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ぼくと花子さん  作者: 大器晩成の凡人
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52話 ぼくと花子さんとお菊③

 お菊のカミングアウトに一同騒然。


「………ハナチャン、コロシチャタテナニ?」


「あんたのカタコトな喋りの方がなんなのよ?」


「あの、殺しちゃったって呪い…ですか?」


 ぼくは尋ねる。


「違います!そんな事できないですし、しません!」


 全力で否定する。


「じゃあ、何があったんですか?」


「転んだ拍子に寝てる人の頭をもいじゃったんですぅ」


 悲しそうにうつむく。


「もいっ!?」


 花子さんはドン引き。


「コックリチャン、モイジャタテナニ?」


「あんたは一生やってなさい。私も助かるわ」

 

 口裂け女は理解したくないのか様子がおかしい。


「あれ?お菊さんって幽霊だから、そんな事できないんじゃ…」


「そうだよ~、お菊ちゃんは誰ももいでないよ~」


 お菊の勘違いという平和な結末に向かいそうだったが…


「いえ、被害者が幽霊や妖怪の可能性もあるわ」


「花ちゃんのバカ~、せっかく誰ももいでないって話になりそうだったのに~」


 まだ平和な結末とはいかないようだ。


「とりあえず、その時の状況を説明しなさい」


「えっと、どれくらい前かは覚えてないんですけど…」


 花子さんに促され説明を始める。


「私は公園を歩いてたんですけど、その時には全身にあの紙が貼り付いていて視界も狭かったんです。それで転んでしまって……気づけば手元に誰かの頭があって、近くのベンチで寝てる人が居て、その人には頭が無かったんです。私……ただ寝てただけの人の頭をもいじゃってしまって…」


 どうフォローしていいのかわからずみんな沈黙。


「……その頭をもいだ人の特徴とか覚えてる?誰だったか調べさせるわ」


 花子さんはテレビ台の引き出しからスマホを幽霊パワーで近くに持ってくる。


「えぇと…たしか異国の甲冑を着けてたと思います」


「……もいだ頭はどうしたの?」


「気が動転してて、あまり覚えてないですけど、どこかに転がっていったと思います。あ、関係ないですけど馬さんを見かけた気がします」


「…………」


 半開きの目で遠くを見つめる花子さん。


「花子さん、どうしました?」


 お菊は花子さんの目を覗き込む。


「大丈夫よ、そいつ生きてるはずよ」


 スマホを使う事なくテレビ台の引き出しに戻しながら言う花子さん。


「ホントですか!」


「ええ」


 頷く。


「その人に会えますか?私、迷惑かけちゃって謝らなきゃ」


「さぁ?今あいつがどこに居るかわからないわ。でも、迷惑かけられたなんて微塵も思ってないから大丈夫よ。むしろ趣味に夢中だと思うわ」


「そうなんですかぁ」


 安堵するお菊。


(花子さん、お菊さんが頭をもいだ人ってもしかして…)


(しーっ!言うんじゃないわよ!なんか面白そうじゃない)


 2人はお菊に聞こえないように小声で話す。


(私も花子に同意よ)


 コックリさんも会話に混ざる。


(なになに~、3人共なんのはなし~?)


 口裂け女も入ってきた。


(えっと、お菊さんが頭をもいじゃった人の話です)


 ぼくは説明する。


(あ~、誰なんだろうね~)


(………)

(………)

(………)


