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ぼくと花子さん  作者: 大器晩成の凡人
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87話 ぼくと花子さんと赤紙青紙⑧

 〜前回のあらすじ〜


 街の人々の寛容さに驚きつつも同時に旧友同士の再会に盛り上がった前回。予想通りあの人物が登場する予感……

 三人の前に姿を見せたのは……三人の前に存在していたのは……


「透明人間さん♪」


「お?マミーちゃん。おひさしー」


 本日二回目の旧友との再会で嬉しそうなマミー。透明人間も嬉しそうに手を振っているはず……だ。少なくとも発した声は好意的に聞こえた。


「透明人間さん、お久しぶりです!」


「おう!少年ちゃんもバッチシ目を合わせてくれて俺ちゃん複雑な気分だぜ」


「あなた、アレとも知り合いなの?」


 肩を落として落ち込んでるであろう透明人間に指を差し呆れ気味に言う赤紙青紙(妻)。


「俺ちゃんをアレちゃん扱いするお手々ちゃんはどちらちゃんかな?」


「ちゃんちゃん、ちゃんちゃん、うるさいわね!私は赤紙青紙よ!」


 指を不規則に動かす赤紙青紙。それはイライラを表現しているのだろう。


「赤紙青紙さんは腕だけの妖怪なんです」


「それが本体って事は………つまり、ゼンラちゃんって事か!」


 ぼくの補足に余計な解釈と一緒に理解してくれた。


「誰がゼンラよ!バカーーー!」


 バチーンッ


 言われた本人は透明人間の頬に頭突きをお見舞い。見た目的にはビンタだ。


「イテーッ!見えないだろうけど、いま俺ちゃんのほっぺには赤い手形がハッキリ浮かび上がってるぜ。ぜったい」


 透明人間の体質のせいで確認は出来ないが、間違いなく頰は赤く腫れているだろう。


「ホント相変わらずですね。自業自得です」


「マミーちゃんは味方でいてくれると思ってたのに。俺ちゃん、寂しいぜ」


 旧友だからこその反応に肩を落としているように思える透明人間。


「透明人間さんって昔からこんな感じだったんですか?」


 昔の透明人間を知らないぼくはマミーに尋ねる。


「そうですね。昔の透明人間さんは………」

「モロのチン!昔から産まれたままの俺ちゃんだぜ!」


 マミーの返答をかき消すように透明人間が答えた。


「ウソね!男のウソなんて私にはお見通しよ!」


 赤紙青紙(妻)は透明人間が居るであろう空間を指差した。


「そんな事ないぜ。俺ちゃん、ウソ吐かない。マジで」


「実際どうなんですか?マミーさん」


 本人に聞いても埒が明かないと思ったぼくは再度マミーに尋ねる。


「昔の透明人間さんは人間嫌いで怖かったんですよ」


「だああぁぁぁ!マミーちゃん、その話はやめようぜ。俺ちゃんの黒歴史なんだからさ」


 透明人間の慌てたような口調でマミーの暴露が事実だとほぼほぼ確定した。


「へぇ、意外です」


「少年ちゃんよ、俺ちゃんだって心はあるんだぜ。年がら年中、追い回されれば嫌いにもなるさ。なぁ、マミーちゃん?」


「ふふふ♪確かにあの時代は大変でしたね」


 透明人間に同意を求められたマミーは『大変でしたね』と言いつつもどこか楽しそうな懐かしむような口調で答える。ただし『嫌いにもなるさ』に対しての同意ではなかった。


「そうだった!マミーちゃんはあんな風に追い回されても人間を嫌わない聖女ちゃんだった。そんなマミーちゃんだから俺は………おっと、なんでもなかった!」


 何かを言いかけた透明人間は慌てて誤魔化す。


「『俺は………』の続きはなんですか?」


「ぼくも気になります!」


 あからさまに誤魔化したせいでぼくとマミーは『俺は………』の続きに興味津々。


「なんでもないさ!気にしたら負けだぜ!お二人ちゃん」


「へぇ、ふぅん。そうゆうことね」


 何かに感づいた様子の赤紙青紙(妻)。もし彼女に目、鼻、口などの顔のパーツがあったら、目を細め口角は少し上がり愉悦感に浸ってるような表情をしてるに違いない。


「赤紙青紙さん、何かわかったんですか?ぼくにも教えてください」


「私も!」


「ダメよ。ホントは話してもいいけど、こういう事は部外者が指摘する事じゃないの!特にあなたには話さない!」


 二人は答えを求めるが赤紙青紙(妻)は拒否。特にマミーに対しては指を差し断固拒否の意思表示。


「ええ!私、そんなに嫌われてるんですか!?」


 確かに赤紙青紙(妻)はマミーに対してあまり良い印象を持ってないが、これは決して意地悪や嫌がらせといったものではない。大人としての配慮なのだ。


「いやぁ、助かるぜ!お手々ちゃん!お礼に俺ちゃんがマミーちゃんを女の子ちゃんだと知った時の話をするぜ。あれは………んぐっ!んぐんぐ!?」


「何を話す気ですか!?」


 透明人間は言葉を詰まらせた。それは口を塞がれたからである。透明である彼の口が塞がれたのが何故わかるのかというと彼が居るであろう空間に包帯でぐるぐる巻きにされたような人物が突如現れたからだ。そして、その包帯を操っているのはもちろんマミーだ。


