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ぼくと花子さん  作者: 大器晩成の凡人
65/152

40話 口裂け女と花子さん

「フンフンフフ~ン♪」


 上機嫌に鼻歌を歌うマスクを着けた女性…彼女は口裂け女。


「オシャレは奥深いね~、三ヶ月に一回は勉強しなきゃ!」


 すると


「ふべ」


 彼女の額に紙が張り付いた。


「なにこれ?」


 張り付いた紙を取ると文字が書かれていた。


「『一度、この紙が張り付いたら“トイレの花子さん”と友達になるまで、この紙は離れません』……変なイタズラ」


 口裂け女は紙を捨て歩き出す。するとパサッと背後で音が


「ん?」


 振り返ると捨てた紙がお尻に張り付いていた。


「なにこれ~」


 その紙を取り捨てるが……風も吹いてないのに紙は口裂け女の方へ。


「いや~、助けて~」


 紙から逃げる口裂け女。


 ~5分後~


「はぁ、はぁ、離れてくれない……」


 逃げるのを止め紙を手に取る。


「破ったらどうなるかな…ふん!ふんぬぬぬ!」


 紙を破こうとするが紙とは思えない程の強度。


「破けない……」


 紙を見つめる。


「“トイレの花子さん”ってだ~れ~?」


 なんの情報もなく天に疑問を投げかけるがもちろん返事は返ってこない。


 ~数日後~


 町の人のウワサ話を盗み聞きして情報を得た口裂け女は3階の女子トイレに居た。


「ハーナーコさん」


 口裂け女は呼びかけるが反応はない。


「おかしいな~、ここも違うのかな~」


 彼女が『ここも』と言ってわかる通り何件も空振りが続いている。だが、それも仕方ない彼女が今いるのはオフィスビルの3階なのだから


「住所くらい書いてて欲しかったなぁ」


 忌々しい紙とにらめっこ。


「次はあっちに行こうっと」


 次に向かったのはテレビ局。


「私は顔パス~♪おつかれさま~」


 受付の横を堂々と通り3階へ。


「ハーナーコさん」


 女子トイレに入り同じように呼びかけるが反応はない。


「ここもちが~う」


 肩を落としトイレから出ると


「先輩、“トイレの花子さん”のリベンジしましょうよ」


 彼はAD。


「バーカ、あれはお蔵入りになっただろ」


 そして、彼はディレクター


(“トイレの花子さん”の話?なにかいい情報が聞けるかも)


 情報を求め男子トイレに入る2人の後をついてく口裂け女。


「だからリベンジなんですよ、悔しくないんですか?」


「ああ?悔しさより命が大事なんだよ。お前は経験してないからわからないんだ。あれは本物だよ」


「だったら尚更」


「この話は終わりだ!ションベンさせろ」


「…はい」


 2人は並んで用を足す。


「本物…もっと、話を聞きたいな~」


「ちょっと先輩、覗かないでください」


「いいじゃねぇか、俺なんて見られても平気だぜ」


 そう言うとディレクターは便宜から離れ用を足す。すぐ側に口裂け女が居るにも関わらず


「いやああぁぁぁ」


 口裂け女は悲鳴を上げ両手で目を覆う。


「もう…なんでこんな目に」


 見たくないものを見てしまい気が滅入る。


「じゃ、お先にぃ」


 用を足し終えたディレクターはトイレから出ていった。


「あ、情報が……ううん、この人からなんとかして聞き出そう!」


 ディレクターにトラウマを植え付けられたせいかADに希望を託す。


「ん~どうやって聞き出そう……」


 考える。


「直接聞こう!」


 安直な考えに至った。うまくいくのだろうか?


