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ぼくと花子さん  作者: 大器晩成の凡人
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31話 ぼくと花子さんとバンパイア②

 2人の男性は女子トイレ内に居るぼく達に銃を向けている。1人は短髪でもう1人は2メートル近い長身で耳に掛かるくらいのロン毛。一番の特徴は明らかに外人であることだ。2人は銃口はしっかりこちらに向けながらなにか話し合ってる。


(なんて言ってるかわからないけど、たぶん英語だ)


 ぼくは2人の男性の話を聞き取ろうとするがやはり難しい。


「Come here 」


長身の男性が手のひらを上にして手招きしている。その目は周りを警戒しつつもしっかりぼくを見ている。


(こっちに来いってことかな?どうしよう…)


「相手は日本人だ。言葉が通じてないぞ」


 ぼくが迷っていると廊下に3人目の男性が現れた。その男性は短髪でトレンチコートを着ている。外人の見た目ではあるがハッキリとした日本語を喋っている。トレンチコートの男性は短髪と長身の男性の肩に手を置く。


「おい!キャス!遅ぇぞ」


 短髪の男性は日本語を喋った。


「兄さん、早く人質を助けなきゃ」


 長身の男性も日本語で喋った。今まで英語で喋ってた2人がトレンチコートの男性が肩に手を置いた途端に日本語を話すようになり、今なら誤解が解けるかもとぼくは口を開く。


「あの!ぼくは人質じゃないです!」


 短髪と長身の男性は驚いた様子で互いを見る。


「おい!キャス!なにをした?」


 キャスとはトレンチコートの男性の事らしい。


「日本語を聞き取り喋れるようにした」


「おう、そうか!助かった」


 相変わらず銃口は一点に向けられてる。


(日本語を喋れるようにしたって便利な能力だなぁ、妖怪かなにかなのかな?)


 ぼくがトレンチコートの男性の正体を考えていると


「よし、掴んだ!」


 ぼくは長身の男性に腕を掴まれ引っ張られたと思ったら抱き抱えられてた。それはお姫様抱っこのような構図になり、男性は廊下へ。


「この子をお願い」


 トレンチコートの男性の前でぼくを降ろすとすぐさま短髪の男性の下へ戻り銃口をバンパイア達に向ける。


「大丈夫だ、あの2人なら」


 ぼくを気遣っての言葉だろうか、トレンチコートの男性は優しく言う。


「あの、そうじゃ…」


「ガキを食料にでもする気だったのか!ふざけやがって!」


 短髪の男性の怒りに満ちた声でぼくの言葉は遮られた。


「待て!我はなにも危害を加える気はない」


「黙れ!バンパイアはみんな首を切り落とす!その後、デカブツと包帯野郎も片付ける!」


(あれ?この人達は花子さんと口裂け女さんが見えてないのかな?見た目だけなら花子さんも口裂け女さんもぼくと変わらない人間なのに)


 ぼくの視界には花子さんを盾にするように後ろに隠れてるバンパイア達とその横で怯える口裂け女がハッキリ見えている。


(あれ?飛頭蛮さんがいない)


 ぼくは見える範囲で女子トイレ内を見回したが飛頭蛮の姿はない。


(逃げたか個室に隠れてるのかな)


 ふと花子さんと目が合う。花子さんは人差し指を立て唇に当てる。やはり短髪と長身の男性には見えていないのだろう。


「キャス!ガキをしっかり守ってろ!バンパイアとの戦闘はだいたい乱戦になる」


 短髪の男性は足を一歩踏み出す。


「待て!あの3人以外にもいるぞ!」


「あら、残念。見えてるヤツもいたのね」


 花子さんは姿を現した。


「クソッ!マジかよ!」


 短髪の男性は後ろに下がり花子さんへ銃口を向ける。


「兄さん、塩なんて持ってきてないよ」


「鉄パイプ探してこい!なんとか持ちこたえる!」


「ムチャしないで」


 長身の男性はそう言うと女子トイレの隣の教室へ。


「とりあえず、話をしない?お互い誤解があると思うわ」


 花子さんはゆっくり短髪の男性の方へ歩き出す。


「近づくんじゃねー!」


「兄さん!あったよ!」


「おう!霊がなにかしてきたら頼んだぞ!」


 長身の男性は鉄パイプのようなものを手に短髪の男性の援護をするようだ。


「兄さん、霊とバンパイアが手を組むなんて…どっちから先に退治する?」


「バンパイアからだ!霊は準備が必要だからな」


「ちょっと!私がこいつと手を組んでるとか聞き捨てならないんだけど」


 不機嫌そうな花子さん。


「花子よ、ひどいではないか!我らは盟友ではないか」


「うっさい!誰が盟友よ。だいたいね、あんたが持ってきたトラブルでしょ!」


「我には命を狙われるような覚えはない!」


「あんたの偉そうな態度が原因じゃないの?」


「偉そうなではない!偉いのである!」


「あんたね……」


 2人が口論してると……ズドンッと発砲音。短髪の男性が銃を発砲したのだ。その銃弾はバンパイアに直撃。もちろん銃弾が見えたわけではないが、発砲音と同時にバンパイアが倒れたのだ。


