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ぼくと花子さん  作者: 大器晩成の凡人
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85話 ぼくと花子さんと赤紙青紙⑥

 〜前回のあらすじ〜


 突風のように過ぎ去って行ったサキュバス。場を掻き乱しただけでほとんど物語の進展は無かった。

 思わぬ人物に翻弄された三人はその人物の姿が見えなくなるまで見送った。


「サキュバスさん、何しに来たんでしょう?」


 ぼくは頭に浮かんだ疑問をそのまま投げ掛けた。


「あの人の事は考えるだけ無駄です」


 いちばん被害を受けたマミーは不機嫌そうに答えた。確かに考えても無駄かもしれない。それほどゲリラ的に通り魔的に脈絡も無く現れたのだから。


「考えても無駄なら、さっさと私の夫探しを再開してくれる?」


 ぼくの頭の上で貧乏ゆすりのような仕草の赤紙青紙(妻)。


「そうですね。えーと、マミーさん、スーパーってどこですか?」


「あっちだよ。案内するね」


 薄着になったマミーの案内で移動開始。


「あなた!あの女に近づき過ぎないで!」


 「え?あー、はい」


 未だ警戒心剥き出しの赤紙青紙(妻)は案内役のマミーから距離を置くよう忠告。


「私、本当に何もしませんから安心して下さい」


「そんな訳ないわ!さっきからチラチラと私の事を見てるじゃない」


「ぼくもそれ気になってました。どうしたんですか?マミーさん」


 赤紙青紙(妻)が自意識過剰なのではなく、ぼくも違和感を感じる程、その視線は頻繁に赤紙青紙(妻)に向けられていた。


「あの、私、赤紙青紙さんと話がしたくて……それで……」


「そういえば、そんなこと言ってましたね」


 捜索チームを二手に分ける上で唯一連絡手段を持っているぼくとマミーが同じチームになってしまったのはマミーの細やかなワガママと赤紙青紙(妻)の警戒心の結果だ。苦肉の策としてぼくのスマホを最低限の操作方法を教えてバンパイアに貸しているから、なんとか連絡は取れる。


「話って……なによ?」


「あの…………夫婦生活って……ど、ど、どんな感じなんですか?」


 警戒心を緩めない赤紙青紙(妻)にマミーは恥ずかしそうに質問。


「はぁ?それが話したかった事なの?」


「は、はい」


 ワガママを言ってまで話したかった事とはこの事のようだ。今後バンパイアとの関係を深める上で赤紙青紙夫妻は良き参考になるかもしれない。良い意味でも悪い意味でも。


「なによ!それなら、もっと早く言いなさいよ」


「バンパイアの前だと………恥ずかしいから」


 なんともいじらしい理由。マミーの魅力爆発だ。デパートでのマミー人気も頷ける。


「はぁ、警戒して損したわ。あのね、夫婦生活ってのはそんなに憧れるようなものじゃないわよ……」


 警戒心が解けたのか、赤紙青紙(妻)はぼくの肩に手を置き………いや、ぼくの肩へ移動し指先をパタパタ動かし語り始めた。


「手を繋げば暖かくて落ち着くけど、離れてしまうと寂しくなるし、一緒に歩けば歩幅が合わなくて置いてかれるけど、それに気づいて合わせてくれるし、同じ趣味も一緒にやってれば、ケンカして離れ離れになっちゃうし…………ホント、どこに居るのかしら」


 愚痴の中にノロケ話が混じっていた気がするが、これが夫婦という事なのだろう。


「あの!私、絶対、旦那さんを見つけますから!」


「あのね、私の話聞いてた?私は苦労してるって話なのよ?」


 呆れたというような表情………いや、手相………いやいや、とにかく呆れたという感じで返す。


「でも、なんだか想い合ってるって伝わりました。だから、絶対に旦那さんを見つけます!」


「あっそ。勝手にするといいわ」


 マミーの熱意が伝わったのか、赤紙青紙(妻)の警戒へのトーンが少し下がったように思える。


「ほら、手繋ぐわよ!」


「あ、はい」


 赤紙青紙(妻)はぼくに手を繋ぐ事を要求。


「ふふふ♪手、繋ぐの好きなんですか?」


「なによ?悪い?落ち着くのよ………できれば、あの人と繋ぎたいけど」


 ぼくと手を繋ぐのは代替案。本来なら夫と繋ぎたいのだろう。腕だけの妖怪という事もあり、それは特別な行為なのかもしれない。


「あの、好きな人と手を繋ぐってどんな感じなんですか?」


「あなた、あの偉そうな男と付き合ってるんでしょ?手も繋いだ事ないわけ?」


「はい、ごめんなさい」


 何故か謝るマミー。それは未だにカップルらしい行為が出来ていない自分の不甲斐無さからの謝罪なのかもしれない。


「謝らなくていいわよ。それにあの男から手を繋ごうだなんて言いそうにないものね。あなたから行かないと時間掛かると思うわよ」


「そうですよね」


 落ち込むマミー。普段の彼女は奥手で男心をくすぐるような守ってあげたくなるような女性だ。そんな彼女が自分から手を繋ぎたいなんて言うのはなかなか勇気が必要だろう。


「歩く時はどうしてるのよ?隣を歩いてればチャンスは沢山あるはずでしょ?」


「私、バンパイアの背中を見て歩くの好きだから………その……」


「呆れた!あなたにも原因があるんじゃない!」


 赤紙青紙(妻)はぼくと繋ぐ手を放し、マミーの目の前まで来ると人差し指を突き出しマミーを指差した。


 そして、赤紙青紙(妻)に浮遊能力がある事が証明された瞬間でもあった。


「私、どうしたらいいですか?」


「とにかく、あの男の隣を歩くようにしなさい。そして、好きなタイミングで手を繋ぎなさい。驚かれるかもしれないけど、そこでその男の器や力量がわかるわ。歩幅を合わせてくれるようなら男として合格よ」


「はい………がんばってみます!」


 恋愛の先輩からの大事なアドバイスを真摯に受け止めるマミー。奥手な彼女はこのアドバイスを活かせるのだろうか。

 マミーが話したかった事は恋愛相談でした!花子さんや口裂け女では得られない人妻のアドバイスが欲しかったんですねぇ。とりあえず、マミーの恋愛的な次の目標は手を繋ぐ………その前に並んで歩くですかね(^_^;) それでは

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