「“トイレの花子さん”ってどこに居るんですか?」


 姿を現した口裂け女は用を足すADに話しかける。


「ああ、町の中心に丘があるじゃないですか、そこの頂上に建っている小学校ですよ。あ、旧校舎の方ですよ」


 思いの外うまくいった。


「ありがと♪」


 礼を言う口裂け女。


「え?」


 違和感に気づいたADは用を足す体勢のまま振り返り、口裂け女と目が合うと


「ぎゃああああぁ」


「きゃあぁぁぁ」


 ADはその時、すでに話題になってた怪談の人物と同じ服装にマスク姿の人物が目の前に居た事に驚き絶叫。口裂け女はADが驚いた事に驚き絶叫。


 口裂け女は急いでトイレから逃げ出した。


「はぁ、はぁ、びっくりした……でも、いい情報が聞けたし♪旧校舎だったよね、待ってて!“トイレの花子さん”」


 口裂け女は花子さんが居る旧校舎があるであろう方向を見る。


 しばらく歩き続けると旧校舎が建っている丘の麓に辿り着く。


「この先か~」


 丘を見上げる。麓から小学校へ車道が伸びていて子供達の登下校ルートということもあって歩道の幅は広くなっている。


「着いた~♪」


 口裂け女は旧校舎の前に着いた。


「ここの3階だね」


 旧校舎に足を踏み入れる。目的地が決まってる事もあって迷わず階段を上る。口裂け女が足を止めたのは2階と3階の踊り場。


「わぁ♪おっきい鏡」


 口裂け女は壁に掛けられてる鏡に興味津々。その鏡は上に翼竜のような生き物が(かたど)っている。


「あたし、きれい?なんちゃって~♪」


 機嫌良くその場で一回転。


「あ、そうだった!トイレ行かなきゃ」


 目的を思い出し3階へ。


「え~と、手前から3番目だっけ?3回ノックして『ハーナーコさん、遊びましょう』、これでいいんだよね」


 道すがら得た情報をお復習(さらい)する。口裂け女は女子トイレに足を踏み入れ手前から3番目…一番奥の個室前に立つ。なぜかそこの個室だけドアが閉まってる事には違和感を感じてないようだ。


「あ、ノックどうしよう…」


 物をすり抜けてしまう体ではドアをノックできない事に気づく。


「仕方ない、口でしよう!」


 その口でノック音を発する事にした。


「コンッコンッコンッ ハーナーコさん、遊びましょう」


 キィーッとドアはゆっくり開き、そこにはおかっぱ頭で白のワイシャツ、赤い吊りスカートを着た少女が立っていた。


「きゃああぁぁぁ、ごめんなさ~い」


 驚いた口裂け女は壁をすり抜け隣の男子トイレへ。


「ホントに出ちゃった…どうしよう」


 しばらく忘れていたが、張り付きっぱなしの紙を見て女子トイレのある方の壁を見る。


「お邪魔しま~す」


 恐る恐る壁から顔だけ女子トイレに進入。すると目の前に少女。


「ひっ!」


 驚き怯む。


「お邪魔します!」


 意を決して女子トイレに飛び込んだ。


「なに?人の名前を呼んどいて、コンコンダッシュ?」


「ごめんなさい!……あの、友達になってもらえますか?」


「はぁ?なにいきなり」


「実はこれなんですけど……」


 体に張り付く紙を手に取り花子さんに見せる。


「なによ、これ?」


「私もわからないんです。でも……」


 口裂け女は紙を丸め投げる。だが、紙はすぐに元の形に戻り口裂け女に張り付く。


「書いてある事はホントだと思うんです。だから、友達になってください!」


「………帰って」


「困ります!友達にならないと、ずっとこのままかも」


「ふざけないで!誰かに強要されて友達になるなんて、バカにしてんの!私の友達はあの子だけよ!」


「ごめんなさい」


 あまりの剣幕に口裂け女はトイレから出ていった。


「私、花子さんの事、なにも知らないのに図々しいお願いしちゃって……今のは私が悪いよね」


 自分を戒めるように握った拳で頭をコツンッと叩く。


「花子さんの事を知らなきゃ!」


 自分の知る限り一番、花子さんの情報を持ってそうな人のもとへ走り出した。


 辿り着いたのはテレビ局。


「あ、居た!」


 ADを見つけ駆け寄る。


「ふぅ、トイレで見た“あれ”はなんだったんだ…」


 トイレでの出来事でまだ困惑中のAD。


「ん~、今回は長い話になりそうだから、姿を見せて驚かれたら聞き出せそうにないし……」


 口裂け女は考えながらADの後をついてく。車に乗ったADの車にも乗り、ADの家に着き一緒に入り、トイレもお風呂もついていく。幸い集中し過ぎて、ついていってる最中の記憶はない。


「なにも思いつかない……え!ここどこ?」


 ようやく周りに意識を向けた頃にはADは就寝。


「寝ちゃってる……花子さんの事を聞きたいのに」


「花子さんの…なにが…」


「え、聞こえてる?」


 ADは寝ている。寝言だったが


「一か八か試してみよ!あの~、花子さんってなにがあったんですか?」


「花子さんは…イジメ…で……自殺…」


 寝ながら質問に答える。


「イケる!えっと、花子さんの友達って誰ですか?」


「…知ら…ない」


「え~、もう行き詰まっちゃったよ~」


 ガッカリしてると


「花子さん…と……直接…話し…た霊媒師……なら」


「そんな人が!その人の居場所教えて!」


「居場所は………」


「ありがと♪」


 霊媒師の居場所を聞き出した口裂け女は礼を言って出ていった。


「はっっっ!」


 ADは飛び起きた。


「ゆ、夢か…」

 前回のコックリさんと花子さんの話のすぐ後の話です。見事に口裂け女が一枚回収して花子さんの居る旧校舎に辿り着きました。この二人が親しくなるのは皆さんも知ってるとは思いますが、どういった経緯で親しくなるのか。今回の物語はそこを楽しんでもらえると幸いです。 それでは

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