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ぼくと花子さん  作者: 大器晩成の凡人
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65話 ぼくと花子さんと玉藻前⑧

 花子さんとの和解の為、旧校舎を目指すぼくと玉藻前。その道中、去年までぼくの担任を務めていた一先生と遭遇。ちょっとした失言で命を失いかけた先生は気を利かせ爽やかに立ち去って行った。

「学校に着きましたね」


「のじゃ!」


 旧校舎を目指す2人は学校の正門前に居た。


「なぜ入らないのじゃ?」


「あの…今の玉藻前さんって見える状態ですか?」


「見える状態とはなにかえ?」


 幽霊や妖怪は霊感が無い人の為に姿を見えるようにしたり見えないようにしたりする事が出来る。ぼくは霊感があるらしく見えない状態の幽霊や妖怪も普通に見えてしまうため本人に確認するしかないのだ。


「幽霊や妖怪って普通の人に見えないように姿を消せるじゃないですか」


「そうなのかえ?妾はそのような小細工など使った事ないのじゃ」


 何かを隠してるという様子はない。


「じゃあ、普段はどうしてるんですか?正直、玉藻前さんの外見は目立ちますし」


「たしかに話し掛けられる事は多いのぉ、じゃが、煩わしくなった時は人除けの術を使うから問題ないのじゃ」


「人除けの術……どんな効果があるんですか?」


「んー、人の子に妾の存在を知覚出来なくする術じゃの。じゃが、童は妾を見つけてくれた」


 彼女はぼくの頬に優しく触れる。彼女の発言からぼくと遭遇した時は人除けの術を使っていたらしい。だが、ぼくが彼女を見つける事が出来たのはロマンチックな理由ではなく霊感だろう。


