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ぼくと花子さん  作者: 大器晩成の凡人
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23話 ぼくと花子さんとゆきおんな④

「五円玉と紙…コックリさんを呼ぶんですか?」


「そうよ、あいつにやってもらうことがあるの」


「コックリちゃんね~、実はすごい子なんだよ~」


「じゃあ、やるわよ」


 花子さんの目の前で儀式用の紙が広げられ鳥居の絵の上に五円玉を移動させ、花子さんは五円玉に指を置き


「コックリさん、おいでませぇ」


 するとすぐにポンッと煙とともにコックリさん登場。


「1人でも呼び出せるんですか!?」


「ちゃんとルールをまーもーれー」


 コックリさんは登場して早々にお怒り。お怒りの理由は花子さんが1人で呼び出したことにあるだろう。


「うっさいわね、口裂け女!そいつ好きにしていいわよ」


「コックリちゃ~ん♪」


「ぎゃああぁ、来んなー」


 口裂け女はものすごい勢いでコックリさんを回収。


「もふもふ♪ぷにぷに♪」


 口裂け女は幸せそうにコックリさんを愛でる。


「これで落ち着いて説明出来るわね」


 花子さんはやれやれといった表情。


「そもそも、あの儀式セットは私が1人で寂しくないようにってあいつが渡してきたものなのよ。だから、1人でも呼び出し出来るわけ」


「そうだったんですか」


「と言っても誰でも出来るんだけどね。ただ、さっきみたいに怒って呼び出した相手をつねったり、髪を引っ張ったりするわよ」


(仕返しがかわいいなぁ)


「コックリ!あんたにやってもらいたいことがあるわ!」


 花子さんが振り返るとそこには口裂け女の膝の上でお腹を出した状態のコックリさんの姿が、花子さんの呼びかけに反応せず目が死んでいる。感情を殺して事が済むのを待ってるようだ。


「起きろ!!!」


 花子さんはコックリさんの無防備なお腹にバチーンと平手打ち。


「あぎゃああぁぁぁ」


 痛みで絶叫。


「私は…なにして?」


 口裂け女の過度なスキンシップは記憶にないようだ。


「あんたにやってもらいたいことがあるの」


「なにさせる気よ?」


 あからさまに警戒するコックリさん。


「ビーチバレーしたい」


 ゆきおんながコックリさんに用件を伝える。


「ああ、そうゆうこと。仕方ないわね」


 そう言うとなにやら不思議な呪文を唱え始める。呪文を唱え終わると、なんと!花子さんのトイレが南国風の砂浜に様変わりしていた。


「砂浜…」


 ぼくは足下の砂を手に取る。


「本物だ…」


「これでいい?」


「うん」


 ゆきおんなは髮質…毛並みの良さそうなコックリさんの頭を撫でる。


「これ、コックリさんが?」


「ええそうよ、異世界とトイレを繋げたの」


「すごいですね!」


「ふふん!まぁね!ちなみにこの空間だとあんたは霊体扱いだから花子や口裂け女にも触れるわよ」


 それを聞いたぼくは花子さんの手に手を伸ばそうとするが、背後から誰かに抱きつかれた。


「わぁ、ホントだ♪」


 口裂け女だった。


「少年にはじめて触れたぁ♪」


(この人、ホントにスキンシップが過剰だ)


 口裂け女の柔らかい感触にぼくは抵抗する気力を失った。


「花ちゃんも触ってみなよ~」


「いいわよ!珍獣じゃあるまいし。それよりビーチバレーやるわよ」


「せっかく異世界に繋げてあげたんだからビーチバレーだけじゃもったいないわ!ビーチフラッグスとかどう?」


「あんたにしてはいい案ね」


 花子さんはコックリさんの案を採用してしまう、罠であることを知らずに…


「じゃあ、対戦の組合せは口裂け女対ゆきおんなと花子対八でいいわね」


 自然な流れでコックリさんが仕切る。


「あれ?コックリさんは参加しないんですか?」


「私はこの空間を維持しなきゃいけないのよ。だから審判が精一杯」


「そうなんですね」


「きみもやろ」


 ゆきおんなはぼくの手を引く。


「ぼくはやめときます」


「どうして…?」


 ゆきおんなは悲しげな表情をした…気がする。表情ではあまり読み取れないが声は確実に悲しみをを帯びていた。ぼくはその声に胸が締め付けられる感覚を覚える。彼女を安心させる言葉を必死で考える。


