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ぼくと花子さん  作者: 大器晩成の凡人
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54話 ぼくと花子さんとサキュバス②

「やっほ~♪ミーちゃん見つけてきたよ~、花ちゃ~ん」


「お邪魔します」


 現れたのは口裂け女と全身に包帯が巻かれた人物。気をつけて欲しいのはミイラ男ではない。マミーだ。そして、包帯が巻かれた人物は女性である。今でこそ女性らしいシルエットだが少し前までは大量の包帯を何重にも重ねていて見た目では性別の判断が難しかった程だ。


 現在の彼女は後頭部から延びる包帯の先に大量の包帯を球体状に纏めてあり、だいぶ薄着になっていて本来の彼女は小柄なのだとわかる。


「わ~♪新しいお友達?」


 早速、口裂け女はサキュバスに駆け寄る。


「んなわけないでしょ、迷惑してんのよ」


「すご~い、可愛い服だね~」


 花子さんの声が聞こえなかったのかサキュバスの衣装に興味津々。


「ありがとう♪あなたもなかなかよぉ」


 口裂け女の背後から抱きつき耳元で囁くように言うと


「えへへ、くすぐった~い」


(もしかして、この娘ガードが緩い?よぉし)


 サキュバスは口裂け女の正面に回り再び正面から抱きつく。


「私の名前はサキュバスゥ」


 口裂け女の胸に顔を埋めながら自己紹介。


「じゃあ、サキちゃんだね!私は口裂け女だよ~、あっちはマミーのミーちゃん」


「…よろしくです」


 名前を出されたマミーは挨拶。


「うぇへへ♪よろしくぅ」


 顔を埋めながら挨拶を返す。


「ぷはっ、まん!ぞく!」


 顔を上げ言葉通り満足そうな顔。


 ブロロロロ


 突然、廊下からバイクのエンジン音が鳴り響く。その音はトイレの方にだんだん近づいてきて


 キキィーッ


 トイレ前にバイクが停車した。バイクにはヘルメットを被りツナギ服を着た男性が乗っていた。ヘルメットには日光を軽減するためのバイザーがありバイザー越しだと顔は見えない。彼にとっては日光より外から顔が見えない事の方が重要だ。


「首なしライダーさん!」


 その男性は首なしライダー。彼は物造りに長けている。それは固有の能力などではなく彼が趣味として身に付けた技術だ。ぼくはそんな彼を憧れ尊敬している。


「来たわね、ほら!あんたが好きそうな男を呼んであげたわよ」


「わぁ♪ここに来てホントによかったぁ♪」


 早速、トイレに入ってきた首なしライダーに駆け寄るサキュバス。


「いい身体してるわぁ♪」


 首なしライダーの胸に手を置く。


「そなたも…お前も凄く魅力的だ」


「今までの人達と違い好感触ぅ♪」


 思わず抱きつくサキュバス。


「そな…お前のその唇をわし…俺のものにしてしまいたい」


「やぁん♪積極的ぃ♪」


(あれ?首なしライダーさんってスマホ無しで喋れるようになったのかな?)


 ぼくの疑問はもっともだ。彼は首なしライダーと呼ばれているが正体は首なし騎士とも呼ばれるデュラハン。彼は頭を無くして喋る事が出来ないのだがスマホを改造し入力した文字を音声化してコミュニケーションを取ることが出来る。その彼がスマホ無しで喋っているのだ。


「積極的なあなたに…キス…してもいいよ」


「そうか!ならば、目を瞑ってくれぬか?わしは恥ずかしがり屋でな」


「ん」


 サキュバスは目を瞑りアゴを上げる。完全にキス顔だ。


「…では」


 バイザーを上げサキュバスの方へ顔を近づけていく。


「フガッ、フガッ、フガッ」


「ウフフ、興奮しすぎぃ、私は逃げないわよ」


 笑いながら思わず目を開ける。目の前にはヘルメットに収まる飛頭蛮が


「いやあああぁぁ」


「ぶへっ」


 目の前の飛頭蛮に全力ビンタ。飛頭蛮はその場で横回転。


(なんか、あんな手品見たことあるなぁ)


 ぼくが思い浮かべたのは顔が見えるように一部を切り取ったバケツを頭に被せ横に回転させるという手品だ。切り取られた部分に合わせて顔を動かすので首が360度回転してるように見えるのが、その手品の見所だ。だが、目の前の飛頭蛮は種も仕掛けもなく実際360度回転してるのだ。


