表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくと花子さん  作者: 大器晩成の凡人
140/152

89話 ぼくと花子さんと赤紙青紙⑩

 〜前回のあらすじ〜


 マミーがお世話になった店長の協力で捜索範囲は全国へと広がった。ただし、そのスーパーのチェーン店限定だ。

「マミーさんのおかげで情報収集の範囲が広がりましたね!」


 協力者になってくれた店長のもとを後にした一行の中で最初に口を開いたのはぼく。


 赤紙青紙(夫)の捜索開始から目撃情報は得られなかったものの初めての成果。


「……そうですね」


「どうしました?」


 成果があったのにあまり嬉しくなさそうなマミー。ぼくはそれを心配そうに尋ねる。


「店長さんの協力は凄く助かります。私もそれが目的でここに行こうって誘った訳ですし。でも…………ごめんなさい!赤紙青紙さん」


 マミーは突然、頭を下げ謝罪。


「なによ?急に謝ったりして」


「だって、絶対に旦那さんを見つけるって言ったのに………こんなんじゃ時間が掛かっちゃう」


 謝罪された赤紙青紙(妻)は何の謝罪なのか分からないといった様子。そして、マミーはその理由を申し訳なさそうに……それ以上に悔しそうに答えた。


「あのね、私があの人を何年探し回ってたと思ってるの?こんな出会って数時間のあなたにアッサリ見つけられたら堪ったもんじゃないわ!だから、その…………気にするんじゃないわよ」


 赤紙青紙(妻)はマミーの目の前まで来ると軽く額にデコピン。それは叱責ではなく励ましのデコピンに見えた。


「はい!」


 デコピンで気合が入ったのか元気を取り戻したようだ。


「それじゃあ、早いかもしれませんがバンパイアさんと合流しませんか?」

 

 ぼくは別行動のバンパイアと合流を提案。


「あら、アッサリ見つけられたら、堪ったもんじゃないとは言ったけど、こんな簡単に諦められても困るわよ?」


「違いますよ。そういう系の情報に詳しそうな人を知ってて、その人が居る場所でバンパイアさんと合流するんです!」


 ぼくは自信に満ちた表情で答える。


「その合流場所って……もしかして!」


 まるで台本があるかのような、この後の言葉がビシッと決まるような、お膳立てのようなマミーの言葉。


「そう、旧校舎です!」


 “決まった” ぼくはそう思ったに違いない。


「そうですね!花子さんならわかるかもですね!」


「フフフ、花子………そう、そこに行くのね。確かに私を放っておいて会いに行ってる女ですものね。あの人の居場所を知っていてもおかしくないわよね」


 誤解的な事情を知らないマミーはうっかり花子さんの名前を出してしまい、それに反応した赤紙青紙(妻)は五本の指を不規則にゆっくりと動かしていた。


「しょ、少年ちゃん、なんか人妻お手々ちゃんの雰囲気ヤバくね?」


「聞こえてるわよ!女として当たり前の反応よ!情緒不安定とか言ったら、あんたのを思いっきり弾くわよ!」


 ぼくへの質問を赤紙青紙(妻)が返答した。その際、デコピンのようなジェスチャーをしていたが先程マミーにしたような優しいものではなく“マジ”のやつだった。


(ヤバイよ。少年ちゃん。人妻お手々ちゃんはヤバイよ)


「あはは」


 さっきより小声の透明人間。ぼくは苦笑いすることしかできなかった。


「と、とりあえず、バンパイアに電話するね」


 スマホを取り出したマミーは連絡先からぼくに電話をかける。


 なぜ一緒に居るぼくのスマホに電話をかけるかというと連絡手段が無いバンパイアに一時的に貸しているからだ。


 プルルルルル…………


『うむ、これで電話できているのか?あー、あー、我だ』


 スマホの向こうから聞こうた声は間違いなくバンパイア。


「あの!バ、バ、バ、バンパイア?」


『ん?我である。その声はマミーであるか?』


 明らかに電話の応対としては間違いな程のボリュームで声を発したかと思えば突然、挙動不審な喋り方。それに声が裏返っている。


 聞き慣れた恋人の声だが思わず確認してしまうバンパイア。


「あ、あの……ね………私…達……見つけ………られなくて……ね………それで……ね……花…子……さんの………所に……」


『落ち着くがよい。我は最後まで話を聞く』


 何故か昔のような喋り方になってしまったマミー。それを優しい口調で返すバンパイア。


「え…と……だか…ら…………合流しよ?」


『そうだな!我もそう思っていた。では花子のトイレで会おうぞ!』


 電話を切ったマミーは床に座り込んだ。


「き、緊張したー」


「あはは、マミーさん、昔の喋り方になってましたよ」


 座り込むマミーに手を差し出し起き上がるのを手伝うぼく。


「ありがとう……って!私、そんな喋り方になってたの!?」


「はい♪なんか可愛かったです」


「あなた、あれを計算でやってるんだったら……いいえ、計算でもそうじゃなくても………恐ろしい娘」


「いやー、マミーちゃんはやっぱ天使♪最後の『合流しよ?』は反則だべ」


 3人はマミーを囲みそれぞれの感想を述べた。


「俺ちゃん的には『あの……ね』とか『見つけ………られなくて……ね』とか『それで……ね』って“ね”を区切ってるトコがポイント高いのよ!もう守りたいってなるよな!」


「うるさいわね。あなたはさっさとオムツ買いなさいよ」


 興奮冷めやらぬ透明人間とは対照的な赤紙青紙(妻)。


「ケッコー傷つく!でも、俺ちゃんの用事忘れられてなくてよかった!」


 一応、忘れられてなかったオムツ購入を済ませ一行は店の外へ。


「クゥーン♪」


「はいはい。引っ付くな。舐めるな」


 外へ出るなり、外で待っていたオオカミ男は透明人間へ一直線にイヌ科らしいコミュニケーション。


「ふふふ♪そちらも仲良さそうで良かったです♪」


 旧友同士の仲の良さそうな光景を見て嬉しそうなマミー。


「俺ちゃんとしては美人ちゃんに抱きつかれてペロペロされたいんだけどなぁ」


 ペロペロされながらもボヤく。


「それはそうと透明人間さん達も一緒に花子さんの所に行きませんか?バンパイアさんも来ますし、久しぶりの再会になるんじゃないですか?」


「おいおい、少年ちゃん!俺ちゃん、いま大事なこと言ったぜ?美人ちゃんにペロペロされたいって!それを『それはそうと』で流す少年ちゃんを見てると将来が心配だぜ」


「透明人間さんの言う事は聞かないで君はそのまま成長してってね」


 イタズラっぽく言うマミー。普段、仲の良い花子さんや口裂け女には見せない雰囲気。それを見ているとマミーと透明人間は恋愛とは別のベクトルで特別な関係だと思えてくる。


「マミーちゃん、ひどいぜ。まぁ、それは置いといて、せっかくの誘いだけど今日はやめとくわ。オムツ持ったまま行くのもアレだしな。ホラ、行くぞ!」


「ワン♪」

「ぱぱぱ」


 恐らくウインクをし爽やかに断り二人……二匹を連れ立ち去って行った。


「残念ですね」


「大丈夫だよ。機会はいくらでもあるから!」


 少し淋しげなぼくを励ますマミー。

 今回は少し赤紙青紙(妻)がマミーに歩み寄った感じですね!それとバンパイアと透明人間の再会はまだ少し先になります。 それでは

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