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ぼくと花子さん  作者: 大器晩成の凡人
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74話 ぼくと花子さんと濡れ女⑧

 〜前回のあらすじ〜


 偶然にも先生カップルと見る映画が同じ、そして座席も隣だったぼくとゆきおんな。映画を見終えたぼく達は次のデートプランへ

「よ~し、洋服見に行こ~♪」


「張り切ってますね。口裂け女さん」


「うん♪」


 次の目当てはショッピング。ぼくと口裂け女のデートと錯覚してしまいそうだが、ぼくの片手はゆきおんなとしっかり手を繋ぎデート継続中である。


「ゆきおんなさんは洋服以外に見たい物とかありますか?」


「ない」


「じゃあ、洋服売り場に直行だね♪」


 口裂け女は先導するようにぼくとゆきおんなの前を歩き出す。その後を2人は手を繋ぎついていく。


「あれ、なに?」


 洋服売り場へ向かう途中、ゆきおんなは立ち止まり、ある場所に興味を示した。手を繋いでいたぼくも必然的に足を止める事になるが、それに気づかない口裂け女は1人だけ先へ進む。


「あ!え、えーと、あれはゲームセンターです」


 先に進む口裂け女を気にしつつ説明する。


「興味あります?」


「うん」


「じゃあ、ここで遊びましょう」


 せっかく、ゆきおんなが興味を示したのだ。応えてあげなくてはならない。そもそも今回のデート相手はゆきおんななのだから優先順位は最上位なのだ。


(口裂け女さん、ごめんなさい)


 ぼくはスキップしながら遠ざかる口裂け女に心の中で謝った。


 ゲームセンターは前に玉藻前とデートしたゲームセンターとは違い、メダルゲームやUFOキャッチャーなど家族連れでも入りやすいゲームばかりだ。


「どのゲームします?」


「これ」


 ゆきおんなが選んだゲームはいつの時代から存在してるのかわからない、じゃんけんゲームだった。


「やり方わかります?」


「ううん」


 首を横に振る。


「これはですね、お金を入れるとじゃんけんが始まるんです。ここにグー、チョキ、パーの3つのボタンがあるんでボタン押してじゃんけんに勝てばいいゲームです」


 単純なゲーム性、低予算で遊べる。だが、難易度は中々に侮れない。


「やってみる」


 投入口にお金を入れる。


『じゃんけん…』


 すぐにじゃんけんが始まった。ゆきおんなはどれを出すか思考中。そして、ボタンを押す。


『ぽん』


 ゆきおんなが押したのはパーのボタン、ゲーム機はチョキ、負けた。


『ずこー』


「……負け?」


 勝敗の呆気なさに負けたのが理解出来なかったのだろうか、ぼくに尋ねた。


「負けですね」


 すると無言でお金を入れ再挑戦。


『じゃんけん…ぽん、あいこで…』


 二度目の挑戦、初手はあいこ、勝てるか…


『しょ、ずこー』


 負けてしまった。負けたゆきおんなは体が小刻みに震えている。


(ゆきおんなさん、もしかして負けて悔しいのかな?)


 その様子に気づいたぼくは心配そうに様子を見てると


「ふふふ」


 笑っていた。口を開けずに笑う姿は彼女らしい、おしとやかな笑い方だ。


(ゆきおんなさん、笑ってる!)


 ぼくはその光景を無言で見つめる。笑ってる事を指摘してしまったら、その珍しい光景が突如終わってしまうかもしれないからだ。


 そして、ゆきおんなはまたじゃんけんに挑戦。


『じゃんけん、ぽん、あいこで、しょ、ずこー』


「ふふふふふ」


 負けても楽しそうだ。そして、続けて挑戦。


『じゃんけん、ぽん、ずこー』


「………」


 笑いが収まってしまった。


(あれ、飽きちゃったのかな?)


 だが、じゃんけんはまだ続く。


『じゃんけん、ぽん、あいこで、しょ、ずこー』


「ふふふふ」


 再び笑いが込み上げてくる。ゆきおんなはぼくの事をそっちのけでじゃんけんを続ける。するとぼくはある事に気づいた。


(もしかして、ゆきおんなさん、あいこになる時だけ笑ってる?)


