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ぼくと花子さん  作者: 大器晩成の凡人
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61話 ぼくと花子さんと玉藻前④

 デートの場所にゲームセンターを選んだぼく。デート相手の玉藻前は対戦型格闘ゲームをする事になるが対人戦で完敗。しかし、ぼくが仇討ちを果たし男としての株が上昇。

「ど、どこ行くのじゃ?」


 格闘ゲームで彼女の仇討ちに成功したぼくはトラブルになりそうな雰囲気を察し、急いで彼女と別の場所へ。


「ここまで来たら大丈夫かな、誰かわからないですけど怒ってましたね」


 笑い混じりで言うと


「そうであったな、ふふふ」


 彼女も口に手を当て笑い混じりで言った。


「先程のそなた、実に頼もしかった…」


 彼女はしゃがみぼくと目線の高さを合わせると右手でぼくの左頬に触れる。そして、頬を親指で撫でる。


「あの…」


「なんじゃ?」


 彼女は優しい微笑みをぼくに向ける。その大人の雰囲気にぼくは急に恥ずかしくなる。


「次はこのゲームしませんか!?」


 慌てて顔を逸らした先にあったのはガンシューティングゲーム。


「ふむ、これはどんなげぇむかえ?」


「これはですね、この銃を使って敵を倒すゲームです。さっきと違って対戦は無いですからイヤの思いはしませんよ」


 ぼくはハンドガン型のコントローラーを手に持ち解説。


「それに協力プレイが出来るのでぼくが玉藻前さんをフォロー出来ます!」


「ぷれい…ふぉろぉ?」


「2人で協力する事が出来るのでぼくが玉藻前さんの援護が出来るんです」


 片仮名を使わず改めて説明。


「やるのじゃ!」


「それじゃあ…」


 ぼくは投入口に2人分のお金を入れてゲームスタート。オープニングムービーが流れる。


「玉藻前さん、これを持ってください」


「これかえ?」


 銃型のコントローラーを手に取る。


「画面に敵が出て来るので銃を敵に向けてトリガーを押してください」


「とりがぁ?」


 やはり、片仮名は通じない。


「えっと、ここです!」


 直接、指を指して教える。


「これかえ!」


「そうです!敵に向けて、これを押せば敵を倒せます」


「うむ、わかったのじゃ」


 ちょうどオープニングムービーが終了。画面には道路が写り、車は走行不能なのか路肩に止まってたり、追突したように車が車に乗り上げていたり異様な雰囲気。


「なんじゃ?敵はどこかえ?」


「すぐ出て来ますよ」


 ぼくは敵に関して詳しく説明しなかった。それは、あえてしなかったのだ。彼女の驚くリアクションを見たいから、すると…


『グアアァ』


 車の陰から敵が現れた。


「なんじゃ!?なんじゃ、あれは?人なのかえ!?」


 驚く彼女。現れた敵は人間の姿をしている。だが、およそ生きてる人間とは思えない見た目なのだ。そう!このゲームの敵はゾンビだったのだ。


「敵ですよ、撃ってください。玉藻前さん」


「のじゃー!」


 彼女は敵に向かい銃を連写。あっという間に弾切れ。


「な、なぜじゃ!?あの屍共を倒せぬぞ」


 弾切れ後もトリガーを押すが弾切れなので敵を倒す事が出来ず慌てふためく。


「銃を画面の外に向けてトリガーを押してください。こうです!」


 ぼくは手本を見せる。


「こ、こうかえ?」


 見よう見まねで弾をリロード。


「これでまた撃てます」


 ぼくは彼女に迫る敵を優先的に倒しながら答えた。


「助かったのじゃ…」


 敵を一掃し少し落ち着いたが、イベントムービーが流れ、地中から巨大な敵が…それは、人の姿をしたモンスター、最初のステージのボスだ。


「なんなのじゃーーー!?」


「ボスです。強いですよ」


 ぼくは説明する。


「やめるのじゃー!」


 落ち着いてリロードも出来るようになっていたはずが、それを忘れトリガーを押し続ける。先程、ぼくの説明で『ボス』という片仮名を使っても聞き返さない程に気が動転しているのだ。


 ガンシューティングゲームでは回避というものがない事が多い。体力の多いボスの攻撃を防ぐには一定量のダメージを与える必要がある。だが、協力プレイではその与えなければいけないダメージも多く設定されている。怯える彼女は戦力にならず実質、ぼく1人で戦う事になった。