「チッ、失敗ね」


 どうやら、これは花子さんの悪知恵で行われたらしい。


「帰っていいわよ」


『またねー』


 首なしライダーが持っているスマホから可愛らしい声が…これがいつもの首なしライダーのコミュニケーションの取り方だ。


 気を失い床に転がる飛頭蛮からヘルメットを回収し不満ひとつ言わずに首なしライダーは帰った。


「男の子がきみしか居なくなっちゃったねぇ、まぁいっか♪」


「あの…一応、飛頭蛮さんが」


「なぁにぃ?聞こえなぁい」


 飛頭蛮の存在をどうしても否定したいようだ。


「お姉さんと仲良くしよぉ」


 サキュバスはぼくに近づくと


 シュルル


 2人の間にマミーの包帯が割り込んできた。


「ふ、ふしだらです!」


 表情がなかなか読み取れないが、その口調からして怒っているようだ。


「私ぃ、サキュバスだもぉん」


 開き直る。


「説教です!」


 そう言うとマミーは大量の包帯を展開しサキュバスを包み込んだ。トイレには包帯で出来た大きな球体が…その中にマミーとサキュバス。


「真っ暗ぁ、興奮しちゃう♪」


「あなたは少し下品です!」


「これが私の普通だしぃ、それより、こんな事できるなんて…ここに男とか連れ込んだりしてるでしょ?」


「し、してないです!」


 慌てて反論。


「その反応…ウソ吐いてるでしょ?正直に言わないと悪い子なんだぞ☆」


「い、一回だけ…です」


 恥ずかしそうに小声で答える。


「やっぱりぃ、マミーちゃんはイケない子だぁ♪」


 茶化すサキュバス。


「違います!あれは私にとって本当の自分を出せた大事な出来事だったんです!」


「私も混ぜて欲しかったなぁ」


「あなたは!“愛”というものを理解してない!」


「マミーちゃんは愛の伝道師ってわけだぁ、私も“愛”に関しては深ぁく…ううん、幅広ぉく知ってるわよぅ」


 サキュバスは動き出す。


「きゃっ!なに?」


「つぅかまぁえたぁ♪」


 サキュバスはマミーに密着。


「ここは暗いけど狭いから逃げられないぞぉ♪」


「いやっ、放して!」


「さっき言ったよねぇ、“愛”を幅広く知ってるってぇ、女の子も守備範囲なんだぞぉ、んんん、クンクン、いい匂ぉい♪」


 マミーの匂いを嗅ぐ。


「スリスリ…あれれぇ?」


 サキュバスはあることに気づいた。


「わぁお♪マミーちゃんって……こんな小さな身体なのにココはおっきい♪エフくらいから?包帯越しでも柔らかぁい♪」


 シュルルル


 2人を覆っていた包帯がマミーの方へ収束しマミーは前の性別の判断が難しい姿になっていた。


「どうしたの?ミーちゃん」


「あの人、苦手です」


 嫌悪感を示すマミー。


「マミー、あいつを懲らしめるために協力して」


「私は何をすればいいんですか?」


「あんたにやってもらう事は…」


 耳打ちで伝える。


「それだけでいいんですか?」


「ええ、重要よ。頼める?」


「はい!」


 花子さんの頼みを快く引き受ける。するとマミーは大量の包帯を展開し包帯はサキュバスを拘束する。


「逃がすんじゃないわよ」


「任せてください!」


 サキュバスの身体は包帯でぐるぐる巻き。唯一、顔だけはなんの拘束もされていない。


「なになに?こういう趣味ぃ?」


 余裕の態度を崩さない。


「ほら、起きなさい!」


 花子さんは床に転がっている人物を起こす。その人物はサキュバスが拒絶した唯一の人物……飛頭蛮だ。 


「んー、なんじゃ?」


「あんた、あれが見える?」


 花子さんは拘束されてるサキュバスを指差す。


「今、あいつはマミーに拘束されて身動き取れないわ。今なら反撃の心配はないわよ」


「わしを見下した美女が無抵抗……デュフフ」


 鼻の下が伸びる飛頭蛮。


「え?ウソでしょ!?」


「デュフフ」


「いや!いやぁ!近よんな!蹴り飛ばすわよ」


 今までにない焦りっぷり


「強気なおなごも良いのぉ、じゃが、強がってもわしを蹴り飛ばすなど出来ぬであろう。デュフ、デュフフ」


 ジリジリ近づく。


「いやぁ、来んなぁ」


「おなごぉ、おなごぉ」


 およそ理性があるとは思えない表情の飛頭蛮。その口からヨダレが滴り落ちる。それはサキュバスを拘束する包帯……いわばマミーの身体の一部に落ちた。


「きゃああぁぁぁぁあ!」


 マミーの悲鳴と共にサキュバスの拘束が解けた。


「近寄る…なぁ!」


「へぶっ、ふぶっ、はばっ」


 一瞬にして無数の足技が飛頭蛮を襲う。


