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ぼくと花子さん  作者: 大器晩成の凡人
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59話 ぼくと花子さんと玉藻前②

 〜前回のあらすじ〜


 休日、ぼくは玉藻前と思いもよらぬ再会をする。その彼女は花子さんに怯える余り、人畜無害なぼくに怯え逃走。そんな彼女を追い詰め……もとい、追い付いたぼくは彼女の話を聞きたいと申し出る。

「妾の何が聞きたいのかえ?」


「んー、玉藻前さんの昔の話とかですかね。玉藻前さんの正体の九尾の狐ってすごく有名なんですよ」


「ホントかえ!?今の世でもかえ!?」


「はい!」


「そうか…そうか♪」


 喜ぶ玉藻前。


「妾が地上で暴れていた時代の人の子は愚かで無知で野蛮であった。そんな人の子を痛めつけるのは実に愉快であった。じゃが…」


 上機嫌に話していたが、急に悲しげな雰囲気になる。


「妾は岩の中に閉じ込められ、何百年ぶりに地上に出てみれば世界は一変してるではないか!」


「何百年も経てば驚きますよね」


「あの時代は妾の存在など関係なく人の子同士の争いが絶えなくやかましかった。妾もそんな人の子だったからこそ躊躇う事なく暴れる事ができたのじゃ」


 その言葉を聞いてぼくは1つの質問をする。それは…


「今はどうなんですか?」


 彼女の言葉からは人間の醜い一面を見たからこそ人間に牙を剥いたように聞こえる。彼女のしてきた事は決して褒められた事ではないが、ある意味では被害者なのかもしれない。


「わからぬ……今の世は平和過ぎる。人と人との争いはあるが、昔と比べれば可愛く思える程に小さな争いじゃ、そんな人の子を痛めつけても昔のように楽しめるとは到底思えぬのじゃ…」


 世界に視野を広げれば、未だに目を覆いたくなるような争いはたくさんある。それを考えると今の日本はたしかに平和そのものである。


「玉藻前さんは人を傷つける事が好きなんですか?」


「妾は……わからぬ……人の子と争う前は他の楽しみがあったかもしれぬ…じゃが、人の子との争いがあまりにも長過ぎた。気づけば争い合ってた人の子同士が手を組み妾に刃を向けたのじゃ!わけがわからぬ!どこを見ても刃を向けられ続け、次第に妾の中の憎悪が膨れ上がり人の子を積極的に襲うようになった。この醜い感情を誤魔化す為に楽しんでいたのかもしれぬ。どこへ行っても人の子の対応は変わらぬ。安心できる場所もなく…結局、岩に封じられ……あのまま岩の封印が解けなければ…」


 彼女の瞳から涙が流れ落ちる。


(やっぱり、根っから悪い人じゃないのかも)


 ぼくはその涙を見てそう思った。


「玉藻前さん、今からぼくと遊びに行きませんか?」


「遊び…じゃと?」


「はい!玉藻前さんは今の世の中に戸惑ってるだけだと思うんです。だから町を見て回りませんか?」


 ぼくは立ち上がり彼女に手を差し伸べる。


「………」


 彼女は無言でぼくの顔を見つめる。


(これ断られたら恥ずかしいなぁ)


 今更、差し伸べた手を引っ込める訳にはいかず、そのままの体勢で彼女の返答を待つ。


「………」


 彼女はぼくの顔から差し伸べた手に視線を移す、その手を見つめ、また顔に視線を移し、また手に視線を移すと


「…頼む」


 うつむきながらぼくの手を握ってくれた。


「はい!」


 2人は歩き出す。数分ほど歩いていると、ぼくはある事に気づく。


(玉藻前さん、ずっと向こう向いてる)


 手を繋いで歩いているものの正面を見ず、ずっと、ぼくに顔を背けるように横を向いている。何かに目を奪われているという様子でもない。


「玉藻前さん、前向いて歩かないと危ないですよ」


「わ、妾の勝手であろう!」


 どことなく落ち着かない口調で答える。


「………やっぱり、ぼくと遊びに行くのイヤでしたか?」


 立ち止まり尋ねる。


「そんな訳なかろう!」


 彼女は繋いでた手を放し、ぼくの顔を見て答える。そして、すぐさま顔を逸らす。一瞬見えた彼女の顔はほんのり赤みを帯びていた。


「じゃあ、なんで顔を逸らすんですか?」


「………ならば、これでよいか?」


 彼女は顔をぼくの方へ向ける……ただし、顔を両手で覆っている。


「ふぅ、やっぱり、イヤなんじゃないですか」


 ため息混じりで言うと


「違う!断じて違うのじゃ!」


 必死で否定する。


「………理由を話してくれませんか?」


 彼女は指と指の間からぼくの表情を窺う。


「妾達が今からすることは…いわゆる…その…“で”……」


「“で”?」


「で、“でぇと”なのじゃろ!?」


 顔を覆っていた手を離すと大声で叫んだ。


「“でぇと”…………」


 思いもよらない言葉にぼくは思考停止。情報処理に一瞬だけ手間取ったが、理解したぼくは…


「ぷっ、あははははは」


 思わず吹き出してしまった。


「な、なんじゃ!何が可笑しいのじゃ!」


 彼女は怒る。それは憎しみのようなネガティブな怒りではない。ぼくの背丈が彼女と同じくらいだったらカップルがイチャついてるように見えただろう。そんな微笑ましく思える怒り方だ。


「ごめんなさい、なんていうか現実味がなくて、つい」


「それは、妾がそなたの相手に相応しくないということかえ?」


 なぜか不安そうに尋ねる。


「違いますよ、玉藻前さんはすごく美人です。それに比べてぼくは普通ですし、それに玉藻前さんは大人でぼくは子供、身長だって見てわかるくらい差があります。端から見れば親子か姉弟って所ですよ」


「妾は何百年も生きてきた。今更、容姿や年齢、ましてや身長差など気にはならぬ」


 ぼくの目を真っ直ぐ見つめる。


「わかりました!今からデートをしましょう」


 ぼくは彼女の言葉に込められた想いを解釈したつもりだったが、ぼくが思ってる以上に真剣に考えなければいけない言葉だった。そんな事を知る由もなくデートをする事になった。


「そう…か…そうか♪そうか♪」


 彼女は嬉しそうにぼくと手を繋いだ。

 今回から書き方を変えようと思います!気づいた人も居るかもですが、前書きに前回のあらすじを書いてます。私の更新日は基本的に5の倍数の日なのでどんな話だったか忘れてしまう人への配慮です! そして、一話を2000文字〜4000文字程度にします。皆さんが気軽に読みやすいようにこれからも試行錯誤していきます! それでは

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