17話 ぼくと花子さんとメリーさん
早朝、ぼくは学校へ登校途中に妙なものと遭遇。それは1体のフランス人形… そのフランス人形は宙に浮かび尚且つ喋っていた。
「もう!なんなのよ!電話に出なさいよ!臆病者」
(花子さん関係の人かな?)
フランス人形はぼくの気配に気づいたのか急にポトッと地面に落ちた。ぼくはフランス人形に近づき拾い上げ、そのまま持ってしばらく歩いていると公園を見つけ、フランス人形を公園のベンチに座らせる。
(ここなら安全かな)
ぼくは再び学校へ向かう。
その日の放課後。
「やめるでござるー」
旧校舎3階に着くと耳を塞ぎながら走る二宮金次郎とすれ違い階段を下りていった。ぼくの存在に気づかなかったのか危うくぶつかるところだった。
「ネタバレは勘弁してあげてくださいよ」
ぼくは女子トイレに入るなり言った。
「あいつ、マンガ目当てで来すぎなのよ!それに1冊読むのに1時間以上かかるのよ」
「いいじゃないですか、読む速度は人それぞれですよ」
「よくないわよ!」
花子さんはビシッとテレビを指差す。テレビには[二宮金次郎の銅像を窃盗か!?]というニュースが報道されてた。
ぼくは反論できず苦笑い。
するとぼくはポケットに手を入れスマホを取り出した。着信があったようだ。
「メリーさん?」
着信相手はメリーさんと表示されていた。電話帳に登録した覚えのない人物からの着信に不思議に思っていると
「あんた、最近フランス人形とか見かけなかった?」
「あ!朝、登校途中に見かけました!道の真ん中で急に動かなくなって、車に轢かれたら可哀想だから近くの公園のベンチに置いてきました」
「やっぱり、目をつけられたわね」
「どうしましょう?」
「とりあえず出なさい。面白いの見せてあげる」
ぼくは花子さんの言う通りに電話に出た。
「はい、もしもし」
『わたし、メリーさん。いま公園にいるの』
プープープーと電話が切れた。
「切れました」
「校門あたりを見てみなさい」
ぼくは廊下に出て校門を見ると今朝、拾ったフランス人形がフワフワ浮游しながら校門へ。
「あ!朝のフランス人形が校門前に居ます!」
「来るはずよ、はい!スマホ!」
花子さんはぼくに指示する。スマホを見るとちょうどメリーさんから着信があった。電話に出ると
『わたし、メリーさん。いま校門前にいるの』
それだけ言って電話は切れた。ぼくは校門前のフランス人形を確認。フランス人形はゆっくり移動し学校内に進入。グラウンド手前まで来ると様子がおかしい。
「あの、花子さん。フランス人形がグラウンドの手前であたふたしてますよ」
「あいつとしてはグラウンドの真ん中であんたに電話する予定だったんでしょうね。あの人形は普通の人にも見えるから部活動してる子達に見られるのが困るんでしょ」
「どうするんだろう?」
ぼくが見守っていると宙を浮游してたフランス人形は地面に足をつけてグラウンドの壁沿いを歩き出した。走ったり、壁に張りついて横歩きしたり、ほふく前進したり子供が近くに来たらただの人形にフリをしたりとさながらスパイ。
すると人形のフリをしてたら1人の男の子に拾われた。
「あ、拾われちゃいました」
男の子は興味があるのかフランス人形のスカートを捲ろうとする。その時、誰かに呼ばれたのか男の子は後ろを振り返りフランス人形を投げ捨て走っていった。地面に落ちたフランス人形はゆっくり立ち上がり服についた土をポンッポンッと払う。そして動きを止め棒立ち。
「来るわよ」
ぼくはスマホの画面を凝視。花子さんの言った通りスマホに着信。ぼくはすぐ電話に出た。
『あんのクソガキ!レディのスカートを覗くなんて絶対に許さ…』
通話状態に気づいてないようだ。
「あ、あのもしもし?」
『へ?あ、え~コホンッ、わたし、メリーさん。いまグラウンドにいるの』