「がはっ」


 最後の一撃がヒットし大きく吹っ飛ぶ。


「もうイヤ!帰るぅ」


 サキュバスは走って出ていった。


「ようやく追い払えたわね」


「大丈夫?ミーちゃん」


 女性フォルムに戻ったマミーを気遣う。


「ごめん、私のせいだわ」


「ううん、気にしないで…家に帰ったらキレイに洗わなきゃ」


「家…そういえば、マミーさん達ってどこで暮らしてるんですか?」


 突然、湧いた疑問をぶつけるぼく。


「私はアパート借りて、そこに住んでます」


「え!?アパート借りてるんですか?」


「もしかして妖怪がアパート借りてるのが信じられませんか?」


「え、あー、えーと、はい…ごめんなさい」


 ぼくは偏見に近い考えを見透かされ謝る。


「ふふふ、謝らないでください。私も不思議なくらいなんですから」


「家賃とかはどうしてるんです?」


 アパートを借りているという事はもちろん家賃が発生する。それを払う収入はどこから来るのか。


「私達、大道芸で得たお金で暮らしてるの。あまり食事を摂らなくても生きていけるから贅沢は出来ないけど普通に暮らせてるよ」


「そういえば、前にそんな話してましたね。じゃあ、バンパイアさんと同棲してるんですか?」


「どっ!!わ、私達はまだ…そんな……」


 思いがけない質問に一瞬、マミーの包帯が乱れ、そして恥じらう。


「恋する女の子は可愛いね~♪花ちゃん」


「いずれリア充トークばかりになってウザくなるわよ。きっと」


「なんでそんな事言うの~、花ちゃんのバカ~」


 花子さんの頭をポカポカ叩く。


「そうなっても、ちゃんと話聞いてあげるわよ」


「花ちゃん優しい♪」


 花子さんに抱きつく。


「あんたねぇ」


 2人の会話に興味がないのかぼくはマミーを見つめ考える。


「ど、どうしました?」


 不安そうに尋ねるマミー。


「えっと、マミーさん…なにか変わりました?」


「あ、うん。前に会った時より薄着になったの。こことか…」


 自分の頭を指差す。


「あ!髪が!」


 マミーの頭からは一部分だけ紫色の髪が見える。


「口裂け女さんからのアドバイスなんです。でも、まだ恥ずかしくて、ここまでが今の限界なんですけど」


「ミーちゃんはオシャレに目覚めたばかりだから、これからだよ!」


「はい!あ、でもサキュバスさんみたいなのは遠慮しますけど」


「あれは極端でしょ、町中をあんな格好で歩いてたらドン引きよ」


 呆れる花子さん。


「え~、すごく可愛かったよ~」


「あんたがもしあんな服を着たら無視するからね。わかった?」


「…は~い」


 不満そうに返事をするが趣味というものは他人の意見でそう簡単に止められるものではない。いずれ口裂け女はあのような服を着る機会が訪れる……かもしれない。



 【おまけ】


 いつもの2人は旧校舎前。


「よし!今日こそ行くぞ!」


 意気込むガキ大将。


「ちょっと…待って」


 胸を抑えながらガキ大将を呼び止める取り巻き。


「なんだよ?」


「なん…か、身体がおかしい」


「大丈夫か?」


 心配する。


「この甘い匂いを嗅いだら、なんか胸が…すごくドキドキして」


「甘い匂い?クンクン……そういやするな」


「なんともないの?」


「少しドキドキするけど、お前ほどじゃないぜ」


 どうやら、この場に立ち込める匂いはなにかしら精神的な作用があるようで、その効果は個人差がある。そして、取り巻き以上にこの匂いの影響を受けた者が2人の背後に迫る。


「おなごぉ、おなごぉ……この残り香は間違いなくおなごの匂い…」


 2人は声に気づき振り返る。


「おぬしら邪魔じゃあ!おなごへの道を空けろぉ!」


 2人にそう叫んだのは宙に浮く生首のような生き物。


「ぎゃあああぁ」

「ぎゃあぁぁぁ」


 ≪次回予告≫


 彼は妖怪 え?人間じゃないの? 人間なのかな? 名前だけでそう判断するのは難しい 彼の存在はあやふや もしかしたら、彼ではなく彼女かもしれない もしかしたら、向き合ってるのではなく背中を向けてるかもしれない もしかしたら、そこに居ると思っていたら、居ないのかもしれない………。

 さぁ、サキュバスですが……幅広く愛を知っているそうです。こういうキャラもそろそろ欲しかったので今後も何かしら活躍してくれると思います! そして!!マミーは小柄ですが大きいらしいです(*´艸`*) それでは

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