「そ、それじゃあ、その人除けの術で学校に入りましょう」


「わかったのじゃ………よいぞ」


 特に呪文など唱えたり、なにかしらの動作があった訳ではないが人除けの術は発動したらしい。それほど彼女にとっては簡単な術なのだろう。


「行きましょうか」


「のじゃ」


 ぼくと彼女は学校へ入ると早速、数メートル先に教職員が…ぼくに緊張が走る。


「こ、こんにちは」


「はい、こんにちは」


 すれ違う時に挨拶。教職員も笑顔で挨拶を返した。彼女に一切視線を向ける事はなかった。


「どうじゃ?」


 彼女は自分の術の感想を求める。


「すごいです!」


「であろう♪」


 誇らしげに喜ぶ。


「旧校舎…ですね」


「……じゃな」


 学校の生徒達にとって、旧校舎は恐怖の象徴。彼女にとっても同じである。


「行きますよ」


「ま、待っておくれ!」


「どうしました?」


「いや…その……じゃな…」


 落ち着かない様子の彼女、不安なのだろう。


「玉藻前さん!手を繋ぎましょう」


 ぼくは彼女の方へ手を差し伸べる。


「頼むのじゃ!」


 差し伸べられた手を握る。そして、2人は旧校舎へ。


「童の手は妾の不安を取り払う不思議な手なのじゃ♪」


「なんですか、それ?」


「妾をでぇとに誘った時も先のように手を差し伸べたじゃろう。掛けられた言葉も嬉しかったが、あの時の手も妾にとって嬉しかったのじゃ」


 彼女は嬉しそうに話す。ぼくはその言葉になにか返そうとしたが、ちょうど2階に到着したので


「こんにちは」


「廊下は走るなよ」


 いつも通りの用務員さんとの挨拶。


「わ、童よ!あの者」


「用務員さんですよ」


「あの者がそのような器で収まるはずなかろう……花子さんはそれほどまで…」


 どう見ても普通の人にしか見えない用務員さん…だが、彼女の目には違うように見えた。花子さんに対する恐怖が増してしまった。


 そして、遂に3階に到着。


「どうします?」


 花子さんの居る女子トイレ前でぼくは尋ねる。隣の男子トイレと違い出入り口にドアがあるので落ち着いて作戦会議が出来る。


「いきなり妾が出て来たら花子さんも警戒するかもしれぬ。なにより……花子さんが怖い…」


「そうですね…それじゃあ、最初はぼくがある程度、会話してから、いい雰囲気になったら呼びます」


「ありがとう…なのじゃ」


 彼女はトイレ内から見えないように少し後ろに下がる。そして、ぼくはトイレのドアを開ける。


「今日も来ましたよ」


「遅かったわね」


「キョウハ、コナイカトオモッタヨ。ショウネン」


 中にはいつも通りの2人。だが、何故か口裂け女の様子がおかしい。


「口裂け女さん、どうしたんですか?」


「ワタシハ、イツモトオナジダヨ。ナニモミテナイ、シラナイヨ」


 明らかに様子がおかしい。発言も何かを隠してると自白しているようなものだ。


「そいつは放っておきなさい。あんたは…1人?」


 いつも1人で訪れるぼくに対して今日に限って妙な質問をする。


(なんでそんな質問するんだろう?いや、今は和やかな雰囲気にしなきゃ!玉藻前さんのために)


 ぼくは今の状況を見透かされたような感覚に陥り一瞬動揺が表に出そうになったが、なんとか持ち堪えた。


「なんですか、その質問?1人ですよ」


「ふぅん、そう」


 疑うような視線でぼくを見つめる。


「花子さんもなんか変ですよ」


 ぼくは平静を装いカーペットの上に座る。


「あんた…困ってる事とかない?ここなら安全よ」


「?…最近、小遣いが足りないとかですかね」


「他には?」


 何かを探るように質問を続ける。


「あ!」


 ぼくは何かを思い出したような声を出す。


「なにかあるのね!助けてあげるわ。言いなさい」


 花子さんは真剣な表情。


「この前、久しぶりに二宮金次郎さんに会えたのに話できなかったなぁって」


「……ああもう、面倒だわ!」


 花子さんは急に頭を掻きむしる。


「廊下に居るんでしょ?キツネ女!」


「え!待ってください!花子さん」


 ぼくは彼女の存在がバレていた事に動揺する。


「あんたは下がってなさい!」


「違うんです…」


「花ちゃん、やめようよ~」


「大丈夫よ、まだ気づかれてないはず…」


 口裂け女の声でぼくの声が届かなかったのか、聞く耳を持ってくれない。


「出て来ないなら…ぶっつぶす!」


 強気な発言だが、花子さんの表情には焦りを感じる。いくら絶対無敵の花子さんでも廊下は範囲外。つまりハッタリが通じるかどうかの瀬戸際なのだ。


「ま、待っておくれ!妾は争いに来たのではない」


 逃げずに姿を現しトイレへ入る彼女。


「あんた、よく顔を出せたわね?それもこいつを連れ回すなんて…盾にでもする気だったわけ?」


「ちが…妾は……その」


 恐怖から上手く言葉が出ない。


「待ってください!玉藻前さんは仲直りしたくて来たんです」


 ぼくは彼女の前に立ち両手を広げる。それは彼女を守るという意思を体で表したものだ。その結果、ぼくと花子さんは睨み合う事になった。


「………はぁ、わかったわ」


 ピリついた空気が少し和らいだ。


「花子さん、ホント強引過ぎます」


「私はあんたがキツネ女に脅されてると思って……でも、ここに入っても、あんたが庇うんだもの信じてあげるわ」


 彼女が絶対無敵領域のトイレに足を踏み入れてもなお、ぼくが彼女を庇った事で疑いが晴れたようだ。これで落ち着いて話が出来るだろう。

 ようやく花子さんの出番です!口裂け女の様子も少し変ですが、それは【おまけ】の方で(*´∀`)

 それはさておき、皆さんは深夜に誰も居ないのにチリンチリンって鈴の音を聞いた事ありますか?私は今の玉藻前の話を書いてる時に聞いたんです。調べてみたら良い兆候とからしいです♪逆にシャンシャンはヤバいらしいです。他にもお稲荷様が祝福してるとか見た覚えがあります。悪いイメージが多い玉藻前こと九尾の狐を可愛く書いてるからですかね(〃∇〃) それでは

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