 結果、最初のステージのボス戦で2人揃ってゲームオーバー


「怖かったのじゃ…なんなのじゃ、あの屍共は」


 息を切らし吐露。


「あははは、玉藻前さんにも怖いとか感じるんですね」


「げぇむというのは楽しいのではなかったのかえ?」


 入店してから彼女は未だゲームの楽しさを体感していない。その状況をマズイと感じ、彼女に合いそうなゲームを考える。


「それじゃあ、あれにしましょう!」


 彼女の手を引き移動。辿り着いたのは昔からあるダンスゲーム。


「次はどんなげぇむなのかえ?」


「うーん、とりあえず見ててください」


 完全に説明を諦め実演する事にした。ぼくはあまり得意じゃないのか何度かミスするもクリア。


「どうですか?やり方わかりましたか?」


「ふむ、下から流れて来る矢印を上にある矢印と重なる時に下の矢印を踏めばよいのかえ?」


「そうです!」


 うまく伝わった。


「よし、やるのじゃ」


 画面は楽曲選択。


「そういえば、知らない曲だらけですけど大丈夫ですか?」


「…問題なかろう」


 知らない楽曲の中から目に留まった楽曲を選択。次に難易度選択なのだが…


「なんて書いてあるのかえ?」


「えーと、左から順番に簡単な難易度なんですけど…玉藻前さんは初心者だから、このままでいいと思います」


「ふむ…」


 彼女は考え込む


「妾の全力の舞を見せる良い機会なのじゃ!」


 Easy、Normal、Hard、Extremeと4段階ある難易度からハードを選択。


「ハードですか…がんばってください!」


「まかせるのじゃ♪」


 そう言うと彼女は画面と向き合い、ゲームが始まる。最初の矢印は成功の判定。次々と矢印は流れて来るが、その全てが成功の判定。


「上手です」


 ぼくの言葉で気を良くしたのか彼女は足下のパネルを踏むだけでなく上半身も動かし、まさに舞を舞っている。その動きは静と動がハッキリしている訳ではなく、例えるなら流れる川の水のよう。一つ一つの動きの継ぎ目がわからない。


「どうじゃ!」


 曲が終わると右腕を振り下ろし肩の高さでピタッと止める。それと同時にいつの間にか右手に持っていた扇子が広がる。


 パチパチ


「すごいです!初心者とは思えないです!」


「舞は得意なのじゃ♪」


 自慢気な表情。


「なんていうか…綺麗でした」


「褒めすぎじゃ♪否定はせぬが」


 ようやく彼女もゲームを楽しむ事が出来た。


「どうします?まだゲームしますか?」


 ぼくは彼女に尋ねる。


「それも良いが妾は少し小腹が空いたのじゃ」


「食事…ですか……」


 財布の中を覗く。食事となると小学生の金銭事情では厳しいものがある。さらに彼女の分もとなると


「駄目…かえ?」


 少し不安そうに尋ねる。


「うーん、ぼくの所持金じゃ厳しいかなって」


 見栄を張る事なく正直に答えた。


「こんなにたくさんあるのにかえ?」


 彼女はぼくの財布の覗き込む。


「小銭ばかりですから…」


「ふむ…ならば妾のこれも雀の涙じゃの…このような紙切れでは…」


 彼女は着物の袖から巾着袋を取り出し、その中から丸められた紙を出した。


「それ見せてください!」


「よいぞ」


 丸められた紙を手渡した。


「諭吉…さんだ」


「誰かえ?それは」


 小学生にとって諭吉さんと間近で対面できるのはお正月くらいだろう。その諭吉さんが丸められ、しかも大量に目の前にあるのだ。彼女の問いが耳に入らないほど驚愕するぼく。


「これ、どうしたんですか!?」


「これかえ?これは見知らぬ人の子が食事を馳走すると言って、しばらく話をしたら、この紙切れを渡して来たのじゃ、今でも時折じゃが馳走になっておる」


「これだけあれば…お腹いっぱいご飯食べれますよ!」


「この紙切れでかえ?人の子の価値観はわからぬ」


 彼女は紙幣の価値がわからず不思議そうに眺める。


「ならば妾がそなたに馳走しよう!」


「いいんですか?」


「もちろんじゃ!そなたに言われなければ、この紙の価値もわからぬままであった、それにげぇむを教えてくれた礼じゃ」


「じゃあ、ここを出ましょうか!あ、お金は仕舞ってください」


 諭吉さんを彼女に返した。


「うむ、では行くとしよう」


 2人はゲーセンを後にした。

 無事にゲーセン編は終了です。次はお食事編ですよ。今回で玉藻前は踊りが得意だと判明しましたね。今後、披露する機会があるかはわからないです。少なくとも最終章では披露します! それでは

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