電話は切れ再びフランス人形は周りを警戒しながら、時にはサッカーボールが直撃したりもしたが旧校舎前までやって来てスマホが鳴る。ぼくは電話に出る。
『わたし、メリーさん。いま旧校舎前にいるの』
電話は切れた。そしてまた着信があり電話に出る。
『わたし、メリーさん。いま………』
『廊下は走るなよ』
メリーさん以外の声が聞こえた。普段から2階を巡回してる用務員の声だ。
『通話中なんだから話かけないでよね!ちょっと待ってて、すぐかけ直すから』
電話が切れすぐに着信。電話に出ると
『わたし、メリーさん。いま旧校舎の2階にいるの』
電話は切れた。
「あと少しです!がんばってください!」
「あんた、なに応援してんのよ?」
本来ならば怖がるべきなのだろうが、ここまでの経緯を見ていたぼくはむしろ応援せずにはいられなかった。そして、3階は何事もなく進行することができた。
「次はきっとトイレの前ね」
そう花子さんはつぶやいた。
「次の着信は絶対に出ないで」
「なんでです?」
「面白いもの見せるって言ったでしょ」
花子さんはウインク。案の定、着信が…でも花子さんに言われた通り電話には出ない。鳴り続ける着信音。
(そういえば留守電設定してなかったなぁ)
しばらく鳴り続けた着信音がピタッと止む。
「なんなのよ!せっかくここまで来たのに、久しぶりに最後まで出来そうだったのにぃぃぃぃ」
ドアの向こうから悔しそうな声が聞こえる。
「ふふふ…あははははははは」
花子さんは腹を抱えて爆笑。
「花子!やっぱりあんたの悪知恵ね!ここに来た時から嫌な予感してたのよ」
「花子さん、性格悪いですよ」
呆れるぼく。
「もう一度電話してください!出ますから」
ぼくはドアの向こうの相手に呼びかける。
「え!いいの?」
するとすぐに着信。ぼくは電話に出た。
「わ、わたし、メリーさん。いまトイレの前にいるわ♪じゃなくて、いるの」
電話は切れた。
(嬉しそうだったなぁ)
また着信。ぼくはすぐ電話に出る。
「わたしぃ、メリーさん!んんんんぃま!あなたのうしろにいるのぉぉォぉ」
(すごいテンションだ)
ぼくは後ろを振り向く。そこには朝、公園のベンチに置いてきたフランス人形が宙に浮いていた。
「きみ!ありがとう!久しぶりに仕事をやり遂げたわ♪」
フランス人形は両手でぼくの人差し指を握り上下にブンブン振る。これも握手と言うのだろうか?
「えと、メリーさんですよね?」
「ええそうよ!わたしがメリーさんよ。いますごく機嫌がいいのー♪」
メリーさんはぼくの周りを飛び回る。
「うるさいわね、ハエみたいにブンブン飛び回らないでちょうだい」
機嫌良く飛び回ってたメリーさんはキキィーッと急ブレーキし花子さんに向かって
「誰がハエよ!わたしはいつだって優雅でエレガントを心がけてるんだから!」
メリーさんは胸に手を当てる。その姿は自信に満ち溢れている。
「あんた、優雅とエレガントって同じ意味よ」
「んぐ」
メリーさんは痛いところを突かれたようだ。
「たぶん、反復法なんじゃないかな?同じ単語を繰り返すことで強調する技法だったと思う」
「ナイスフォローよ、少年!それに賢い!」
「あべ学習塾に通ってますから」
ぼくは照れくさそうに頭を掻く。
「こいつは賢いんじゃなくてずれてるのよ」
花子さんの言葉にぼくは頬を膨らまるのであった。
さて、今回はメリーさんが登場ですね。皆さんはメリーさんと言えばどんな姿を想像しますか?だいたいがフランス人形の姿を想像するでしょうが、私は違います!私にとってメリーさんはやはりスイカですね!いつかそんな姿のメリーさんを登場させたいです( *´艸`) そして、今回のネタですが、“あべ学習塾”です!これは私の好きな映画で出てきます。まぁ、背景でちょっと映る程度ですので探すのは大変かもですね。これ以上ヒントは出さないので(*`・ω・)ゞ それでは♪