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ぼくと花子さん  作者: 大器晩成の凡人
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30話 ぼくと花子さんとバンパイア

「ジャマイカといえばなに?」


「へ?」


 突然の花子さんの質問にぼくはそう返す事しかできなかった。


「ジャマイカといえばなにを連想するって聞いてるの」


「えっと………」


 ぼくはスマホを出し[ジャマイカといえば]と検索。


「現代っ子ね。まぁいいわ」


「レゲエ……ですか?」


 花子さんの質問の意図がわからず自信無さげに答えた。


「ぜんっぜん違う!ボブスレーよ!ボブスレー!映画好きっていう共通の趣味があるから話を振ったのに残念ね」


 花子さんは見下すような表情。


「むぅぅ」


「悔しいかしら?安心しなさい。私も映画好きだけど知らない事いっぱいあるわ」


 時々見せる花子さんの優しいフォロー。こういうのもツンデレというのだろうか


「いやぁぁぁ、あっちいってよ~」


 頭を手で守るようにして口裂け女が女子トイレに駆け込んできた。鳥にでも襲われてるのだろうか……だが、答えはすぐにわかった。


「よいではないかぁ♪よいではないかぁ♪」


 飛頭蛮だった。


「花ちゃん、助けて~」


「その綺麗な黒髪をわしの体に巻いてほしいだけなのじゃあ」


「い~や~、気持ち悪い!でも褒めてくれてありがと~」


(一応、礼は言うんだ)


「来て早々うるさいわね」


 花子さんは幽霊パワーで二つの石鹸を操り、洗面台の水が流れ出し、そこに石鹸を移動させみるみる内にモコモコと泡が立つ。その二つの石鹸は飛頭蛮へ目掛けて飛んでいった。


「ぬ?」


 飛頭蛮の視界は真っ白になる。それは飛頭蛮の右目と左目に一つずつ泡立った石鹸がピタッと張りついたのだ。人はシャンプーする時に目を瞑る。それは目に泡が入らないようにするためだ。目に泡が入るとどうなるか皆は知っているだろう。


「目が!目がぁぁぁ!!」


 飛頭蛮は床に落ち、のたうち回る。皆は真似しないように!


「助かった~」


 口裂け女は胸に手を当て「ふぅ」と息を吐き一安心したようだ。


「髪を体に巻くとか、どんな趣味してんのよ!この変態!」


「男なら誰しも綺麗な黒髪に惹かれるものじゃ!」


 飛頭蛮は目を閉じ涙を流しながら喋る。


「黒髪をどう愛でればよいのか……その最終形が体に巻きつけるなのじゃ!のう?少年」


 この場で飛頭蛮と同性はぼくだけという事もあり同意を求められた。


「さぁ、どうなんでしょう?」


 ぼくは否定も肯定もしなかった。黒髪に惹かれるという部分はわからなくもないからである。


「ぬぬ!少年は食べる派だったか!」


「ウソでしょ!」


「引くわ」


 女性陣はドン引き。


「ちょっと!なにも言ってないじゃないですか!」


 きっぱり否定しとけばよかったと後悔。


「少年、隠さなくてもよい。わしも巻いて食べるのが一番の理想じゃからな」


「なんだ?パスタの話か?」


 廊下から聞き慣れない声が。そこには昔のヨーロッパの貴族が着てそうな服を着た男性が居た。髪はオールバックで顔は自信に満ち溢れている。先程の言葉も質問口調なのにどこか上から言ってるような喋り方。


「ん?」


 男性は後ろから肩を叩かれ振り返る。男性以外にも来訪者が2人いるのだ。1人は全身を包帯で巻かれた人物。その包帯は男性に日光が当たらないように広く展開されている。もう1人は大柄で体のあちこちが縫われたツギハギのような体をしている。