「ぼく、水着用意してないですし…来年はぼくも水着用意します。その時は遊びましょう!」


「来年!いつ?いつ遊ぶ?なにして遊ぶ?また水着一緒に買いに行ってくれる?」


 ゆきおんなは質問が溢れだしてくる。その勢いにぼくは戸惑う。


「ほら、一気に質問しないの!困ってるでしょ」


「しょうね~ん、おねえさん聞いちゃった~♪ゆきちゃんとデートの約束♪」


「デートって!そんなんじゃ!」


「私達、2人が証人だから、もし約束を破ったら…そうね、一週間コックリを好きにしていいわよ、口裂け女が」


「なんで、私を巻き込むのよ!」


「わ、わしを好きにしてもよいのじゃぞ」


 頬を赤らめながら飛頭蛮が会話に乱入。


「いい?約束は守るためにあるのよ!絶対よ!絶対!!」


 そんなに口裂け女の相手をさせられるのが嫌なのかぼくに念を押す。


「わ、わかりました」


「どう?これで証人が3人、あいつも約束を守るはずよ」


「うん」


 ゆきおんなは頷く。すごく嬉しそうな表情をしている…気がする。いや、すごく嬉しそうだ。


「じゃあ、あんたは雑用ね!50メートルくらい先にフラッグを立ててきなさい」


 いつの間にか用意されていたフラッグをコックリさんから渡されたぼくは50メートルくらい先の砂浜に立てる。


「立てましたー!」


 ぼくは遠くにいる花子さん達に聞こえるように大声で報告。


「じゃあ、最初は口裂け女対ゆきおんなね」


 審判のコックリさんがそう言うと2人はスタート位置へフラッグに背を向けうつ伏せになる。両手を重ね枕のようにし頭を置く。


「負けないよ~、ゆきちゃん♪」


 口裂け女は顔を横に向け隣でうつ伏せになってるゆきおんなに話しかける。


「私も」


「位置について…」


 コックリさんの合図でゆきおんなは真剣な表情…だと思う。口裂け女はニコニコとリラックスした表情。


「よーい」


「あ、ゆきちゃん!ブラの紐緩んでない?」


 うつ伏せになったことでブラの位置が上がり紐が緩んでることを指摘したが


「その手には乗らない」


 ゆきおんなは口裂け女の作戦だと思い耳を貸さない。


「どん!」


 先に起き上がったのはゆきおんな、出遅れる口裂け女。起き上がりでの出遅れを取り返すために腕を横に振る見事な女の子走りで巻き返しを狙うが、2人の差はどんどん開く。


 ぼくはゴール地点で2人の走りを正面から見ているとデパートでの水着選びのことを思い出していた。


(やっぱり、ゆきおんなさんが白の水着を着ると遠目だと裸に見えるなぁ)


 ぼくはなにかおかしいことに気づく。


(あれ?水着の色って水色じゃなかったっけ?色はぼくが選んだし、さっきも水着の感想で髪の色と合ってるって言った記憶がある)


 ぼくは記憶を思い起こす。間違いなく水色の水着だったはず。だが、こちらに向かってくるゆきおんなは白の水着……よく見ると上は白の水着だが下はぼくが選んだ水色の水着。ぼくは答えにたどり着き、咄嗟に両手で目を覆う。


 視界を覆っているとズザザザァッと音が聞こえた。誰かがゴールしたようだ。だれが?口裂け女?あの距離で口裂け女が逆転してるとは考えにくい。そう、先にゴールしたのは


「きみ、私勝ったよ」


 彼女は両手で目を覆うぼくの手を引っ張る。


「は、はい、よかったですね」


「ちゃんと見て」


 彼女は目を覆う手を剥がそうとする。


「か、勝ったのはわかりましたから!」


 いまの彼女を見る訳にはいかない。正直、気づくまではまじまじと見てしまったのだが、気づいてしまった今は見てはいけなき気がするからだ。


 すると離れた場所から声が


「ゆきちゃ~ん」


 その声は徐々にこちらに近づき。ぼくの手を剥がそうとしてた手が離れた。


「ゆきちゃん…ハァハァ……水着が」


 口裂け女が来たことを確信したぼくは慎重に手をずらし状況を確認。ゆきおんなは後ろから口裂け女に抱きしめられている。ちゃんと口裂け女の腕で白の水着は隠されている。ぼくは安心し両手を顔から下ろす。