「きゃああぁぁぁ」


 口裂け女は絶叫。


「イタタ、我は大丈夫だ。安心してく……れ」


 すぐにバンパイアは起き上がったが少し様子がおかしい。


「なん…だ?体が痺…れ」


「どうだ?これで動けないだろ」


「なに…を?」


 バンパイアは絞り出したような声で尋ねる。


「銃弾に死人の血を塗った。死にはしないが、しばらく動けないはずだ」


「なんて非常識な!」


 突然の声に短髪と長身の男性は声のする方へ向く。そこは女子トイレ入り口付近の天井。


「なんだ!あの非常識な生き物は!?」


 短髪の男性は思わず発砲。


「ひえぇぇ」


 飛頭蛮だった。銃弾をギリギリ避けトイレ奥の窓から逃走。


(どこに行ったかと思ったら入り口近くの天井の隅にいたんだ)


 廊下から女子トイレ内を見てるぼくからは死角となり見えなかったのだ。短髪と長身の男性も目の前のバンパイアのせいで気づけなかったのだろう。


「まったく、あんたらはバンパイアが悪者だって決めつけすぎなのよ」


 花子さんは両手を前に出す。


「んぐっ」


「うぐぐ」


 短髪と長身の男性はなにか見えない力に押さえつけられてるかのように壁にピタッと張り付いている。


「私に任せろ」


 ぼくを守るように指示されてたトレンチコートの男性がぼくを廊下に放置し女子トイレへ入って行く。


「私は天使だ。2人のようにはいかない」


「あら、あなたになにが出来るかしら?」


 花子さんは壁に押さえつけてた2人の拘束を解きトレンチコートの男性と至近距離で対峙。


「後悔するぞ」


 すると突然トレンチコートの男性は天井に叩きつけられ、そのまま床に倒れる。


「私をどうにかしたいなら神様でも連れて来なさい!」


「生憎、神様は不在なんでな」


 短髪の男性は花子さんに銃を向ける。先程まで使っていた銃とは違い古さを感じる回転式の銃だ。


「ホントめんどうね」


 短髪の男性が持っていた銃が手から離れ宙に浮く。その他にも長身の男性が持っていた鉄パイプと銃も宙に浮き花子さんの方へ飛んでいく。


「危ないものは没収ね」


「まだあるぞ!」


 短髪の男性は最初に使っていた銃を手に取り銃口を花子さんへ向ける。


「わざわざありがと」


 その銃もあっさり花子さんに回収される。


「これでゆっくり話が出来るかしら?」


「……目的はなんだ?」


 短髪の男性は武器を取り上げられてもまだ戦意を失っていない。


「私はここでドンパチやられると迷惑なのよ」


「なら、バンパイアを狩ったら出ていく」


(兄さん、いいの?下手したら悪魔より強いよ!あの霊)


(仕方ねぇだろ!今は勝ち目がねぇ)


