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ぼくと花子さん  作者: 大器晩成の凡人
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80話 ぼくと花子さんと赤紙青紙

 さぁ、今回もトイレの外で物語が展開しそうな予感。何故なら、主人公のぼくがすでに町中で異様な存在を目撃してしまっているからだ。


(あの人って確か赤紙青紙さんだっけ?)


 ぼくの視線の先には腕だけの“何か”が佇んでいた。それは美術的なオブジェなどではない。五本の指を足のように使い人目を(はばか)らず動き回る“何か”は恐らく普通の人には見えていない。だが、霊感を持っているぼくにはハッキリとその姿が見えている。


 そして、普通の人には見えないからこそ行き交う人達はその“何か”を避けずに歩く。“何か”は必死で向かってくる人達を避けている。


(なんか危なっかしいなぁ。助けてあげよ)


 ぼくは“何か”に近づき靴の紐を結ぶフリをして“何か”を掴む。


「ちょっと!なにするの!?」


 “何か”は驚いた様子で暴れる。


(危ないから暴れないでください。人が少ない安全な場所に行きますから、それまで大人しくして下さい)


 ぼくは“何か”の耳元……親指の付け根辺りで囁いた。


「ふぅ、ここなら人もあまり来なさそうだし安全ですよ」


「……ありがとうございます。あなた、私の事が見えてるの?」


「はい。えっと赤紙青紙さんですよね?ぼくのこと覚えてませんか?」


 ぼくは過去に花子さんのトイレで赤紙青紙と遭遇している。それっきり会った事はないが、ぼくの記憶にはハッキリと残っている。


「なに?そういうナンパ?確かに私は赤紙青紙だけど、あなたとは初対面よ」


 赤紙青紙の方はぼくの事を知らないらしい。


(あれ?単純にぼくの事を忘れてるのかな?まぁ、ぼくと会話はしてないし当然か………でも、あの時に見た赤紙青紙さんとは何か違う気がする)


 ぼくは違和感を確かめる為に赤紙青紙を観察する。


(なんか、あの時より見た目がスラーッとしてるような……)


「やっぱりナンパなのね!だけど、私には夫が居るの!他を当たってもらえる?」


 赤紙青紙が大事な事を言った気がするが、集中するぼくの耳には届かない。


(あの時は細かい部分を見れなかったけど……たぶん、そうだ!)


「聞いてるの?」


「え?あ、ごめんなさい」


 ようやく赤紙青紙の声が届いたぼくは反射的に謝った。


「私はもう行くわよ!一応、お礼は言っておくわ。ありがとう」


「あの!待ってください!」


「なに?」


「あの……前より綺麗になりました?」


 ぼくが気づいた違和感はこれだった。


「ほら、やっぱりナンパね」


「いえ、そうじゃないんですけど……前に見た時より細くスラーッとしてて指もですけど、爪も手入れされてて綺麗だなって」


「あら♪女性の褒め方をよくわかってるじゃない♪でも、さっきも言った通り私には夫が居るの。諦めてちょうだい」


「結婚してるんですか!?そういえば、声もあの時と違いますね」


 ぼくが過去に目撃した赤紙青紙は男性の声だった。それに口調も違う。


「あなた、もしかして、あの人と会ったの!?」


「えっと、確認したいんですけど、あの人って誰ですか?」


「赤紙青紙よ」


 目の前に居る赤紙青紙が言う“あの人”とは赤紙青紙らしい。


「んー、あなたは赤紙青紙さんですよね?」


「ええ、そうよ」


「んん?」


「ごめんね、混乱するわよね。私は女の赤紙青紙なのよ。たぶん、あなたが会った赤紙青紙は男なのよ」


 目の前の赤紙青紙は赤紙青紙を探していて過去に目撃した赤紙青紙は男性で目の前に居る赤紙青紙は女性……徐々に会話が食い違っていた理由が解けつつある。


「それじゃあ、男の方の赤紙青紙さんがあかが……あなたの旦那さんなんですか?」


「そうよ。私とあの人は二人で赤紙青紙なのよ。ちなみにあの人は右腕で私は左腕よ」


「ホントだ。あれ?でも、今はなんで一人なんですか?」


「ケンカ……したのよ」


 表情はわからないが手が垂れ下がり項垂(うなだ)れているように見える。


「あの、ぼくも一緒に探しましょうか?」


「有難いけど、なんでそんな親切なの?」


 初対面という事もあり警戒している。


「んーと、正直に言うとただの好奇心ですね」


「好奇心……変わり者ね」


 警戒心が解けず赤紙青紙(妻)はぼくに背を……手の甲を向ける。


「それにさっきみたいな人混みだと移動が大変ですよ。ぼくと一緒なら、ちょっとは楽になると思います!」


「……それもそうね。いいわ、一緒に探しましょう」


 ぼくのプレゼンは功を奏し一緒に行動する事になった。


「じゃあ、行きましょうか。どこを探しますか?」


「私とあの人はトイレで人を脅かすから、とりあえず、トイレかしらね」


「わかりました!」


「ちょっと待って!」


 とりあえず、トイレを探す事になったが、歩き出すぼくを赤紙青紙(妻)は呼び止める。


「どうしました?」


「あの……その………」


 赤紙青紙(妻)は人指し指で中指を掻いている。人間で言うと照れて頬を掻いているようなものだろうか。


「どうしました?」


「笑わないでよ?」


「は、はい」


 言いづらい事なのか前置きをする。


「手、手を繋いでくれる?」


「手……ですか?いいですよ」


 予想外の提案に一瞬間が空いたがぼくは手を差し出す。


「ありがとう。あ!でも、恋人繋ぎはダメよ?それはあの人とだけなんだから!」


「恋人繋ぎってなんですか?」


「恋人繋ぎってのは……こうやって、こんな風に手を繋ぐ事よ」


 ぼくに恋人繋ぎをレクチャー。


「って、なんて事させるのよ!」


「あ、ごめんなさい」


 ぼくは反射的に謝っていた。


「えっと、それじゃあ、普通に手を繋いで行きましょうか」


「ええ。変な気は起こさないでよ?」


 人妻(?)だからか警戒しながら、ぼくと手を繋ぎ赤紙青紙(夫)の捜索を開始した。

 まさかスポットが当たるとは思ってもみなかった赤紙青紙の話です!どんな展開、どんなキャラ達が絡んで来るのか楽しみにしててください♪

 それと最近、更新頻度が減り申し訳ない(;_;) 仕事のトラブルや風邪をこじらせてしまいヤバかったのです。下手したら、更新頻度を週1回に減らすかもしれません。重ねて申し訳ないです。 それでは

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