表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくと花子さん  作者: 大器晩成の凡人
126/152

77話 ぼくと花子さんと濡れ女⑪

 〜前回のあらすじ〜


 体を使って好きを伝える方法を覚えたゆきおんな。そして、メンバーが一人増え最終目的地のカキ氷店へ。

「周りに人は……居ませんね」


 ぼくは周りを見回し近くにぼく達以外に人が居ない事を確認。今からコックリさんから渡された御札を使い次の目的地のかき氷専門店をめざすのだが、その移動方法は異空間に入り移動するという方法なのだ。それを一般の人に見られるのはマズイし、入られるのはもっとマズイ。だから、ぼくは細心の注意を払う。


「じゃあ、道を開けますね」


 ぼくは御札を手に取り念じる。すると目の前の空間に穴が開いた。その穴の先は真っ暗闇。


「行きましょう」


 その暗闇に臆する事なく足を踏み入れるぼく。手を繋ぐゆきおんなは手を引かれついてくる。実に慣れたものだ。恐らく、この場に居る4人の中で一番この暗闇の中を経験しているからだろう。


「なんか、暗くて怖そぅ」


「お、お菊ちゃん、手繋ご!」


「はい!」


 口裂け女とお菊も手を繋ぎ後に続く。


「そういえば、ゆきおんなさんはどこに住んでるんですか?」


「山」


 川……おっと、違う。世代によっては山と言われれば反射的に川と答えてしまうだろう。ただ、ゆきおんなの言った『山』は合言葉的なものではなく、ぼくの質問に答えただけなのだ。


「えっと、どこの山ですか?」


「………どこだろう?」


 説明が苦手なだけなのか本人もわからないらしい。


「んー…あ!もしかして、“ゆきおんなの山”ですか?」


「私の山じゃないよ」


「そうじゃなくて、えーとですね、学校から見える山があってですね、その山は夏でも頂上付近の雪が溶けない事からゆきおんなが住んでるじゃないかって学校七不思議にあるんです」


 その七不思議は学校の正面、約10キロ程先に山があり、その山はぼくが説明した通り雪が年中溶けずに残っている。ここで気になるのは学校の外にある山がなぜ学校七不思議に名を連ねているのか、諸説あるが[学校からでも見える不思議な現象だから]というのが一番有力だ。


「うん、たぶん、その山」


「へぇ、あの山に住んでるんですか……って、あんな遠くから来たんですか!?」


「うん」


 至って普通に答えた。約10キロ、それだけの距離を移動するとなれば徒歩だと2時間近く掛かるのではないだろうか。


「徒歩でですか?」


 歩けない距離ではないが、日常でもそうそう歩くような距離でもない。ぼくは念の為に尋ねる。


「でんぐり返し……それから歩いた」


 やはりそうだ。約10キロの道のりを徒歩だと大変だ。他に別の楽な移動手段があったのだ。それが………でんぐり返し


「あの…でんぐり返しって?」


 移動手段がでんぐり返しなんて聞いた事がない。ゆきおんなの言葉ではその後は徒歩に切り替えたみたいだが、でんぐり返しが飽きたのか、それとも効率が悪い事に気づいたのか謎が多い。そもそも何故でんぐり返しなのか……彼女の説明を待つしかない。


「頂上から、でんぐり返ししたら雪玉になって町まで簡単に下りられる」


 つまり、雪が残ってる頂上から転がる事で自分の体に雪を纏い、それが球状になっていき麓の町まで楽に下りられる。そうすれば、学校までの距離が半分くらい稼げる。そこから徒歩に切り替えたのだろう。


「そういう事ですか」


 真っ暗闇の中、ぼくとゆきおんなは普通に会話をするが対照的に口裂け女とお菊ペアはオドオドと周りを警戒しながら歩く。最初は手を繋いでいたが、今は抱き合いながら歩いている。


「お菊ちゃん、絶対離れないでね」


「わかってますぅ、口裂けさんも離れないでください」


 ガシャーンッ


「きゃっ!今の音はなに?」


「わ、わからないですぅ」


 何かが割れる音に2人は怯えるが、周りには暗闇が広がっているだけで何もない。


 ガシャーンッ ガシャーンッ


「また聞こえたよ~」


「こ、怖いですぅ」


 再び鳴った音に2人は立ち止まり後ろを振り返るが、そこには何もない。何かが割れた音はたしかに聞こえた。それなのに割れたであろう物はどこにも見当たらない。


「どうしよ~、お菊ちゃん?」


「見えない何かがついて来てるんでしょうか?」


 ふと口にした言葉に臆病な2人は顔を見合わせる。想像力とは何かを作る時に非常に役に立つ。だが時折、恐怖心を掻き立てる事がある。今の場合で言うとお菊がふと口にした『見えない何か』だ。何か不思議な現象が起きている。それを想像力で補完すると見えない“何か”がいるになってしまうのだ。想像力で作り出した“何か”は得体が知れない。これは心霊現象でも初歩的な恐怖と言えるだろう。


「きゃああああ~」

「きゃあああぁぁ」


 ガシャーンッ ガシャーンッ ガシャーンッ ガシャーンッ ガシャーンッ ガシャーンッ


 臆病2人は全速力で走る。それでも背後から“何か”が割れる音は絶えず2人を追いかけてくる。冷静になれば大した事は起きてないのだが、臆病な2人がペアを組んでしまったのが悪かった。片方が不安になれば伝染し、もう片方も不安になる。またそれが伝染し不安が膨張、そしてパニックに陥る。


「お菊ちゃん、あれ!」


「光ですぅ」


 走る2人の前方に光が見える。それはこの暗闇の出口だ。


「はぁ、はぁ、はぁ、助かった~」


「はい、もう追いかけて来ないですね」


 2人は息を切らし恐怖から逃げ切った事に安堵。


「2人共、急に走らないでくださいよ」


 臆病2人組に遅れてぼくとゆきおんなが暗闇から脱出。


「だって、何かが追いかけて来たんだよ~」


「何も居ませんでしたよ」


 口裂け女は必死に訴えるがぼくが見たのは走る2人と落ちて割れ手元に戻り無限リロードされるお菊の皿だけだった。

 ゆきおんなちゃんは住処の山から麓まで降りるのにコロコロ雪玉になって移動するみたいです。なんか可愛いですね(*´∀`*) それと[ゆきおんなの山]がなぜ学校の七不思議になったのか、その経緯もいつか書きたいと思ってます!今は骨組みだけの構想段階なので、いずれになりますが。 それでは

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