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ぼくと花子さん  作者: 大器晩成の凡人
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98話 ぼくと花子さんとヘルメット

 ここ一年ちょっとで賑やかになった旧校舎三階の女子トイレ。今日も既に騒が……賑やかなメンバーが揃い踏み。


「あんた、何しに来たのよ?」


「そうですわ!ムダ乳はお呼びじゃありませんわ!」


「え〜、私、居ちゃダメなの〜」


 女子トイレの主である花子さんは不満そうに来訪の理由を尋ね、来訪者の一人であるモナリザは口裂け女を追い返そうとしている。


「違うわよ、あんたよ、あんた!帰んなさいよ!」


「何故、わたくしが帰らされなければなりませんの?」


「よかった〜、私じゃなくて〜」


 花子さんの不満の矛先はモナリザだった。自分への言葉じゃないと分かった口裂け女は安堵。


「あんたも帰んなさいよ」


「ガ〜ン」


 安堵したのも束の間、自分にも矛先を向けられショックを受ける口裂け女。


『まぁまぁ、いいじゃないか、花子さん』


 可愛らしい声で花子さんを宥めてるのは首なしライダー。


「あんたはあんたで呼んでないのになんで来てんのよ!?」


 普段から用がある時だけ都合お構い無しに呼び出しを掛けてる首なしライダーにも噛みつく。どうやら今日は花子さんからの呼び出しではない模様。


「いいじゃないですか。いつも首なしライダーさんの都合も考えずに呼んでるんですから」


 ぼくは苛立つ花子さんを宥める……というのは半分建前で尊敬する首なしライダーになるべく長く居て欲しいだけだろう。


「あんたは毎日来てんじゃないわよ!」


 とうとうぼくにも噛みつく見境のなさ。


「………………………」


 そして、無言で佇むのは人体模型。


「あんたは…………あんたはいいわ」


 矛先を人体模型にも向けようとしたが、口撃手段が見出だせなかったのか、とりあえず許された。


「はぁ、それで?ホントに何しに来たわけ?」


 散々当たり散らしていたが、人体模型のおかげで程良くクールダウンした花子さんは用件を尋ねる。


「遊びに〜♪」

「わたくしの美しさを知らしめる為ですわ!」

「暇ですから」

『動作確認だよ』


 人体模型以外の四人は同時に来訪の理由を答える。


「あーもう!あんたとあんたとあんたには聞いてない!あんたよ!」


 花子さんはぼく、口裂け女、モナリザを一人一人指差し除外したあと首なしライダーを指差し再度理由を尋ねる。


『動作確認で来たんだ』


「そんなの大丈夫よ。エアコンもテレビも冷蔵庫、それに便座、洗面台辺りも問題ないわ。壊れたら呼ぶから帰んなさい」


 機械は正常に動いていてもいつ壊れるか分からない。だからこそ定期的にメンテナンスが必要だ。せっかくの厚意に甘えれば良いのになんだかんだで追い返そうとする花子さん。


『いやいや、そっちじゃなくてモナリザの方だよ』


 どうやら動作確認、定期メンテナンスの対象はモナリザだったらしい。


「はぁ?なんでそうなんのよ?」


『いやぁ、前に額縁を改造しただろ?それの動作確認なんだよ』


 モナリザが収まっている額縁は元々は普通の額縁だったが、少し前に人体模型の依頼で首なしライダーが改造し頑丈さ、安全性、回収機能を搭載している。それの動作確認という事なのだろう。


「それはいいとして、何でそれをここでやるわけ?」


 花子さんの疑問にも一理ある。花子さんにとってモナリザの額縁がちゃんと機能しようが関係ない。それに首なしが花子さんにそれを報告する義務もない。それ故の疑問だ。


「それはわたくしが説明しますわ!」


 シャシャリ出たのは……説明を申し出たのはモナリザ。


「わたくしの器に相応しいかどうかで一番重要なのは頑丈さ!だって、このわたくしを守る上でそれは必須!今まであの状態だった事には恐怖を感じますわ!少しでも傷物になってしまえば、わたくしの価値が大幅に下がりますもの。まぁ、下がったとしても世界的に価値があるのは揺るぎませんわ♪それくらい次元が違いましてよ!わたくしの価値は!美しさは!尊さは!」


 自分の価値を多弁に語る姿、そして、揺るぎない自信は世界屈指だろう。


「ねぇ?あいつ叩いていいかしら?もう理由なんてどうでもよくなってきたわ」


 花子さんはなかなか質問への返答が無く、挙句に自分賛美までし始めたモナリザが面倒になったらしく、とりあえず隣に居る口裂け女に許可を求める。


(花ちゃん、今モナリザさん楽しそうだしやめようよ〜。それに凄い頑丈だから叩いたらこっちが痛いと思うよ〜)


「それはどうかしらね?」


 口裂け女はモナリザを刺激しないように小声で警告するが、花子さんには秘策があるのか額縁の頑丈さは気にしてない様子。


「そのわたくしを守り保護する入れ物ですもの!動作不良なんてあってはなりませんわ!だから、こうやって確認をしてますの!」


 どうやら花子への返答は終わったらしい。


「あんた、話が戻ってんじゃないのよ!私が聞いたのはなんでここでやる必要があるのかよ!自分の長ったらしい自慢ばかりで内容が無いのよ!あんたの脳みそ、あんたと同じでペラペラなんじゃない!」


「何を言いますの!わたくしの価値を知らしめるのは大事な事でしてよ!それを理解できない人達への配慮ですのにそれすら理解できないなんて愚かですわ!」


 やっぱり始まってしまった口論。お互い我が強いが故に避けられなかっただろう。


「花ちゃん、モナリザさんの脳みそはペラペラペッタンコなの?」


「きっとそうよ!いえ、むしろ無いんじゃないかしら?あいつは付喪神なんだし」


 口裂け女の疑問を口撃材料にし嫌味を言う花子さん。


「じゃあ、なんでお喋り出来てるの?」


「なんでって、それは……」


 花子さんは口裂け女の疑問に答えが出せず口が止まる。


「お喋りって頭の中でいろいろ考えてするものでしょ?でも、考える脳みそが無かったらモナリザさんはどうやって喋ってるの?」


「そ、それは……」


 哲学的な疑問を前に反論できない花子さん。まさか、口裂け女が花子さんを論破する日が来るとは。


「それでしたら、花子さんや口裂け女さんも幽霊ですし物理的に脳みそは無い事になりますね。ぼくはちゃんとありますけど」


 からかうように参戦して来たぼく。しかも自分はちゃんと脳みそがある事をアピール。


「は、花ちゃん!今の私達ってどうやって考えたり出来てるの!?」


「……………………………」


 肉体を失い幽霊として存在し思考しコミュニケーションも取れる。だが思考する為の肝心な脳みそは肉体と一緒に消滅している。ならば自分達の意識は何処に在るのか。


 果てなき疑問を前に花子さんの頭の中には宇宙が広がっているだろう。詰まる所、思考停止だ。 

 久しぶりに新しい話が始まりました!今まではぼくと花子さんと○○○ってな感じで○○○の中にメインになる登場人物が入りましたが、今回は違います!別に深い意味を持たせてる訳ではないです。ただ過去に使ったタイトルをまた使うのは嫌だっただけです! ゆきおんな→濡れ女みたいな流れです。誰が来るのか予想しながら読んでくれると嬉しいです(*´∀`*) それでは

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