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ぼくと花子さん  作者: 大器晩成の凡人
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51話 ぼくと花子さんとお菊②

「んで、あんたはなんなの?」


「私は…」


「待ってください!」


 花子さんの質問に答えようとしたが、ぼくに遮られた。


「なに?もしかして誰だかわかったわけ?」


「はい、わかっちゃいました!ヒントになりそうなのは3つありました。1つ目は着物です。それで昔の人なのかなと思ったんですけど、それだけだとヒントとして弱かったんです」


 解説を始めるぼく。


「続けなさい」


「残り2つのヒント…というより、その2つのヒントはセットで考えた方がいいですね。その2つは答えと言ってもいいです」


「もったいぶるわね」


「えへへ、もう答えですから♪その2つは最初に言った言葉と手に持った皿です。とっても有名な怪談ですよ。井戸から女性が現れて皿を1枚ずつ数えていくんですけど、最後は1枚足りないってなるんです」


 饒舌なぼく。そして推理はクライマックス。


「あなたの名前は“お菊”さんですね?」


「はい」


 謎の人物…改めお菊は小さく頷く。


「少年、楽しそうだね~コックリちゃん♪」


「私はあんたが近くに居るから楽しくない」


 コックリさんは摺り足で口裂け女から距離を取る。


「あ、どうせだから、この紙が何枚あるか数えない?」


 コックリさんが提案する。


(この紙、私がバラまいたのは五千枚だったはず、一枚は口裂け女でこの女が大量に回収してるし残り枚数を確認しておきたいわ)


「なにが『どうせだから』よ?」


「別にいいでしょ!それに今ここに数える事のスペシャリストが居るわけだし」


 コックリさんはお菊を見る。


「はい!任せてください!」


「それじゃあ…」


 コックリさんは大量の紙を2つに分ける。


「こっちの紙を花子、君、口裂け女で数えてちょうだい」


「なんで分けちゃうの~?一緒に数えようよ~」


「事故を防ぐためよ!あと私の精神衛生上の問題よ!」


「そっか、花ちゃんと一緒だとまた揉めちゃうもんね~」


「そうよ、そう、あんたは花子の面倒頼むわよ」


「任せて!」


「それと100枚を1セットとして束にして並べてちょうだいね」


 そう言うとコックリさんは自分の担当する大量の紙と向き合う。他のみんなも紙と向き合う。


「1枚、2枚、3枚、4枚…」


 テンポ良く順調に数えだすみんな


「いちまぁい、にまぁい、さんまぁい…」


 1人だけ明らかに遅い。その人物はお菊。


(おっそ!)


(遅いなぁ)


(お菊ちゃん、マイペース)


(遅すぎるわ、これじゃここの紙、私1人で数えなきゃいけないじゃない)