「むぐ!むぐぐぐ!ぷはっ…………いやぁ、俺ちゃんはただ水浴びしてたマミーちゃんを見てしまったって話をだな」


 自力なのか、それとも包帯ぐるぐる巻きの人物が何か喋ろうとしているのを見兼ねてマミーが拘束を緩めたのか、その人物は勢いよく喋り出す。


 喋った内容もそうだが、開いた口のその中身が空っぽだった事から、やはり包帯ぐるぐる巻きにされている人物は透明人間なのだろう。


「あなた、女の水浴びを覗くなんて……サイテーね」


「待ってくれ!俺ちゃんは被害者………いや待てよ。俺ちゃんとしてはマミーちゃんのボンッ!キュッ!を見れたからラッキーだった訳で………できれば下のボンッ!も見たかったけど、上のボンッ!だけでも凄かったし………あれは巨より先に美を感じたっていうか………イ、イタイ!イタイ!」


 赤紙青紙(妻)の軽蔑しているであろう視線に弁明するかと思いきや当時の感想を喋り出した次の瞬間、痛みを主張する透明人間。


「もう余計な事を話さないでください!」


 普段のお淑やかなマミーからは想像できない恥ずかしさ混じりの大声。どうやら透明人間が主張した痛みの原因は彼女が包帯の拘束を締めたからだろう。


「そ、それよかよ、マミーちゃん。せっかくだから、俺ちゃんの下の方も包帯で巻いてくんね?俺ちゃんとしては逆に恥ずかしいっていうか」


 先程から包帯ぐるぐる巻きの人物が透明人間である根拠に触れたが、もう一つ根拠がある。それはその包帯ぐるぐる巻きの人物の姿が上半身だけで腰から下は包帯の拘束は無い。そして、包帯で拘束されていない下半身は見事に何も無い。これも包帯ぐるぐる巻きの人物が透明人間である根拠だ。


 皆に分かりやすくする為のマミーの配慮なのだろう……


「だったら下着を履いてください!」


 どうやら配慮とかではなかったようだ。


「マミーちゃん、新しい芸の練習かい?腹話術なんてすごいねぇ」


 騒がしくなってきたところで年配の女性が話し掛けてきた。一般人には上半身を象った包帯が喋ってるようにしか見えない。それで腹話術だと勘違いされたようだ。


「へ?あ、そうなんです。あはは」


 マミーは誤魔化すように答え、その返答に年配の女性は芸を磨く心意気に感心し立ち去って行った。


「ところで透明人間さんはここになんの用なんですか?」


 クールダウンしたタイミングを見計らい、ぼくは素朴な質問をする。


「ん?ああ、そうだった!俺ちゃんオムツ買いに来たんだった」


「透明人間さん、オムツ履くんですか?」


 返答に対してまたも素朴な質問を投げかける。


「まさか、あなた、そういう趣味なの?」


 質問の返答が返ってくる前に赤紙青紙(妻)が軽蔑するような口調でぼくの質問を上書き。


「いんや。俺ちゃん、そんな変態じゃないぜ」


「じゃあ、なんのために?」


 そして、また素朴に質問をする。


「んー………まぁ、次に機会があれば話すさ。あ!そうだ!マミーちゃんに頼みがあんだわ」


「下は巻きません」


 内容を聞く前に釘を刺すマミー。


「いやぁ、まぁ、それは追々という事で。頼みってのはお金を貸して欲しいんだわ。俺ちゃんとしたことが財布を忘れて」


 用件を伝えつつ下半身も包帯で巻いてもらう事は諦めてないようだ。


「いいですけど、透明人間さんが買い物すると騒ぎになりません?」


 たしかに透明の人物が買い物をすると騒ぎになりかねない。


「そうなんだよなー。あいつ、唯一まともな見た目なのに肝心な時に……いや、常に役に立たなくて。そんで俺ちゃんが買い物する事になって……」


 透明人間が言っている『あいつ』とは皆さんで察してもらうとして。そういった経緯で透明の彼が買い物に赴いたらしい。


「だったら、私が買いますよ」


「お!マジで?マミーちゃん、俺ちゃんと買い物デートしてくれるの?」


 マミーの申し出に勝手な解釈を付け加え喜ぶ透明人間。


「違います!用件ついでです!こっちの用件が優先で透明人間さんはついでです!」


 『買い物デート』を全力否定。そして、少しの間、透明人間も加わる事になった。

 さて、透明人間の買い物の目的は何でしょうね? 予め言っておくとオムツはちゃんとオムツとして使います! 一応、いずれわかります! それでは

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