 その仮説に行き着いたぼくは観察していると、あいこの後に負けが2連続。そして、次の挑戦は…


『じゃんけん、ぽん、あいこで、しょ、ずこー』


 3連続あいこの後に負け。


「ふふふ……あはははは」


 とうとう口を開けて笑い出すゆきおんな。笑いの頂点に達したのだろう。その証拠に目から涙が、笑い泣きだ。


「ゆきおんなさん、面白かったですか?」


 十分、珍しい光景を目に焼き付けたぼくは感想を尋ねる。


「うん、あいこで、しょ、ずこー。面白い」


 てっきり、あいこになったのが面白いのかと思ったら、あいこからのずこーの流れが面白かったらしい。


「まだやります?」


「もういい」


 結局、一度も勝てなかったが、本人が十分楽しめたようなので、じゃんけんゲームとはお別れだ。


『ありがとう』


 歩くぼくとゆきおんなに礼を言った謎の声。その声に気づく事なく2人はその場から立ち去った。


「次はなにします?」


 ぼくは口裂け女の事を忘れて次に遊ぶゲームを尋ねる。


「これ、気になる」


 これまた昔からあるワニを撃退するゲーム。


「ワニがパニックになるの?」


「たぶん、パニックになるのは人の方だと思います」


 素朴な疑問にぼくは冷静に答えた。


「これはどうすればいい?」


「これはですね…これを使うんです!」


 ぼくはゲーム機に備え付けられたハンマーを手に取る。


「これで出てきたワニを叩くゲームです」


「一緒にやろ」


 ゆきおんなはもう1つのハンマーを手に取り共闘を提案。


「いいですね!最高得点目指しましょう!」


「うん」


 ゆきおんなはお金を入れゲームスタート。早速、ワニが飛び出してくる。


「これ叩いていいの?」


 あまりにも無防備なワニの襲来にぼくに尋ねる。


「はい、叩いてください」


『イテッ』


 ゆきおんながハンマーで叩くと声を上げ引っ込んでいった。


「そうやってワニを撃退するんです」


「わかった」


 遊び方を理解したゆきおんな、ぼくと共に順調に撃退していくが、順調なのはワニ達がまだ本気を出してないからだ。このゲームの終盤、ワニ達は怒り本気を出す。そこからが最高得点を取れるかどうかの正念場である。


(そろそろ怒りそうだな)


 するとワニ達は全員閉じ籠った。


「ワニ、どうしたの?」


 初見のゆきおんなには何が起ころうとしてるのかわからない。これは嵐の前の静けさというやつだ。この後、ワニ達は『もう怒ったぞー』と言葉を発し、それをキッカケに動きが格段に向上する。一時、閉じ籠ってるのはプレイヤーに体勢を整えさせるというような優しさではない。ワニ達は隊列を整え虎視眈々と襲撃の機を狙っているのだ。実に統率されたワニ達なのである。


「今からワニが『もう怒ったぞー』って言って本気出して来ますよ」


 ぼくはこの後に起きる事を伝えた。


「…っ」


 すると突然、ゆきおんなは左手でぼくの右手首を掴む。ぼくは大多数の人と同じ右利きだ。故に攻撃手段のハンマーを持つ手も右手なのだ。今現在、その右手を封じられてしまった。今にもワニ達は襲撃の合図のあの言葉を言いそうだ……


「も~怒ったよ~」


 そう、これだ。襲撃の合図…いや、違う。ワニの代わりに口裂け女がゲーム機からひょっこり頭だけ出してきた。


「っ!」


 ゆきおんなはハンマーを振りかぶるが手を滑らせ落としてしまう。攻撃手段のハンマー無くしても苦渋の選択でワニと素手で戦う人はたまにいる。※ゲームの話です。


 ゆきおんなもそうせざるを得なくなりチョップを繰り出す。


「んっんっんっ」


「イテッイテッイテッ」


 しかし、攻撃対象は口裂け女のみ。ぼくは戦意喪失というか呆気に取られてというか、ただただ、その光景を眺めていた。


 ゲーム終了。終盤に得点を稼げず最高得点には程遠い。


 そして、注意事項、確かに素手でワニと戦う人はたまに居るが、皆さんはなるべく備え付けられたハンマーで戦ってほしい。手をケガしてしまう可能性があるし、ワニが可哀想でもある。ハンマーで叩くのも同じだと思う人も居るだろうが、ハンマーは叩いても痛くないようにクッションのような柔らかい素材で出来ている。だから、なるべくハンマーで行儀よくワニと戦ってほしい。※ゲームの話です。


「今日のゆきちゃんはドSだよ~」


 何度も叩かれた頭を押さえながらゲーム機から出てくる口裂け女。


「びっくりした」


 ぼくのワニが本気を出すという説明で緊張し、その直後に不意に口裂け女が登場した事で驚いたという経緯なのだろう。決して、ゆきおんながサディスティックな訳ではない。


「なんでそんな所から出て来たんですか?」


「…ふ~んだ!」


 ぼくの質問にそっぽを向く口裂け女、拗ねておられる。


「怒って…ますよね?」


「2人だけで遊んでズルい!」


「口裂け女、服見に行こ」


「……うん」


 ゆきおんなの言葉で落ち着いた口裂け女。3人は洋服売り場を目指す。

 今回は昔懐かしいゲーム機が出てきましたが、今もあるのかなと思いながら書いてました(^_^;) ワニの方はありそうですが、じゃんけんゲームは無いかもですね。下手したら今の若い子は知らなかったりするんですかね? それでは

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