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スピリチュアルズ ジャーニー 寮  作者: waku


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霊の影、家族の光

心霊現象の起こる家の取材の帰路、寮たちはかつて陽菜が浄化した筈だった白いスーツを来た女性に遭遇した。寮は魔除けの呪文を唱え、その場は、避ける事が出来帰路に就いた。

 編集部に戻った前田は、初めての心霊体験に激しく動揺していた。

冷たいオフィスの空気が、その不安をいっそう増幅させる。体が寒気に襲われる感覚が未だに消えず、彼の心は先ほど目にした異様な光景に引き戻されていた。彼の手は自然と震え、汗で湿ったシャツが肌に張り付く。目の前の風景もぼんやりと霞み、何度も焦点を失い、気持ちを落ち着かせることができない。


「寮さん、昔から心霊現象には興味がありましたけど…実際に幽霊を見ちゃうと、全然違いますね。信じられないほど現実感がないです…まだ夢の中にいるみたいで…」


前田の声はかすかに震えており、机を握る指には力がこもっていた。寮は車から取材用の機材を降ろしながら、彼に向けた視線は冷静である。ベテラン記者として、幾度も不気味な事件に直面してきた彼には、その恐怖にどう対処すべきかが分かっているからだろう。


「心霊現象ってのは、ただの娯楽や好奇心で関わるものじゃないんだ。危険が伴うことも多い。何度も言っただろう。実際に幽霊に触れた時、怖さなんて生ぬるいものじゃ済まないんだよ。」


その言葉には、彼自身が過去に体験した数々の危険を物語る重さがあった。彼の目の奥には、冷静さを保ちながらも、心の奥に秘めた恐怖がちらりと見えるようだった。


前田は寮の言葉をかみしめるように黙り込んだ。今日初めて見たものが、自分に何を意味しているのか、その恐怖をどう理解すべきか、まだ整理できていないのだろう。


その後、寮は編集長の涼子に軽く取材報告を済ませ、「詳しくは明日、話します」とだけ告げ、静かに帰路についた。


*** 家に戻って ***


 寮は自宅のアパートに戻り、車を駐車場に停めた後、運転席に身を沈めたまま、しばらくじっとしていた。今日一日、異様な霊的現象に直面したことで、彼の体には深い疲労がのしかかっていた。車内の静けさが心地よく、まるで外界の恐怖から自分を守るシェルターのように感じられる。


「はぁ…」と深くため息をつく。久しぶりに心霊スポットでの取材に赴いたことで、霊的な負荷が寮の心と体に影響を与えていることが分かった。霊に触れた時の感覚がまだ体に残っており、その冷たさがじわじわと体に染み込むようだった。


玄関のドアを開けると、ひかりがリビングから顔を覗かせた。「おかえり、寮くん。今日は無事だった?」彼女の声はいつも通り穏やかだが、その瞳には明らかに心配の色が浮かんでいる。彼女は、夫が心霊に関わることのリスクをよく理解していたからだ。


寮は一瞬微笑んだが、その微笑みはどこかぎこちなく、緊張がにじみ出ていた。「ああ、大丈夫だよ。ただ、今日はちょっと…疲れたかな。」


彼の言葉の裏にある苦しみを、ひかりはすぐに察知する。「本当に大丈夫?何かあったの?」彼女の問いは、心配を隠せない真剣なものだったが、寮はその場では何も答えなかった。ただ、心の奥でひかりが全てを見透かしていることに気づいていた。


すると、突然、娘のあかりがリビングから飛び出してきて、寮の足元に抱きついた。「パパ、おかえり!」その小さな手が彼の足にしっかりとしがみつく。


その瞬間、寮は彼女の無邪気な笑顔に癒され、心の重さが少しだけ軽くなった。「あかり、ママと一緒にいい子にしてたか?」と彼は優しく頭を撫でながら尋ねる。あかりはにっこり笑い、元気よく頷いた。


