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「紛争って、本当ですか?」
「そうだ、と言いたいが、さっき言ったように知り合いから聞いた話だ、実際どうかは知らない」
「だが、信頼する知り合いだ、冗談で言っているわけじゃない」
どうやら僕達を騙したいわけじゃなさそうだ。
「なんで紛争なんか...」
「古くから燻っていたのが今になって爆発しそうだと言っていた」
「それに、より確かな情報を収集してくると、帝国へ行ったきり帰って来ない」
「...これだけ聞いて、行く気は失せたかな」
「まぁ、あんたらが余程の恐れ知らずなら止めはしない...送りもしないがな」
「いや、やめておきます」
さすがに、危険が待っていると聞いて行く気はない。
だが、困ったな...早速予定が狂ってしまった。
これからどうしよう...帝国のかわりにどこに向かおうか。
悩んでいると御者が声をかけてきた。
「なぁ、あんたらは、観光目的で帝国へ行こうとしたのかい?」
その問いかけに頷く。
「観光なら他に良い場所を知ってるよ」
「教えてもらえますか?」
「ああ、ここから北にある、小さな国なんだが」
「綺麗な花畑、花園が広がっていてねぇ...料理なんかも美味いそうだよ」
「おぉ、良いですね」
「そうだろ、サンツマルってところだよ」
「ありがとうございます、行ってみます」
いきなり、予定が崩れたが、良い話を聞けた。
すぐに向かおうとすると、呼び止められた。
「待った、もう一つ良い場所があるんだ」
「はい?」
「あんたら、腕に自信はあるかい?」
「サンツマルの北、ヴェルメイユって国に腕試しができる所がある」
「それと、そこは工業が進んでいてね、そこも魅力的な場所だよ」
「情報、ありがとうございます」
「ああ、楽しんでくるといいよ」
歩きながら話し合う。
「二人ともどうする?行ってみる?」
「俺は聞いたときから行くつもりだ、予定を練り直さなくて済む」
「だから、異論は無い」
「私は、二人について行くっていうのは元々だし、花と料理が気になるしね」
「じゃあ、このまま向かおう」
サンツマルへ行くため、王都の北へ向かった。
こちらの方はかなり人がいた。
サンツマルへ行く馬車を探す。
「すみません、サンツマルへは向かいますか?」
「おや、あなた方もサンツマルが目的ですか?」
「はい」
「なら、良い時に来ましたね」
「もうすぐ締め切って向かうところだったんですよ」
「そうなんですか」
「はい、料金は後からでも良いので、こちらに乗り込んでください」
「わかりました」
馬車にはすでに四人乗っていた。
僕達三人も乗り込む。
「では、出発しますね」
馬車はゆっくりと走り出した。
思っていたより馬車の乗り心地はとても良い。
段差の衝撃をあまり感じない。
少しの揺れが心地好い、気持ちよく寝れそうなくらいだ。
「馬車って快適なのね」
「だろ...それに乗っているだけで隣街へ行けるんだから、かなり便利なんだよ」
「これからも移動はこんな感じなの?」
「うん、基本的に移動手段は乗り物、徒歩にはできるだけしない」
「馬車も貸りれる馬も無ければ仕方ないけどね」
「ふーん」
「そういえば、獣とか魔物とかが道にいたり、飛び出してきたら危なくない?」
「それなら心配ないよ、普通なら逃げてくし、いても馬が弾いてくれるから」
「それに、舗装された道の近くは安全が確保されているはずだよ」
なんて話をしたあとに、御者からあることが告げられた。
「お客様方すみません」
「少々問題が発生してしまいました...」
「何です?」
「ええそれが...鳥でしてね」
御者は空を指しながら言う。
僕達は荷台から身をのりだし空を見る。
空に見えたのは二羽、鳥の魔物だ。
この魔物は嘴が長い。
そのうえ、好奇心が強いため、気になるものがあればその長い嘴でつつこうとする。
そのせいで馬車を引く馬にストレスをかけ、事故が起きることがある。
「位置が高いな...」
二羽は高い位置で飛行している。
魔法が届かない訳ではないが、この距離では精度が落ち、正確に狙えない。
杖を使えば、幾分かましになるだろうけど。
「ジェイル、届く?」
「あぁ届く...が、射落とすだけ」
「拾うのは任せる」
「うん、わかった」
「射貫いてくれ」
新品の杖の出番だ。
杖での魔法に使い慣れておこう。
「馬車を停めてもらえますか?」
「対処しますので」
「わかりました」
程なくして馬車は停った。
ジェイルと僕は馬車を降りる。
ジェイルは弓を構える。
二羽は、馬車が停ったことに気付き、降りてくる。
狙い易くなって助かる。
「まず、一羽」
落下する一羽目を、アレンが風魔法を使い拾う。
二羽目が、一羽目が射貫かれたことで逃げ出す。
「二羽目」
それを直ぐ様射貫く。
二羽目も魔法で拾う。
「すぐに終わったな」
「それで、この魔物はどうしよう...」
血抜きして売れるようにしたいが、ここに留まる訳にもいかない。
...馬車に吊るしても良いか御者に聞くか。
「ちょっと聞いてくるね」
後ろに吊るさせてもらい、馬車は再出発した。
休憩のため、道程にある街へ停った。
丁度良く血抜きが終わっていたので、買い取ってくれる所を探す。
ついでに街を散策する。
出発前に目印を出してくれるそうだ。
「ねぇ二人とも、あそこ、綺麗な花が並んでるよ」
ミナが花屋を見つけたので、寄ってみる。
「はー、綺麗なもんだな」
花を見ると、鮮やかな色ばかりだ。
今までにここまでの花は見たことがない。
どこの花だろう...噂に聞くサンツマルかな?
「すみません、ここにある花ってどこのですか?」
二人が花に顔を近付けて見ている横で、花について店員に聞く。
「こちらの花ですか?」
「こちらはサンツマルで育ったものですよ、綺麗ですよね」
「プレゼントに人気なんですよ」
へぇ、やっぱりサンツマルか。
にしても、目の前にある花が咲き乱れる花園、花畑があるのか、ますます楽しみだな。
「ありがとうございます」
店員に礼を言い、しばらく花を見てその場を去った。
魔物を売り終わり、もう少し散策した後、出発の目印が見えたので馬車へ戻った。
街から出発して、サンツマルに近付いてきた辺りから、道の周りに青々とした緑が増えていることに気付いた。




