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ぼくと花子さん  作者: 大器晩成の凡人
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69話 ぼくと花子さんと濡れ女③

 〜前回のあらすじ〜


 普段は見せない無邪気な可愛さを爆発させたゆきおんな。だが、原因が不明なまま元に戻ってしまった。

「あれ、戻っちゃいました?」


「ざーんねん、戻ったみたいね」


「戻っちゃったね~」


 通常のゆきおんなに戻ってしまい3人は残念がる。


「それで?なにがあったのよ?」


 花子さんが話を切り出した。


「遊びに来た」


「そうじゃなくて、なんで全身ずぶ濡れだったのかって聞いてるのよ」


「暑かったから」


「答えになってないわよ!暑いから水浴びでもしてきたってわけ?」


 中々、明解な返答が返って来ず苛立つ。


「ううん、暑かったから雪だるまになって移動した」


「……はぁ?」


 花子さんは理解しかねる様子。


「あっ!ニュースでやってた雪だるまの正体ってゆきおんなさんなんじゃないですか?」


「ああ、そんなこと言ってたわね」


 花子さんに着ぐるみだと一蹴されたが、あながち間違いではなかった。


「?」


 ゆきおんなは首を傾げる。


「ゆきちゃん、テレビで大騒ぎだったんだよ~」


 軽く説明する。


「それにしても、あんたがこんな時期に来るなんて珍しいわね」


 現在は5月、ゆきおんなは暑いのが苦手という理由で12月~3月の間にしか出歩かない。それ以外は住処の山に引き籠っている。


「うん。こんなに暑いとは思ってなかったから雪だるま作って、その中に入って歩いてたけど溶けちゃった」


 これでずぶ濡れの謎に答えが出た。


「きみ、遊ぼ」


 ゆきおんなはぼくの手を掴んだ。彼女にとって肌と肌の直接接触には大きな意味を持つ。彼女に対して恐怖や怒り、ネガティブな感情を持った人が彼女に触れると凍ってしまうのではないかと思う程の冷たさを感じる。その逆も然り、いくら彼女の事を好意的に思っていても彼女が拒絶すれば同じ結果になる。これは彼女自身でコントロール出来るものではなく花子さんがトイレから出られないのと同じように体質による起因である。


「はい」


 手を掴まれたぼくは快く承諾。まるで冷たさを感じてないように見える…いや、実際に冷たさを感じてないのだ。これは互いを好意的に思っているからこそなのだ。体質上、相手の感情に敏感なゆきおんなにとってぼくの存在は貴重だ。


「あんたに会いに暑いのをガマンして、ここまで来たみたいよ。罪な男になったわねぇ」


 花子さんは目を細めぼくを見つめる。からかう時の目だ。


「前は玉ちゃんとデートして今回はゆきちゃん。モテモテだね~少年♪」


「からかわないでください。それにゆきおんなさんはぼく達と遊びに来たんですよ。そうですよね?」


「デー…ト?」


 ぼくは同意を求めたが、ゆきおんなはデートという言葉に反応。


「うん!前ね、玉ちゃんとデートしてきたんだって~」


「………私もデートする」


 デートに興味を持ってしまった。


「フフフ、やる事が決まったみたいね」


 花子さんはイタズラっぽく言う。


「いいな~」


「口裂け女も一緒に行く?」


 ゆきおんなは羨ましがる口裂け女を誘う。


「いいの!」


「うん」


 ゆきおんなは頷く。


「あ、でも花ちゃんが…」


「なに気を遣ってんのよ」


「だって、花ちゃんだけ仲間ハズレになっちゃうし」


「私は体質的なのがあるから気にしないわよ。むしろ私を気遣って行かないって事になったら私の方が負い目を感じるでしょ!それでもまだ気遣う素振りを見せたら尻叩き100回だからね!」


 花子さんの言葉を要約すると[自分の事は気にしないで遊んで来なさい、さもないと痛い目に遭わすわよ]。この言葉は強がりという言葉で片付けるには勿体ない。これはツンデレ…ツンデレなのだ。


「ひゃっかい!う~わかった」


 思わず両手でお尻を隠しながら答える口裂け女。


「あの、デートって言ってもなにします?」


「う~ん、定番は映画や食事にショッピングかな~」


 ぼくの質問に口裂け女は答えるが


「うーん、お金が…」


 小学生の金銭事情でそれ全てをやるとなると厳しいものがある。


「大丈夫!私、幽霊だから食事は必要ないし、服とかも触るだけで欲しい服に着替えられるし、映画館も顔パスだよ」


 たしかに食事は不要、服は幽霊のご都合的な能力で心配はない、普通の人には見えない上に物をすり抜けられるので映画館には入りたい放題。だが、ぼくはそこを心配しているのではない。自分自身の分だけでも足りるかが怪しいのだ。


「私が全部出すから大丈夫」


 そんな頼もしい発言をしたのはゆきおんな。彼女は能力でかき氷を作り、それを売って金銭を得ている。ちなみに自分の作るかき氷に自信があるらしく素材本来の味を味わってもらうため種類は1種類…味無しかき氷である。だが、味がないにも関わらずリピーターが続出する程の絶品なのだ。


「え、でも…」


 ぼくは小学生とはいえ男だ。デート相手にお金を出させるのには抵抗があった。


「いや…なの?」


 ゆきおんなは不安そうに尋ねた…気がする。


「いえ…助かります」


 ゆきおんな…やはり、彼女を悲しませるような事は出来ないぼくは提案を受け入れる。


「あらあら、女にお金を出してもらうなんて将来が楽しみね」


「むぅ」


 花子さんの言葉にぼくは頬を膨らませる。


「イジワル花ちゃんは放っておいて行こ~♪」


 さっきまで気遣っていた口裂け女だが、吹っ切れたようだ。


「ちょっと待ちなさい!」


 いざ出発というところで花子さんに呼び止められた。


「暑さで大変な事になったの忘れたの?それとあんた、こっちに来なさい」


「なになに~?」


 手招きされた口裂け女は花子さんのもとへ。


 スパーンッ


「きゃう~ん」


 お尻を叩かれた。


「なんでお尻叩くの~」


「調子に乗ったからよ。それで、ゆき、あんたどうやって移動するの?雪だるまになって歩いたら来た時と同じ事になるわよ」


「どうしたらいい?」


 本人も考えてなかったらしく聞き返す。デート開始まではもう少し時間が掛かりそうだ。

 玉藻前に続き、今度はゆきおんなとのデートです!もちろん、これからいろいろ起きます!楽しみにしててください。 それでは

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