(2)映画
水曜日。ーー駅で待ち合わせしていた紗良と合流し、本屋さんで少し時間を潰したあと映画館に向かった。二人ともお昼を食べたばかりだったのでポップコーンはやめておいた。予約しておいた席につくと紗良は
「ここにおる人みんな〇〇くんのファンかな?」
と感心していた。確かに言われてみると周りの席はほとんど女性で埋め尽くされており、男性は数える程しかいなかった。そんな軽い会話をしているとまもなく辺りは暗くなり、上映開始の合図の音がなった。
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「めっちゃかっこよかったなぁ、」
上映後、紗良は大きく伸びをした。そんな中、私は映画を見る前以上に高揚してた。
「あの人、かっこいい。」
私が発せた言葉はそれだけだった。今思えば紗良とは全然話が噛み合っていなかったかもしれない。確かに最近話題の人気アイドルである〇〇くんの演技やビジュアルは素晴らしかったし、ヒロインである△△ちゃんもとても可愛かった。でも私が一番心を奪われたのはその人たちではない。エンドロールに写ったその名前は見逃さなかった。
彼は『小田航大朗』という名の俳優だった。