家族の温かさを再確認する瞬間だったが、同時に寮はその幸せがいつ危険にさらされるかもしれないという恐怖も感じていた。


「あかりが寝たら、少し話があるんだ。」寮は静かにひかりに伝えた。その言葉には、何か深刻なものを感じさせる重みがあった。


ひかりは一瞬、驚いたような顔を見せたが、すぐに頷いた。「分かったわ。あかりを早めに寝かしつけるわね。」


*** 夜の会話 ***


あかりがすっかり眠りについた頃、リビングに戻った寮とひかりはテーブルを挟んで向かい合った。部屋は静まり返り、外のわずかな車の音だけが遠くに響いている。


ひかりが静かに口を開いた。「寮くん、今日の取材で何があったの?」


その問いに、寮はしばらく言葉を探していた。やがて、重い口を開く。「ひかり…今日、緑ダムの近くで取材をしてたんだ。そこで、以前陽菜が浄化したはずの白いスーツの女性の霊が、また現れたんだ。」


ひかりは驚いた表情を浮かべた。「あの霊が?完全に浄化されていなかったの…?」


寮は頷いた。「そうみたいだ。そして、今日の取材中に、あかりが何かを感じ取ったんだ。突然『パパが危ない』って泣き出してさ。その瞬間、僕はちょうど危険な状況にあった。」


ひかりは不安そうな顔で続きを促す。「あかりに霊感があるのかもしれない…?」


寮はしばらく黙っていたが、無言のまま頷いた。あかりが何かを感じ取っているのは明らかだった。しかし、それがどれほどの力を持つのかはまだわからない。


「これからどうするの?」ひかりの声には心配がにじんでいる。


「まだ決められていないけど、これ以上あかりに危険が及ぶのは絶対に避けたい。僕の霊能力も、今のままじゃ足りないって痛感したよ。だから、慎重に進める必要がある。」寮は決意のこもった声で言った。


ひかりは、静かに彼の手を握った。「寮くん、私たちは家族よ。何があっても、私たちは一緒に乗り越える。無理をしないでね。」


その言葉に、寮は少し安堵し、彼女の存在がどれだけ自分にとって大切かを再認識した。



*** 新たな決意 ***


翌朝、寮は早く目を覚まし、窓から差し込む朝の光が彼の心に新たな決意を呼び起こした。霊的な力を再び鍛え直し、家族を守るためにもう一度向き合う時が来たと感じたのだ。


まずは、かつての仲間たちに連絡を取ることを決めた。春香や陽菜、そしてオカルト研究部の旧友たち。彼らの助けがなければ、再びその力を取り戻し、家族を守るための力を手にすることはできないだろう。


寮はスマートフォンを手に取り、連絡先をスクロールし始めた。そして、まずは陽菜にメッセージを送った。「力を貸してもらいたい。帰国したら話そう。」


*** 再び霊の世界へ ***


陽菜へのメッセージを送り終えた寮は、静かにため息をついた。かつての仲間たちと再び協力する決意を固めたが、それがどれほど険しい道のりになるのかは未知数だ。しかし、今の寮にとって、家族を守るためにこの道を避けることはできない。


 その日の朝食後、寮はひかりとあかりに挨拶をし、再び編集部へ向かう準備をした。ひかりは見送りながら心配そうに「今日も気をつけてね」と声をかけた。


「ありがとう。何かあったらすぐに連絡するよ」と、寮は笑顔で答えたが、内心では再び霊的な事件に巻き込まれる不安がよぎっていた。


*** オカルト編集部での再会 ***


 編集部に着くと、前田がすでにデスクに座っていた。前日の出来事が影響しているのか、彼の表情にはどこか不安が残っていた。寮はデスクに向かい、軽く声をかけた。


「前田君、昨日は大変だったな。初めての心霊体験、どうだった?」


前田は少し戸惑いながらも、頷いて答えた。「本当に信じられない体験でした。寮さんが言っていた、心霊現象がエンタメじゃないって意味が、やっと分かりました。」


「そうだろう。ああいう現象は軽い気持ちで関わるものじゃない。これからも危険な状況があるかもしれないから、しっかり覚悟をしておいてくれ。」寮は真剣な表情で答えた。


その時、編集長の涼子が部屋に入ってきた。「おはよう、二人とも。昨日の取材、お疲れさま。どうだった?」


寮は立ち上がり、取材の詳細を報告した。緑ダム周辺での異常な霊現象、白いスーツの女性、悪霊の浄化がまだ不完全であることを簡潔に伝えた。


涼子は眉をひそめながら話を聞き、静かに言った。「やっぱり、まだ終わっていないのね。緑ダム周辺には、他の取材も続いているけど、さらに調査が必要だわね。」


寮は軽く頷き、「陽菜が帰国したら、より具体的な対策を練ることができると思います。彼女がいれば、さらに効果的な対応が可能です」と提案した。


「そうね、彼女が戻るまでにできる準備を進めておくわ。それにしても、寮くん…やっぱり君には特別な何かがあるみたいね。過去の経験が今、また必要になっている気がするわ。」涼子は微笑んでそう言い、寮に感謝の意を表した。