 全身包帯の人物は包帯を体の一部のように操り文字が出来上がる。その文字は[日本だから手巻き寿司じゃないかな?]となっていた。


「うむ、そうだな…訂正しよう。手巻き寿司の話か?」


「ちがうわよ!変態の話よ!」


「花子殿!わしを変態と申すか!ただただ女性の髪を体に巻きつけたいという男心を!!」


「我も理解に苦しむな」


 男性は顎に手を当て首を傾げる。


「ウガ!ウガ!」


 大柄な人物は慌てた様子身振り手振りを交え男性になにか伝えようとしてる。


「そうであった!花子よ、我はトイレに入るぞ!」


「それが?」


 花子さんなら「どうぞ」とか「勝手にすれば」とか答えそうなものだが、曖昧というかなんとも不思議な返答だ。男性も男性でわざわざトイレに入るのを宣言するのも不思議な事だ。


「花子よ、我はトイレに入るのだ!」


「そうだ、あんた!こいつが誰かわかる?」


 男性を無視しぼくに問う。


「たぶんですけど、バンパイア?」


「正解…もう少し悩みなさいよ」


「だって、見た目が…それっぽいというか」


「花子よ、我はトイレに入る!!」


「じゃあ、その後ろの全身包帯の子は?」


 またもや男性…もといバンパイアを無視。


(包帯の“子”?花子さんなら包帯の“ヤツ”とか言いそうなのに…… そういえば、ゆきおんなさんの事も“あの子”って呼んでたような。気を使う相手なのか初対面なのか、それとも他の理由?)


「降参かしら?」


 熟考してると花子さんは笑みを浮かべながら言った。


「ミイラ男です!見た目ですぐわかりますよ!」


 少しムキになり強めに答えた。


「へぇ、そう」


 花子さんの嫌らしい笑みを見てぼくはなにか罠に掛かってしまったと気づく。


「む~」


 なぜか口裂け女は怒ってる。


「花子よ、トイレにはい…」


「じゃあ、あのデカブツは?」


 バンパイアは何度も同じ宣言をするが、何度も無視される。


「うーん…怪物?」


「怪物って範囲が広すぎるわ、ちゃんと名前があるんだから頑張りなさい。世代は違うかもしれないけど映画好きなら答えられるはずよ」


(映画好きなら……か、映画が関係してるって事だよなぁ。見た目は大柄で体中に縫ったような跡だらけ…そういえば、バンパイアさんとミイラ男さんと一緒にいるって事は仲がいいのかな?)


 ぼくが深く考えてると遠くからまた入る宣言が聞こえるがぼくもそれを無視する。


(ん?バンパイアさんにミイラ男さん……そうか!)


 ぼくは答えに辿り着いた。見た目も重要なヒントではあったが、ぼくにとってバンパイアとミイラ男、この2人が大きなヒントになった。花子さんの言う通りぼくは世代ではない。だが、この2人……いや、この3人はかつて映画業界で大活躍したキャラクターなのだ。この大柄な人物を一言で表すなら[心優しい悲しき怪物]  その名前は……


「もしかしてフランケンシュタインですか!?」


「大正解!」


「すごい!実在するなんて!」


「大興奮じゃない、まるで憧れの映画俳優にでも会ったみたいね」


 ある意味では花子さんの指摘は間違いではない。


「はーなーこーよ!トーイーレーにーはーいーるーぞ!!」


 今までにない大声で宣言する。ただの大声ではなくオペラ歌手のような数十メートル先まで届きそうな声。


「うっさい!勝手に……おっと危ない」


 恐らく「勝手に……」の先は「入ればいいでしょ」と言おうとしたのだろう。ぼくは一連の流れでバンパイアの入る宣言の理由に気づいた。ついでに花子さんの思惑も……やはり、いつも通りのイジワルだ。