 ぼく、花子さん、コックリさんは沈黙。


「皆さん、どうしたんですかぁ?」


 自分以外の4人が目の前でないしょ話をし出したのだ。当然の疑問だろう。


「なんでもないわ!」


 ごまかす花子さん。


「そうだ!だいぶ話題が脱線したけど、この大量の紙は役割を終えたんだから放っておいても自然に消滅するわ」


 話題を変えるためコックリさんがフォロー。


「そうなんですか?よかったぁ」


「お菊ちゃん、もう友達になれないって言わない?」


 不安そうに尋ねる。


「はい、皆さんと友達になりたいです!」


「やった~♪よろしくね、お菊ちゃん」


 大喜びの口裂け女。


「改めてよろしくお願いしますぅ♪」


 満面の笑みで答えた。


「確認なんですけど、井戸から出てくるあの“有名”なお菊さんでいいんですよね?」


「お菊とは呼ばれてましたけど、井戸から出てきた事はないですぅ」


 本人には自覚がない。それとも…


「同じ名前の別人なんですかね?」


「それでいいんじゃない?もし本物なら私の地位が揺らぎかねないもの。ま、本物なら容赦しないし」


 握り拳をお菊に向ける。


「花ちゃん、せっかく友達になったのに威嚇しちゃダメ!」


 いつの間にか髪がポニーテールになってた口裂け女が注意する。


「はいはい」


 握った拳を開き、やれやれといったポーズ。


「あの、花さん!」


「急に愛称呼びとか誰かさんみたいな距離の縮め方ね」


「ダメでしたか?」


「別にいいわよ、それでなに?」


 少し嬉しそうに答える。


「花さんって幽霊や妖怪の知り合い多いんですか?さっきも頭をもいじゃった人の事を調べさせるみたいなこと言ってましたし」


「んー、まぁ多いんじゃない?」


「ある人を探して欲しいんですけどお願いできませんか?」


「いいわよ、どんなヤツ?」


「ありがとうございますぅ、えっと、あれはあの紙が貼り付く少し前だったと思います」


 お菊は語り始めた。


 ~回想~


「はぁ、時代はどんどん移り変わっていくなぁ」


 夜の町を徘徊するこの女性はお菊。


「私の服は昔から変わらないし…みんなはオシャレ出来ていいなぁ」


 すれ違う人の衣服を見て羨ましがる。


「今日もあの建物に行こうかなぁ…でも、見るだけで服は着れないし…はぁ、同じ幽霊の友達が欲しいなぁ」


 迷いながらも彼女は目的の建物に到着。


「結局、来ちゃった……あれ?あの人なにしてるんだろう?」


 その建物の前に1人の女性が立っていた。


「お店閉まってるのに…」


 その建物は営業時間を過ぎて出入り口にはシャッターが降りているのだが女性はその前でソワソワしている。


「迷子なのかなぁ、え!うそ!?」


 離れた所から様子を窺っていると女性はシャッターの方へ進み吸い込まれるように姿を消した。


「あの人、もしかして私と同じ幽霊!?追いかけなきゃ!」


 初めて自分と同じ幽霊らしき人物を見つけ居ても立っても居られず追いかけるが…


「へみゅっ」


 ガシャーン


 走り出して数歩で転ぶ。皿も全て破損。


「見失っちゃうぅ」


 急いで立ち上がり追いかける。


「どこかなぁ?」


 建物内に入り女性を捜索。


「閉店後はやっぱり不気味ぃ」


 明かりが無いわけではない。だがそれは誘導灯の緑色の光でより一層不気味さが際立っている。


「あ、居た!」


 女性の姿は2階にあった。


「急がなきゃ!」


 運良く階段では転ぶ事なく無事に2階に到着。


「まだ2階に居るかなぁ?」


 2階で捜索。


「居た!」


 女性は婦人服が大量に陳列された場所に居た。


「なにしてるんだろう?」


 遠くから見てると女性はマネキンの前に立ち両手を下から上に思いっきり振り上げた。すると直接触れてないのにマネキンのスカートが捲れた。


「え!なに!?あんな事できるの?」


 お菊が驚愕してると女性は離れた別のマネキンの方へ走り出す。


「あ、待ってください!」


 慌てて追いかけるが、あと数メートルの所で…


「ひゃっ!」


 ガシャーンッ


 肝心な所で転倒。


「う、ううぅ……」


 お菊はうめき声のような声を出し体を起こす。


「……居ない」


 お菊の前から女性の姿は消えていた。


 ~回想おわり~


「その後、建物内を隅から隅まで探したけど見つかりませんでした」


 しょげるお菊。半開きの目で遠くを見つめる花子さん。


(花子さん、違う視点でこの話を聞いた事ある気がするんでしけど)


(気のせいよ!いえ当人同士で解決させなさい)


 2人は小声で話す。


(なによ?あんたらなにか知ってるの?)


 コックリさんが会話に混ざる。


(お菊さんが探してる相手なんですけど…)


 ぼくは念のため耳打ちでコックリさんにその人物の名前を告げた。


(…そういうこと、さすがに自分の事だから気づいてるんじゃない)


(なんのはなし~?)


