91話 ぼくと花子さんと赤紙青紙⑫
〜前回のあらすじ〜
サキュバス、透明人間に続き三人目の変態……飛頭蛮が登場だったが、赤紙青紙(妻)の予防的先制攻撃で撃退。
予防的先制攻撃で飛頭蛮を撃退した赤紙青紙(妻)。
その後はトラブルに遭遇する事なく旧校舎へ辿り着いた。
「……ここに花子が居るのね」
「はい。三階の女子トイレに居ますよ」
修羅場を迎える気満々の赤紙青紙(妻)からは少し緊張感を感じるが、ぼくはそれに気づいてないのか普通に返答。
「気になってたんだけど、なんで三階の女子トイレなの?」
花子さんの極端にピンポイントな地縛霊の体質を知らない赤紙青紙(妻)は質問を投げかける。
「それはですね……」
「待って!言わなくていいわ。そういう事なのね」
質問に答えようとしたぼくの言葉を遮ったのは質問者本人だった。何やら答えを見出したようだ。
「何かわかったんですか?」
答え合わせも兼ねてマミーが尋ねる。
「女にとってトイレって場所は文字通りの意味だけじゃないわ!社交場であり戦場なのよ!あなたも女だから分かるでしょ?」
「え!?あ、はい」
赤紙青紙(妻)の考察が始まり、同意を求められたマミーは慌てて返事。尚、ぼくはこの時点で的外れな答えだと察したのか苦笑い。
「鏡の前で並んで化粧すれば必然的に互いの探り合いよ。相手のバッグや化粧品を見てどこのブランドかを見定めれば自分と相手の優劣が分かる。自分が優位ならマウントが取れるし、そうじゃなければ自分が許容できる範囲で相手を煽てればいい。化粧を早く済ませて逃げたりなんかしたら、それは相手にも自分にも負けた事になるわ!」
一応、真摯に話を聞くマミー。ぼくは完全に興味が無いらしく旧校舎を見上げている。花子さんのトイレに入り浸っているであろう口裂け女がヒョッコリ窓から顔を出すのを期待しているのかもしれない。
「そんな場所を陣取ってるって事は私に対して喧嘩腰……いいえ、宣戦布告って言ってもいいわ!」
自信たっぷりに言い放った赤紙青紙(妻)だが、だいぶ誤解だらけだ。最終的には花子さんが待ち構えてるという話になってしまっている。
「宣戦布告?あの……」
「じゃあ、行きましょうか!」
誤解を解こうとしたマミーの言葉を遮りぼくは意気揚々と旧校舎へ。いろいろ訂正するのが面倒になったのだろう。それに待ち構えてないにしろ花子さんの性格なら最初から喧嘩腰の可能性は十分にある。
「それにしてもこの旧校舎、なかなかいいわね」
「古い建物が好きなんですか?」
旧校舎を気に入った様子の赤紙青紙(妻)にぼくは尋ねる。
「古い建物というより、こういう雰囲気かしらね。脅かす側として楽しめそうだわ」
どうやら妖怪活動としての評価だったらしい。
「残念ですけど、旧校舎にはぼくくらいしか来ないですよ?」
「それと私達みたいな妖怪や幽霊もです」
ぼくは現在の旧校舎の来客情報を伝える。マミーはそれに補足を入れる。
「それも含めてよ。人が寄り付かないからこそ恐怖をより際立たせるのよ」
「確かにそうですね」
赤紙青紙(妻)の言葉に同意しているが、その本人が頻繁に旧校舎へ出入りしてるせいか、どこか他人事に聞こえる。
「きっと、ここに来る人は雨宿りとかトイレが我慢できなくてとか追い詰められた状況よ。私が普通に目の前に現れただけで絶叫するわね」
「場所とか関係なく赤紙青紙さんを見たら、みんな驚きますよ」
本日、街中で赤紙青紙(妻)と遭遇し逃げるどころか接触した人から出た発言は空虚に聞こえてしまうが、決してテキトーな事を言っている訳ではない。ただ、その発言者が人間でありながら特殊な日常を過ごしてるからだ。
できれば、[普通の人なら]と付け加えて欲しいところだ。
「廊下は走るなよ」
「はい!こんにちは!」
二階に上がるとちょうど用務員のおじさんが挨拶。ぼくはそれにいつも通り元気よく返す。
「あんた、アレとも知り合いなの!?」
用務員を指差す赤紙青紙(妻)の手は……体は小刻みに震えて人差し指はピンッと伸ばしきれていない。やはり、妖怪には彼の本当の姿が見えているらしい。
「はい、廊下を走らなければ怖い人じゃないですよ」
「そうだとしてもよ……あなたは怖くないの!?」
安全性を説明したぼくの言葉でも恐怖を拭いきれない赤紙青紙(妻)はマミーに意見を求める。
「え!?わ、私は見ないようにしてるから」
これまたやはり、マミーも用務員を恐怖の対象として見ていたらしい。
「こんな所に長居したくないわ!早く行きましょ!」
急かされたぼくは足早に尚且つ走らないようにこの場を後にした。
先週は更新を忘れてしまい申し訳ありませんでした。
それはそうと皆さんは赤紙青紙(妻)が言ってた事、どう思います?私はその通りトイレは社交場で戦場だと思います!ドラマとかで女性2人が鏡に向かって化粧直しするシーンとか見るとソワソワ、ヒヤヒヤします! それでは