 4人は遅さが気になりつつも黙々と数えていく。


 ~15分後~


 自分達の分を数え終わった3人はコックリお菊ペアを見守るが


「私、手伝うよ~」


 善意からコックリお菊ペアの手伝いを申し出た口裂け女。


 ピトッ


 手を伸ばした口裂け女の手がコックリさんの指先に触れる。恋愛ドラマならここから恋が始まる展開なのだが、この2人はその展開にはならない。なぜなら…


「あ、ああ……」


 コックリさんは力なくその場で倒れ込む。不思議な事だが触られただけでこうなってしまうのだ。


「花子!ちゃんと、こいつの面倒見てなさいよ!」


 幸いすぐに意識を取り戻したコックリさんは花子さんに怒りをぶつける。


「なんで私が?」


「あんたら友達なんでしょ!」


「それなら私は友達の幸せを願うわ」


「花ちゃん、ありがとう♪」


「…手伝うのはいいけど私に触らないでよ」


「うん♪」


 2人から3人になり数えるスピードアップ。ただし実質2人だ。


 ~数分後~


「きゅうじゅういちまぁい、きゅうじゅうにまぁい…」


「誰よ?数える事のスペシャリストとか言ったヤツ?」


 呆れる花子さん。


「すごい集中力だね~」


 お菊以外の4人はある意図があり紙を数枚残し事が終わるのを見守る。


「きゅうじゅうななまぁい、きゅうじゅうはちまぁい、きゅうじゅうきゅうまぁい………」


 最後の紙を数え終わったお菊は


「1枚足りなぁい!」


「ようやくオチに辿り着いたわね、お疲れさま」


 花子さんは軽く労う。


「結局、何枚あるわけ?」


「待ってなさい、いま数えるから、いち、にぃ、さん…」


 コックリさんは1セット100枚の束を数える。


「よんじゅうはち、よんじゅうきゅう、ごじゅう」


 束を数え終わった。


「100枚が50セット…お菊が数えたのは99枚だったから4999枚ね……」


「すごいね~、こんなに引っ付いてたんだ~」


 呑気に驚く口裂け女。


(こいつ…私の努力と気遣いを1人で99%回収してる……腹立つわね。でも、言うわけにはいかないし…あー、腹立つ!)


 数十年前、コックリさんは花子さんに友達が出来るようにと優しさからした行為だったのだが、今の2人の関係性で優しさを見せるというのは弱点を見せると同義なのだ。だから、コックリさんはこの紙について詳しく語る事はないだろう。


「あんた、助かったわ。ありがとう」


 花子さんはなぜかお菊に礼を言う。


「え?私、なにかしました?」


「あんたがこの嫌がらせみたいな紙を大量に回収してなかったら、ワケのわからない奴らが押し寄せて来たかもしれないでしょ」


「もっといっぱい友達できてたかもしれないね、花ちゃん!」


「イヤよ、友達ってのは数えられる程度でいいのよ」


「カッコイイ!今の名言だよ!花ちゃん」


「ふん、まぁね」


 機嫌良さそうな花子さん。


「ところでこの紙どうするんですか?」


 ぼくは大量の紙を指差す。


「処分に困るわね」


「私が持ってきた物だから私がなんとかしますぅ……はみゅっ!」


 ガシャーン


 紙の方へ歩き出したお菊は妙な声と共に転んだ。


「大丈夫?お菊ちゃん」


 盛大に転んだお菊を心配する。


「大丈夫ですぅ、いつもの事なんでぇ」


「あーあ、1枚足りない皿が全部割れてるじゃない」


「大丈夫ですよぅ」


 そう言うと床に落ちて粉々になった皿が消える。


「ほら!」


 いつの間にか皿はお菊の手元に…しかも割れる前の綺麗な状態。


「この皿は私の体の一部みたいなもので割れたら復元されて手元に戻って来るんですぅ」


「お菊さんって幽霊ですよね?」


「はい」


「なんで転んだんですか?何につまづいたんですか?」


「…………………さぁ?」


 今まで気にした事がなかったのか長い沈黙の後に答えるが本人もわかってない様子。


「念のため触りますね」


 幽霊は物理的に物や人に触れる事が出来ないのだ。幽霊が触る事が出来るのは同じ霊的存在や妖怪などである。人も幽霊に触る事は出来ない。ちなみに妖怪は人にも幽霊にも触れる事が出来る。