 口裂け女も入ってきた。


(…お菊さんの探してる相手の話です)


 ぼくは一瞬迷ったが説明した。


(あ~、見つけてあげたいね~)


(………)

(………)

(………)


 ぼく、花子さん、コックリさんは無言で口裂け女を見る。


「なんの話してるんですかぁ?」


 またもや目の前でないしょ話が始まり気になって話しかける。


「お菊ちゃんの探してる相手の話だよ~、ここにはいろんな人が来るから、きっと見つかるよ~」


 2人を複雑な心境で見つめる3人。


「そうだ!気になったんだけど、お菊ちゃんって服に興味あるの?」


「はい、でも見るしか出来ないし虚しくなるので…」


 悲しげに視線を落とす。


「お菊ちゃん、これ知らないんだね」


 そう言うと口裂け女の体は光に包まれ…


「じゃ~ん♪」


 口裂け女はドレス姿に


「何が起きたんですか!?」


 驚きのあまり至近距離でドレス姿の口裂け女を見る。


「えへへ~、すごいでしょ?お菊ちゃんも出来るはずだよ~」


「そうなんですか!?」


「うん、今度、一緒に服見に行こうか!」


「はい!」


 趣味が合い一気に仲が深まった2人。


「……納得いかないわ」


 不満そうな花子さん。


「どうしたんですか?花子さん」


「私が最初に友達になったのよ。なのになんで、あの2人が……」


「ああ、そういうこと、ふぅん」


 それを聞いてたコックリさんが嫌らしい笑みを浮かべる。


「コラ!そこの2人!あんたらが仲良くしてるせいで花子がヤキモチ焼いてるわよ。私が最初で一番の親友なのにって」


「なっ!」


「花ちゃん、ごめ~ん」


 花子さんに抱きつく。抱きつかれた花子さんはいつものように


「だああぁ、暑苦しい!」


 追い払った。


「ふふふ、今日は楽しかったです。いろいろ問題も解決できましたし、ありがとうございましたぁ」


 お菊は礼を言う。


「あっそ、まぁヒマだったら、いつでも来なさい。私はここに居るから」


「はい!きゃっ!」


 突然、お菊はなぜかバランスを崩す。


「きゃあぁぁ」


 お菊にぶつかられ口裂け女もバランスを崩す。


「え?」


 口裂け女が倒れる先にコックリさん。


「コックリちゃん、あぶな~い♪」


 危ないと警告する割には笑顔でコックリさんに迫る。


「ぎゃあああ」


 口裂け女は床に顔面から倒れた。コックリさんは…


「はぁ、はぁ、死ぬかと思ったわ」


 間一髪回避し離れた場所に居た。


「なんで突っ立ってるだけでコケんのよ!」


 コックリさんは怒りを顕にする。


「ごめんなさい、わかんないですぅ」


 頭を下げ謝るお菊。


「決めたわ!あんたも私の天敵認定するわ!」


「そんなぁ」


 友達が増えた人もいれば天敵が増えた人も……ぼくの新しい生活が順調に始まった。


 【おまけ】


 旧校舎の前に立ついつもの2人。


「せっかく、あいつと別のクラスになったんだから、もうやめようよ」


 怯えながらそう言うのは取り巻き。


「ああ?今さら引き下がれるわけねぇだろ!」


 取り巻きの言葉を意に介さないのはガキ大将。


 この2人はぼくが何をしてるのか確かめるために何度も旧校舎3階の女子トイレを目指しているのだが毎回トラブルが起き逃げるという事を繰り返しているのだ。


 そんな2人の背後に迫る人物が…


 ファサ ファサファサ


「ね、ねぇ?なんの音?」


 ガキ大将の腕にしがみつく。


「し、知らねぇよ」


 ファサ ファサファサ


 その音はどんどん近づいて来る。


「へみゅっ」


 バタンッ ガシャーンッ ファサファサ


「ぎゃあああぁ」

「ぎゃぁぁぁ」


 背後で一瞬にしていろんな怪音が鳴り2人は後ろを振り返る事なく逃走。


 ≪次回予告≫


 【エロ】……それは言い換えるなら魅力 【エロ】……それは誰しもが求める究極の欲 【エロ】……それは人類の繁栄には不可欠 【エロ】……皆も言ってみよう 【エロ】【エロ】【エロ】……若者よ、恥ずかしがる事なかれ 彼女なら受け入れてくれる。男性だろうと女性だろうと 嗚呼………素晴らしきかな【エロ】 

 6年生編の最初の話はいかがでしたか?私は長い間、放置してた伏線を回収できてスッキリしてます♪お菊ちゃんナイスでした(*´∀`*) お菊ちゃんの回想を聞いてぼくが言っていた違う視点の話ですが………気になる人は7話の【ぼくと花子さんと口裂け女②】を参照ください! これからも新キャラ増えますので期待してもらえると嬉しいです! あ、あとフザけた次回予告でごめんなさいm(_ _)m それでは

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