「きみ、ほら」


 ゆきおんなは右手を突き出し勝者の証のフラッグを見せる。


「ゆきちゃん!動かない!スタート地点に戻ろ!」


 2人はスタート地点へ歩き出す。ぼくもそれについていく。


「私、1人で歩く」


「ダメ!ゼッタイ!」


 ゆきおんなは頬を膨らませた…気がする。端から見ても歩きづらそうだが、今のゆきおんなを1人で歩かせる訳にはいかない。向こうにはぼくと違い白の水着を凝視する人が1人いるからだ。


 3人はスタート地点にたどり着く、ゆきおんながうつ伏せになってた場所にはいっさい乱れがない抜け殻のように置いてある水着のブラが…こんなものを見たらあの人がはしゃがないはずがないのだが、その姿が見えない。


「飛頭蛮さんは?」


「ん」


 花子さんは親指で自分の背後を指差す。その方向を見ると体…頭の半分が砂に埋まった飛頭蛮が、先に花子さんが対処してくれてたようだ。


「ほら、水着を着て!ゆきちゃん」


 ぼくはゆきおんなに背を向ける。


「はい、オッケー!」


 ぼくは振り返るとゆきおんなは白の水着から元の水色の水着に着替えてた。


「私、勝ちだよね?」


「はい、圧勝でした!」


 ゆきおんなはぼくに向けピース。


「次は私たちね」


 花子さんはやる気満々に腕を回す。ぼくはゆきおんなからフラッグを受け取りゴール地点に差す。


「ぽー(負けない)」


 2人はスタート地点でうつ伏せになる。スタートラインに足を合わせないといけないので互いに挑発したいだろうが身長差でそれは難しい。


(クククッ、この競技はスタートダッシュが重要。あんな巨体で私より早く起き上がれるはずないわ)


(クククッ、花子、あんたにこの競技で勝ち目はないわ。私の策はすでに完成しているの)


 そう、コックリさんの策はすでに完成していて花子さんがどんなに速くても勝つことはない。口裂け女が対戦相手だったとしてもそれは同じだ。


「位置について…よーい、どん!」


 花子さんは即座に立ち上がる。だが、八はまだ上半身を起こしてる最中。


(ふふん♪予想通り!私の圧勝ね)


 花子さんはフラッグへ一直線。


「ふぎゃ」


 突然、花子さんはなにかに激突。そこにはなにもないはずなのだが、その隙に出遅れた八が追い越しそのままゴールのフラッグを取った。


「ぽーぽぅ(勝ったよ!少年!)」


 八は嬉しそうにぼくを持ち上げる。ぼくは少し心配そうに花子さんを見る。その視線に気づいた八はぼくを下ろす。


「ぽぅ(花子さんどうしたんだろ?)」


 ぼくと八は花子さんのもとへ行く。


「花子さん大丈夫ですか?」


 砂の上に倒れる花子さんに話しかけると


「忘れてたわ」


 ゆっくり起き上がる。


「花子ぉ、どうしたの?」


「あんた…これが狙いだったわけね」


「なんのことぉ?」


「白々しいわね。どう仕返ししてやろうかしら」


 2人の会話からなにが行われたのか全くわからない。


「コックリさん、なにしたんですか?」


「私はなにもしてないわ、花子が勝手に自滅したのよ」


「?」


 全く要領を得ない。


「いま、この空間は砂浜だけど、実際は砂浜に移動したわけじゃないの。砂浜を花子のトイレに重ねただけなのよ」


 ぼくが理解してるか確認のために少し間を置く。そして説明は続く


「つまり、別の場所に見えててもここは花子のトイレなのよ。だから、花子はこんな広い砂浜なのに移動制限はバッチリ影響受けてるわけ」


「それでさっきのですか」


 そのあと、1位決定戦と最下位決定戦をした。

 どうでしたか?コックリさんは凄いでしょ?ただ可愛がられるだけじゃないんですよ!それにしてもゆきおんなが水色の水着の下に白色の水着を着ていたなんて驚きでしたね!白のままでいいという意見が聞こえますが、せっかくぼくが選んでくれた水着なので水色の水着をちゃんと着せます(ノ´∀`*) それでは

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