*** 新たな挑戦への準備 ***


その日の仕事を終え、寮は家に帰る途中で考え込んでいた。涼子の言葉が彼の胸に深く残っていた。「特別な何か」――それは霊能力なのか、それとも他のものなのか、まだ分からない。


 今の自分では力不足なことは自覚していたが、家族を守るためには、もっと強くならなければならない。春香や陽菜、そして旧友たちの助けが不可欠だと感じていた。彼らがそれぞれどう成長し、どんな力を持つようになっているのかを知るためには、再会が必要だ。


家に着くと、あかりが玄関で笑顔を浮かべて出迎えた。「パパ、おかえり!」


その無邪気な笑顔に、寮の心は再び安らぎを覚え、家族を守るための新たな決意を胸に抱いた。そして、この穏やかな時間を守るために、再び霊の世界と真剣に向き合う覚悟を固めた。


 涼子はオカルト研究部の調査について詳しい情報を持っていた。それは、彼女がかつてその調査に関心を示して取材を行っていたからだ。オカルト研究部の一員だった寮や陽菜、瑞希や他の部員たちの取材記録もあり、さまざまな心霊スポットや数々の超常現象に向き合ってきた過去があった。


その調査の中でも、緑ダムに関するものは特に印象に残っていた。涼子は、当時の出来事を調べながら言った。


「寮くん、緑ダムの件はまだ覚えてる?あの時、オカルト研究部の話では、あの辺り一帯でいくつか心霊現象に遭遇していたわ。白いスーツの女性が現れたって話が出たのも、確かあの時だった。」


寮は頷きながら答えた。「覚えてるさ。あの調査は…危険すぎた。陽菜がその時に浄化を試みたけど、完全にはできていなかったんだ。」


涼子はため息をつきながら続けた。「それに、あの時の調査では霊道が複数重なっていることが分かったけど、どれも深く入り込むのは危険すぎるって判断したみたいね。」


「そうだった。あの場所は…単純な心霊スポットじゃなかったんだ。霊的なエネルギーがあまりに強すぎた。いまだに解決していない問題があるみたいなんだ」寮は少し眉をひそめながら言った。


 涼子は真剣な表情で頷いた。「今回の取材でその霊が再び現れたとなると、問題はまだ続いているか、もっと悪くなっている可能性も考えられるわ。もしかすると、私たちが見逃していた何か重要な要素があるのかもしれない。」


 寮は考え込んだ。「あの時、緑ダムの周辺には他にも不思議な現象がいくつかあった。けど、範囲が広すぎで、オカルト研究部の部員だけでは全体を把握しきれなかったんだ。もっと時間を掛けて詳細に調査する必要もあったのかも知れない。」


 涼子は寮の言葉に同意しながらも、「でも、今回も軽い気持ちで挑むのは危険よ。あなたの霊能力だけでは、対処できない。私たちだけじゃとても手に負えない可能性が高い。陽菜ちゃんが戻ってくるまで、慎重に調査を進めましょう」と提案した。


寮は頷きながら答えた。「陽菜ちゃんが帰国してから改めて調査を再開する予定です。でも、それだけでは、やっぱり力不足だと思います」


涼子は、「そうね。他の霊能者や協力者を募る必要がありそうね。以前の調査データや、オカルト研究部の記録も引っ張り出しておくわ。あの時の経験が、きっと役に立つはずよ」と言い、次の調査に向けた準備を進めるための計画を立て始めた。


これからの調査には、過去の知識と経験が必要不可欠だった。涼子も寮も、それぞれの経験を活かして、今度こそ緑ダム周辺の問題を解決できるかもしれないという期待と同時に、不安を感じていた。


 ご購読、ありがとうございます。新章として始まった社会人編ですが、ゆっくりと書いて行く予定です。社会人編なので話も長くなりそうな気もしています。やっと、社会人としての寮が書けると喜んでいますが、人生としては、これからが長いので、焦らないで書いていく予定です。


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