これらの祠や石碑が特定の方角に向けて配置されていることも明らかになっており、それが封印の鍵であることが示唆されていた。
「これで封印の謎に一歩近づいたわね」と涼子編集長が言った。「でも、この情報だけでは完全に封印を再現できるとは限らないわ。過去に何があったのか、その詳細を掘り下げないと」
寮は鈴木の報告を熟読しながら、國府田に向かって言った。「儀式の配置や構造は徐々に見えてきたが、なぜ封印が解けたのか、まだはっきりしていない。もう一度、公園で出会った霊の話を確認する必要があるかもしれない」
國府田は頷き、「霊の証言では、公園での封印の試みが失敗に終わったと聞いています。その原因を突き止めないと、私たちも同じ過ちを繰り返す可能性がありますね」と慎重に返した。
前田は腕を組み、深く考え込んだ。「このままでは、封印の成功は難しいかもしれない。何か大きな見落としがあるような気がします」
その後、一之瀬先輩から新たな資料が届いた。その中には『橘 宝輪』という名前が書かれており、彼がかつて封印の儀式を執り行った陰陽師の末裔であったことが記されていた。
***橘 宝輪のエピソード***
橘 宝輪は八百年続く陰陽師の家系であった。彼の家系は代々、この地域に封印された悪霊を抑え込む役割を担っていたが、80年前、宝輪が執り行った封印の儀式は失敗に終わっていた。
「橘 宝輪は、一族の力を結集して行った封印を完遂することができなかったようです」と前田が資料を見ながら説明した。「彼が指揮した儀式に何か見落としがあったのか、それとも悪霊の力が予想以上に強力だったのかは定かではありません。しかし、その結果として、一族は次々と命を落とし、最後は散り散りになってしまったとあります」
涼子編集長は厳しい表情で考えを巡らせていた。「まずは、橘 宝輪が失敗した理由を突き止める必要があるわ。儀式の過程に何が足りなかったのかを見つけ出さないと、私たちも同じ運命を辿るかもしれない」
前田は橘家に伝わる封印の呪文や道具が記された古い書物の資料を手に取りながら続けた。「この資料には、封印の呪文や必要な道具が詳しく書かれています。これを使えば、封印を強化できる可能性がありますが、失敗の原因を見極めない限り、危険を伴う可能性が高いです」
寮たちは橘 宝輪の一族に伝わる封印の書物や道具を慎重に調べ、次の調査に向けて準備を進めることにした。國府田は真剣な表情で言った。「公園で封印が失敗した理由がわかれば、次の儀式でその失敗を回避することができるはずです。しかし、霊の証言と今回の記録には、いくつか矛盾があります」
前田も同意して頷いた。「確かに、霊の言葉と文献が一致していない。どちらかが誤解しているか、あるいは隠された事実があるのかもしれません」
寮は黙って考え込みながら答えた。「橘 宝輪が行った儀式に何かアクシデントが起きた可能性もあります。それを突き止めない限り、僕たちが封印を行うのは難しい」
***次なる調査への準備***
「次の調査では、橘 宝輪の儀式が失敗に終わった理由、そして祠や石碑の配置がどのように関連していたのかを徹底的に調べる必要があります」と涼子編集長は指示を出した。「今のところ、私たちに残されている時間はあまり多くないわ。悪霊の活動が活発化している兆候が見られる以上、慎重かつ迅速に動く必要があります」
寮たちは、この重要な調査に向けて準備を進めることになった。橘 宝輪が失敗した儀式の原因を突き止め、今度こそ封印を成功させるためには、彼らは祠や石碑の配置、過去の儀式の失敗の真相を掘り下げなければならなかった。全ての謎が解明されたとき、悪霊を封じ込めるための最後の一手が見えてくるはずだ。
寮たちは、前田と國府田と共に、再び霊が現れた公園を訪れた。夕暮れ時の公園はどこか不気味で、陰鬱な雰囲気が漂っていた。寮たちは緊張を感じながら、儀式の痕跡を探していた。
寮たちの後ろを歩いていた國府田が、突然、何かに呼ばれる感覚がして別の方向に引き寄せられるように歩き出して行った。
寮と前田は周囲を調べていて後ろを見ると國府田が寮たちから50メートル程、離れた先を進んでいた。
「國府田!」と寮が叫んだが、國府田は返事をしないまま公園の奥へと進んでいく。
前田も驚きながら後を追ったが、國府田はそのまま深い森の方に向かっていた。
***橘 宝輪の末裔***
寮と前田は、國府田がまるで何かに引き寄せられるように歩いていく姿を必死に追いかけていた。公園の奥に進むにつれ、霧が濃く立ち込め、空気が急に冷たくなっていった。國府田は目の前に立つ古びた石碑の前で急に足を止め、体が硬直してしまったかのように動けなくなった。
「國府田!」寮が叫んだが、國府田はまったく反応しない。彼女の目には恐怖の色が浮かんでおり、体は完全に悪霊の影響下に置かれているようだった。
寮が駆け寄ろうとしたその瞬間、暗闇の中から以前トンネルで見た悪霊が現れた。悪霊は静かに國府田に近づき、まるで彼女を取り込むかのように不気味な手を伸ばしていた。