「もしかして、バンパイアさんは花子さんの承諾がないと入れないんですか?」


「ちが……」

「あんた、よく気づいたはね!!」


 バンパイアは何か言おうとしたが花子さんに遮られた。


「バンパイアの数ある体質の中でマイナーな体質なのによく知ってたわね!」


「はい、マンガで知りました」


「へぇ、どんなマンガなの?」


「えーと、舞台は人里離れた田舎で主人公は2人いてですね。1人は学生でもう1人は診療所の医者で院長なんですよ」


「うんうん、それで?」


 興味を持ったようだ。


「その村で不審死が増え始めて、学生の主人公は日常的な異変から真相に近づいて医者の主人公は医者目線から真相に近づいていくんですよ」


「なかなか面白そうね、今度貸しなさい」


「いいですよ!」


「花子よ!我を無視すると痛い目に遭うぞ!」


「なによ、どうせ入ってこれないくせに」


 今の状況は川を挟んだ2人が対岸の相手に「殴るぞ」と言っているようなものだ。


「違う!断じて違う!我は礼儀正しい紳士なだけだ!決して、そのような意味のわからぬ制約に縛られてる訳ではない!」


「花子さん、入れてあげればいいじゃないですか」


「イヤよ!こいつ、お願いする立場なのに偉そうな態度が腹立つのよ!」


「ウガガ、ウガ!」


「なに言ってるかわからないわよ」


 フランケンの訴えを一蹴。その横でミイラ男はシュルシュルと包帯を操り[お願い、花子さん]という文字が


「あんたのお願いでもダメよ、ちゃんと自分でお願いするまではね」


「むむぅ、どうやって花子に『入っていい』と言わせるか」


「聞こえてるわよ、頭脳戦でもする気?」


「ふふふ、聞こえてても問題ない。我の策略で言わせてみせよう」


「ふぅん、出来るならやってみなさい!」


「ククククッ」


 その含み笑いは勝利への道筋が見えてるかのようだ。


「我に従え!!」


 突然、大声で言い放った。バンパイアの目は真っ直ぐ花子さんの目を見つめる。


「あんた、なにがしたいの?」


 呆れる花子さん。


「ぬぬ!我の絶対遵守の力が!!」


「バカじゃないの!私、寝るわ」


 そう言うと宙で寝そべりバンパイアに背を向ける。


「ま、待て!寝られてしまっては頭脳戦もなにもないではないか!」


「じゃあ、素直にお願いすることね」


 背を向け寝そべりながらバンパイアの方をチラッと見る。


「そもそもなんでここに来たんですか?」


 話が進展しないのでぼくはここに来た理由を尋ねる。


「そうであった、我は謎の3人組に追われているのだ!捕まれば確実に命はない」


「あら、心臓に杭を打たれてサヨナラなわけね」


「冗談ではない!奴らは鉈を持っていた。我の首を切り落とす気だ!」


「いやあぁぁ」


 今まで静かだった口裂け女が絶叫。


「花ちゃん、そんなグログロは見たくないよ!」


「そうね、どこかに行ってもらいましょうか」


 花子さんはからかうような口調。


「ウガガガ!ウガー!」


 フランケンが突然大騒ぎ。ジェスチャーでなにかを伝える。どうやら階段あたりでなにかあるようだ。


「ヤバイ!奴らが来た」


 バンパイアを追ってるという3人組が近くまで来てるようだ。


「花子よ!我を入れよ!!」


 切羽詰まった様子で命令する。


「あんた、そんな状況でも態度を改める気はないのね」


「ウガーー!ウガウガウガー!」


 フランケンは必死で何かを伝える。横のミイラ男は包帯で[バンパイアが危険な目に遭ったら、いくら花子さんが相手でも…]と文字が


「はぁ、わかったわ。入りなさい」


 花子さんの言葉で3人は女子トイレに入る。相当慌ててたようでバンパイアはヘッドスライディング。すぐに立ち上がり隠れるように花子さんの後ろへ。そして、ドタバタと足音が聞こえ足音は女子トイレへ近づいてくる。すると廊下から俊敏な動きで男性2人が女子トイレへ入ってきた。その2人は銃を持っていた。

 さぁて、今回の話はバンパイアです!バンパイアが屋敷の住人の許可がないと入れないって皆さんは知ってましたか?私はぼくが話してたマンガで知りました。原作は小説でアニメ化もされています。アニメにはあの一流芸能人が声優として参加してます。まぁ、とある番組である芸能人の失態で消えてしまいましたが( *´艸`) なかなかにグロい作品なので見る時は覚悟してください。そして、ぼくがミイラ男だと判断した人物ですが、皆さんは謎に気づけたでしょうか?判断材料が少ないかもですが、考えてみてください。最後に皆さんは巻く派ですか?食べる派ですか? ではでは

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