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ぼくと花子さん  作者: 大器晩成の凡人
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71話 ぼくと花子さんと濡れ女⑤

 〜前回のあらすじ〜


 暑さが苦手のゆきおんなの移動手段に悩んでた一同。そんな悩みもコックリさん召喚で一発解決! そして、デート開始……

「なんか怖いね~」


 暗闇の中を歩く3人。ソワソワと落ち着かない様子の口裂け女。ぼくは何度かこの空間を移動した事があるので平然と歩く。ゆきおんなは怖いという感情があるのか不明だが同じように平然と歩く。


「ゆきちゃん、私も手繋いでいい?」


「うん」


「やった♪」


 口裂け女は『私も』と言った事でわかるようにゆきおんなは既に他の誰かと手を繋いでいる。その相手はぼくだ。


 口裂け女がゆきおんなに頼んだのには理由がある。それは幽霊は生きてる人間に触れないからだ。逆も然り。暗闇の中を左からぼく、ゆきおんな、口裂け女の順で横並びに歩く。残念ながら見た目的な意味で両手に華という構図は成立しなかった。それでも言葉の意味としては両手に華なのは間違いない。


「あっ!光が見えて来ましたよ」


 ぼくは前方に見える光を指差す。


「ホントだ~、行こ♪」


 手を繋いだまま走り出す口裂け女。そのせいで引っ張られる形でぼくとゆきおんなも走る。そして、3人は光を潜り抜けると


「車…いっぱい」


 暗闇を抜けて最初に発言したのはゆきおんなだった。


「駐車場だね~」


「ですね」


 そこはデパート上階にある駐車場だった。なぜここなのか…恐らく、デパートの駐車場では人が滞留する事は少ない。つまり、人目につかず騒ぎになる可能性が低い。それを見越しての事だろう。


「それじゃ、入ろっか」


 口裂け女の言葉で3人仲良く手を繋いで入店。入店するとそこはほとんど何もない。あるのはエレベーターと階段のみ。


「口裂け女、手放して」


 恐らく、今ゆきおんなは人に見える状態だろう、逆に口裂け女は見えない状態。そんな状態で手を繋いで歩くと違和感に気づく人が出てきてもおかしくない。そのための提案なのかもしれない。


 では、口裂け女も見える状態になればいいと思うかもしれないが、彼女は目立つ、いくら可愛らしくても目立ってしまう可能性が高い。それに彼女自信もこの後にやりたい事があるので見える状態になるという選択はしない。


「え~、繋いでいようよ~」


「………」


「きゃっ!冷たい!」


 口裂け女は繋いでいた手を放した。目を疑う光景だ。彼女の言葉が本当ならば、ゆきおんなに拒絶されたという事なのだから


「ゆきちゃん、ごめ~ん」


 口裂け女は謝罪と反省。


「エレベーターのボタン押しますね」


 2人のやりとりに驚きつつエレベーターを呼び出すために[↓]のマークを押そうとすると


「待って、私がやる」


 ゆきおんなに制止された。彼女が押すらしい。


 ポチッ


 しばらく待っていると


 チンッ


 エレベーター到着。


「乗りましょうか」


「うん」


「は~い」


 3人はエレベーターへ。


「えっと、最初は映画ですけど…」


「任せて」


 そう言うと③と書かれたボタンを押す。


「どう?」


 なぜか感想を聞かれた。その表情は自信たっぷりと言わんばかりのドヤ顔をしてた…気がする。


「もしかしてですけど、口裂け女さんと手を放したのはボタンを押す為だったんですか?」


「うん。どう?」


「えーと…」


 ぼくは言葉が出ない。


「私、うまくエスコート出来てる?」


 言葉が出ないぼくを見て具体的な質問をしてきた。


「え?あ、はい!」


 質問に答えたぼくだが、これでも男だ。デートでエスコートされる事に抵抗を感じ


「あの、そういうのはぼくがしますよ」


「どうして?やっぱり…ダメだった?」


 表情は全く変わらないが、その声には悲しさを感じた…気がしたぼくは


「いえ、このままお願いします」


 ゆきおんなのエスコートを受ける事にした。


 チンッ


 ちょうど3階に着いた。


「着きましたね。映画館はどこでしょうか?」


「来て」


 言葉足らずな所はあるが、積極的にエスコートを開始。


「これ」


 辿り着いたのはフロアマップ前だった。


「フロアマップ……あ、これで探すんですね!」


 てっきり、そのまま映画館まで案内されると思っていたぼくは一瞬沈黙はあったものの、その沈黙がなんの沈黙だったのか悟られない為に慌てて言葉を出した。彼女を悲しませない為にはこれくらいの気配りが必要…なのだと思う。


「んー」


 幸い彼女はフロアマップとにらめっこに集中していた。ぼくの気配りは不要だったと見える。


「あった」


 ゆきおんなはフロアマップに映画館の場所を見つけそこを指差す。見つけたのが嬉しかったのか、いつも出す声よりワントーン明るく聞こえた…気がする。


「ありましたね。でも、ぼく達は今どこにいるんだろう?」


「それもこれでわかる」


 フロアマップには大抵、いま居る場所を[現在地]と表示されている。次はそれを探す。


「ありました!」


 ぼくは[現在地]と書かれた場所を見つけた。それは先程見つけた映画館のすぐ近く…目と鼻の先…灯台下暗し。


「もしかして…」


 ぼくは後ろを振り返る。そこには、最新映画のポスターなどがズラリと並び、これでもかってくらいの映画館が存在した。


「あった…ね」


 特に悔しがったり恥ずかしがったりする素振りは無く、映画館の存在を受け入れたゆきおんな。


「えへへ~、私は気づいてたよ~♪ゆきちゃんが真剣だから黙ってたんだ~」


「口裂け女、こっち来て」


「なになに~?」


 手招きされゆきおんなに近寄る口裂け女。


「しゃがんで」


「うん♪」


 言われるがままに言う事を聞く口裂け女。


 ペタッ


「冷た~い!」


 ゆきおんなは口裂け女の首に触れた。冷たく感じたという事はどちらかが怒りなどの負の感情を抱いた事になる。口裂け女が?…いや、それはないだろう。


「今日のゆきちゃんはSだよ~」


「行こ」


 ゆきおんなはぼくの手を引き映画館へ。


「あ~待って~」


 その後を追いかける口裂け女。

 なんとかデート開始しましたねぇ。念の為、補足ですけど、ゆきおんなは口裂け女の事を嫌いになったわけじゃないですよ。仲良い友達でも鬱陶しくなることあるじゃないですか。それです!二度目のは悔しかったからです。ゆきおんなもちゃんと感情があるということです! それでは

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