 この場にいる唯一の人であるぼくはお菊の腕に手を伸ばす。


「…幽霊ですね」


 ぼくの手はお菊の腕をすり抜けた。


「花子さんと口裂け女さんはどうやって歩いてるんですか?」


「私はこの忌々しい見えない壁があるから普通の地面がある感覚よ」


「私はね~、え〜と……」


 口裂け女は少し考えると


「花ちゃん、ちょっと手伝って」


「なに?」


「少しの間動かないでね」


 口裂け女は右手を花子さんの背中、左手を太もも裏に回すと立ち上がった。それは、お姫様抱っこの構図だ。


「今、花ちゃんが浮遊してる状態だとするね。それを…こう!」


 口裂け女は抱き抱えてた両腕をパッと放す。


「きゃっ!」


 花子さんはお尻から床に落ちた。


「なにが『こう!』よ、びっくりしたし痛いじゃない!」


「『きゃっ!』ですって、花子もあんな可愛い声出すのね。ぷぷぷ」


「笑ってんじゃないわよ!あんたも同じ目に遭わせるわよ!」


「イヤよ!」


「コックリちゃんの事は落とさないから安心して~」


「あんたに抱っこされるのがイヤなのよ!」


「え~」


「結局、あんたは何がしたかったわけ?」


 脱線した話を軌道修正する花子さん。


「あ~、えとね、私達は空を飛んだり出来るけど重力の影響を受けないわけじゃないって事なの!」


「そうなんですか?」


 ぼくは花子さんに確認する。


「さっきの見たでしょ。その通りよ」


「結論から言うとね、幽霊も地面に足を着けて歩けるの。でも足が地面に触れてるって感触はないの。それにちゃんと意識すればすり抜けることも…」


 口裂け女は床に沈んでいき上半身だけが床から飛び出してる状態に


「それじゃあ、地面が凄くデコボコだったり、足元に何かが落ちてたりしたらつまづいたりするんですか?」


「ううん、幽霊だから気づかなかったとしてもすり抜けるよ」


「じゃあ、お菊さんはなぜ転んだんだろう?」


「さぁ?」


 本人は困り顔。謎は深まっただけだった。


「ところでなぜ私は床に尻から落とされたのかしら?」


「それはね、重力の説明の為だよ〜。ホントはカッコ良く難しい説明をしようと思ったけど途中で私にはムリだと気づいてやめたんだ~、私そういうキャラじゃないしね!」


 なぜか決まったと言わんばかりのドヤ顔。


「なにが『そういうキャラじゃないしね!』よ、私の尻に謝りなさいよ!」


「花ちゃんだって、しょっちゅう私のお尻叩くくせに~」


「あんたと私の尻だと肉の量がちがうのよ!私は直でダメージが来るんだから!」


「あ~!そういうのってセクハラって言うんだよ~、今の時代だとアウトなんだよ~」


「この程度の言い合いでセクハラって言われるんだったら私はあんたと友達やめるわ!」


「え~ん、ごめんなさ~い」


 あっさりと論破された。


「ふふふ、仲が良いんですねぇ」


 2人のやりとりを見て笑うお菊。


「普通よ、普通」


「そうだよ~、普通に仲が良いんだよ~♪」


 少し照れる花子さん。そんな花子さんに抱きつく口裂け女。


「…………」


「お菊さん、どうかしましたか?」


 お菊の物悲しい表情にぼくは心配そうに話しかける。


「大事な事を思い出したんです……私、皆さんと友達になる資格ないです」


「急になによ?私が友達って認めてあげたのに不満でもあるわけ?」


「そうじゃないです!すごく嬉しいです…けど」


「じれったいわね、理由があるならハッキリ言いなさい!一方的に断られたら、こっちがモヤモヤするでしょ!」


「……わかりました」


 そう言うとお菊は数回深呼吸を繰り返す。彼女にとって口にするには勇気がいる内容なのだろう。そして深く息を吸い込み…


「私、人を殺しちゃったんですぅぅぅぅぅ!」

 さぁ、お菊ちゃんがとんでもないカミングアウトをしました。彼女は悪霊なのでしょうか?これには長い間、温存していた伏線……いやいや、深ーい事情があるはずです! 


 それは置いといてですね。口裂け女が説明しようとした幽霊の重力や地面とかの接し方関係ですが、本人が言っていたようにそういうキャラじゃないので難しい説明はさせませんでした。私の頭の中ではちゃんと設定があるんですが、今の私では説明しきれそうにないです。いつか機会があれば説明しますので期待しないで待っててください(ノ´∀`*) それでは

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