 2人は小声で話す。


「残念だけど、そこのバンパイアは私の友達の大事な人だから諦めてちょうだい」


「なら俺達も退けねぇな」


 不利な状況でも強気な姿勢を崩さない。この短髪の男性は根っからのギャンブラーか数々の修羅場をくぐって来たのだろう。


「あの…」


 廊下で放置されてたぼくは女子トイレに足を踏み入れ男性達に話しかける。


「危ないから君は下がってて」


 長身の男性に廊下へ押し戻された。


「あのー!!!」


 なかなか話を聞いてもらえないぼくは全力で声を上げた。短髪と長身の男性は一瞬驚いた表情を見せるが、それも一瞬だけだった。


「おい!キャス起きろ!」


 短髪の男性は爪先でトレンチコートの男性を蹴る。


「ん…私はいったい…」


 天井に叩きつけられたのが突然すぎて状況が理解できてない様子。


「キャス!ガキを見てろ!」


 やはりぼくの扱いは変わらない。


「あんたらねぇ、子供の話くらい聞いてあげたら?」


「どうする?」


「聞いてみてもいいと思う」


 短髪の男性の問いに答える長身の男性。


「ガキ!話してみろ!」


 話を聞いてくれるようだが、決して花子さん達から視線を逸らさずぼくに背を向けたままだ。


「この人達は悪い人達じゃないです。バンパイアさん達は今日が初対面ですけど、ここに花子さんを訪ねて来る人達はみんな良い人達なんです!」


「しょうね~ん」


 口裂け女は両手を口に当て涙ぐむ。


「キャス、ガキを調べられるか?」


「ああ」


 まだ信用できないらしくトレンチコートの男性になにかさせる気らしい。


「少し大人しくしててくれ」


 そう言うとトレンチコートの男性はぼくの額に手を当てる。


「………大丈夫だ。洗脳の類いはない。悪魔でもない」


「そうか」


「信じてくれたか!我は悪さはしていない」


「じゃあ聞かせろ!食事はどうしてる?」


「我らは街中で芸を披露し資金を得て、その資金で食事をとっている」


「人は襲ってねぇのか?」


「そんな野蛮な事はしない!幸いあまり食事を必要としない体でトマトジュースで事足りる。こっちの2人も同じだ」


 ミイラ男とフランケンは首を縦に振る。


「信じて…いいんだな?」


 短髪の男性は鋭い目をバンパイアへ向ける…すると突然


「テケテケテケテケ」


 言葉とは言えない、笑い声とも違うような…鳴き声と言った方がしっくりくる声が


「なんだあれは!?」


 その声は女子トイレ入って右側の壁に掛けられてる振り子時計から聞こえた。そこにはピンク色の生き物がいた。振り子時計は時間を知らせる時にハトが飛び出して来るのだが………この振り子時計に関してはハトではなく、お茶運び人形が出てくるのだが、その部分からピンク色の生き物が飛び出して来たのだ。


「テケテケテケテケテケテケ」


 ピンク色の生き物はなにをするでもなくトイレから出ていき姿を消した。


「なんだったんだ?」


 短髪の男性は呆然。


「昔、なんかの映画のマスコットキャラに似てたからテケテケって呼ばれてるわ。当人も最初はなにも声を出さなかったけどテケテケって呼ばれてからはあんな鳴き声で鳴くようになったわ」


 花子さんは丁寧に解説する。


「かわいいよね~」


「ただのピンクのオランウータンじゃねぇか」


 口裂け女の言葉に思わずツッコミのような返答をする短髪の男性。2人は自然と目が合い短髪の男性はウインク。


(兄さん!相手は幽霊だよ)


 気を遣ってなのかまだ警戒してるのか小声で話す。


「コホンッ!すまねぇ俺達が悪かった」


 咳払いをすると短髪の男性は謝罪した。


「これ返すわ」


 没収した銃が浮かび男性達の方へ。


「それとこの銃は貴重な物なんでしょ!簡単に奪われんじゃないわよ」


 回転式の銃は一番最後に短髪の男性の手に戻った。


「すまねぇ」


「あんたら1人ずつ言いたい事があるから聞いていきなさい」


 初対面の相手に…しかも個別で言いたい事とは


「まずはあんた!」


 花子さんはトレンチコートの男性の前に立つ。


「ほう!れん!そう!あんたは一人で重要な事を決めないこと!ちゃんとこの兄弟に報告!連絡!相談!わかった?」


「あ、ああ」


 トレンチコートの男性はたじろぎながら頷く。


「次はあんた!」


 次に花子さんは長身の男性の前に立つ。


「あんたは肉体的には兄貴より強いかもしれないけど、ほとんど兄貴の方が正しいのよ!だから意見が対立する時は少し冷静に考え直しなさい」


「…うん」


 思い当たる節があるのか真摯に花子さんの言葉を受け入れる。


「最後はあんた!」


 花子さんは短髪の男性の前に立つ。


「あんたは弟やバカ天使の事が心配でしょうがないんでしょ。あの2人がどんな失敗をしても見捨てないこと!まぁ、言われなくてもあんたならそうするでしょうけどね。あんたは自分の選択を信じなさい、間違ってないから。すべてが終わった後にあんたにも安らぎが訪れるはずよ」


「お、おう」


 戸惑いながらも頷く短髪の男性。


「ほら!早く行きなさい。やることいっぱいあるんでしょ」


 花子さんに出ていくよう促される。


「たしかにやるべき事はたくさんある。行くぞ」


 トレンチコートの男性が先に出ていく。


「迷惑かけてごめん」


 続いて長身の男性。


「じゃあな!悪さすんじゃねぇぞ!」


 バンパイアに指を差し忠告すると最後に短髪の男性が出て行こうとすると


「あ!もうひとつ言う事があったわ!」


 花子さんの言葉で短髪の男性は立ち止まる。長身の男性も戻って来た。


「15年間おつかれさま…いえ、13年かしら?うーん、2年?まぁいいわ!2年と13年と15年間おつかれさま!世界を救って来なさい!」


「なんだ?意味わかんね。わかるか?」


 短髪の男性は長身の男性に聞く。


「さあ?」


「あをたらはわからなくていいのよ!私の自己満足だから!これでホントに言いたい事は最後だから、さよなら」


「ああ、じゃあな」


 これで2人の兄弟と天使とは最後の別れとなった。

 はい!早速、ピンクのオランウータンの元ネタは怪談シリーズです! そして、バンパイア一行を追いかけてきた兄弟と自称天使ですが、15年続いた海外ドラマが元ネタです。花子さんが最後に「2年と13年と15年、お疲れさま」みたいな事言ってましたが、あれはそのドラマの声優さんと役者さんへの私なりの感謝の言葉です。つまり、自己満足の為の回でした(ノ´∀`*) それでは

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