「國府田、逃げろ!」寮が叫んだが、彼女は体が動かない。
前田が焦った表情で言った。「寮さん、このままじゃまずいですよ!」
寮は霊光弾を放とうと構えた瞬間、突然、鋭い声が響いた。
「そこまでよ!」
その女性は無言のまま、符を空中に放り投げると、素早く呪文を唱え始めた。「朱雀よ、降臨し、この悪霊を浄化せよ!」暗闇の中から、和装に身を包んだ若い女性が現れた。彼女は堂々とした佇まいで、手にはいくつかの符を持っていた。彼女はまるでこの状況に慣れているかのように落ち着いており、その場の雰囲気を一変させた。
「誰だ……?」寮が驚きつつも警戒しながら呟いた。
その女性は無言のまま、符を空中に放り投げると、素早く呪文を唱え始めた。「朱雀よ、降臨し、この悪霊を浄化せよ!」
彼女が唱えると、空中で符が燃え上がり、瞬く間に朱色の巨大な鳳凰が出現した。鳳凰は大きく翼を広げ、辺りを照らすような光を放ちながら、國府田に迫っていた悪霊に向かって一直線に突進していった。
悪霊は驚いたように後退しようとしたが、すでに遅かった。鳳凰はその炎の翼を広げて悪霊を包み込み、炎の光が一気に広がった。悪霊は苦しむように叫び声を上げながら、光の中で消え去っていった。
霧が晴れ、辺りに静寂が戻った。
「國府田!」寮と前田は急いで駆け寄り、國府田を抱き起こした。國府田は虚ろな目で空を見上げていたが、やがて意識を取り戻し、正気に戻り始めた。
「……何が起きたの?」國府田はかすれた声で尋ねた。
「悪霊に取り憑かれるところだったんだ。でも、この人が助けてくれたんだよ」と寮が説明した。
國府田はその女性に目を向け、弱々しい声で聞いた。「……あなたは……?」
女性は少し微笑み、穏やかに答えた。「橘 美紀。橘家の末裔よ」
寮たちは一瞬驚いたが、次の瞬間、美紀は彼らをじっと見つめ、鋭い言葉を放った。
「あなたたち、もしかしてあのオカルト雑誌を見てここに来たの?」美紀は冷静ながらも少し厳しい表情で問いかけた。
寮と前田は顔を見合わせ、動揺を隠すように返事をした。「え、ええ、まぁ、ちょっと興味があって……」と前田が言葉を濁しながら答えた。
美紀はため息をつき、「あの雑誌に書いてあることは本当よ。けれど、こんなところに興味本位で来るなんて、命知らずね。ここは普通の場所じゃないわ。封印が弱まっていて、悪霊が出現してもおかしくない場所なのよ。近づくのは本当に危険なの」と厳しい口調で警告した。
寮は一瞬言葉を失ったが、動揺を隠しながら冷静を装い、「ええ、でも、ここがそんなに危険な場所だとは思っていませんでした。助けていただいて本当にありがとうございます」と丁重に礼を言った。
國府田も、まだ震えながら美紀に感謝の言葉を伝えた。「本当に……助けていただいてありがとうございます。もしあなたが来てくれなかったら、私……どうなっていたか……」
美紀は少し微笑んで、「大丈夫。助けられてよかったわ。でも、本当にここは危険な場所だから、軽い気持ちで近づかない方がいいわ」と再度警告した。
寮は、美紀の存在に強い興味を抱きつつも、雑誌編集者であることを隠しながら質問を続けた。「ところで、どうしてあなたはここに?どうしてこんな場所に来ていたんですか?」
美紀は少し黙り込んだ後、深く息をついて話し始めた。「私は橘家の末裔なの。かつてこの地で封印を施した一族よ」
「橘家……橘宝輪の一族、ということですか?」寮が驚いた表情で尋ねた。
美紀は頷いた。「そう、橘 宝輪は私の先祖。そして、彼はこの地に悪霊を封印しようとしたけれど、失敗してしまったの。その結果、一族は散り散りになってまったわ。私はその一族の末裔なの」
前田は驚きながら、「そんな……橘宝輪の封印が失敗したなんて……」と呟いた。
美紀は静かに続けた。「橘家の本家は断絶した結果、私の家系が橘家を引き継ぐ事になったの。私の一族は、この地から離れた場所にあり、直接関わって無かった事から、危害を受けずに助かったの」
國府田はまだ少し震えていたが、感謝の念を込めて、「本当にありがとうございます。助けていただかなければ、私は……」
美紀は國府田に優しく微笑んで、「あなたを守れてよかったわ。でも、これからも気をつけて。この地の封印は完全ではないから、悪霊はさらに強くなるかもしれない」と警告した。
寮は感謝の気持ちと同時に美紀に対する興味を抱きながらも、編集者であることを隠して、「もう少しお話を聞かせていただけませんか?私たちもこの場所についてもっと知りたいんです」と尋ねた。
美紀は少し考えてから静かに頷いた。「わかったわ。ただし、軽い気持ちでは関わらないで。これからは本当に危険な状況が増えるはずだから」
こうして、橘美紀の協力を得た寮たちは、悪霊を再び封印するためのさらなる調査を進めることになった。彼女が持つ橘家の秘密が、今後の鍵を握っていることを確信しながら――。
ご購読、ありがとうございました。




