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入り口でミナと会い、一緒にギルドへ入る。
ギルドの掲示板を見たが依頼が無かった。
昨日、掲載されていた全ての依頼が完了され、他所の依頼も来ておらず、新しい依頼はまだ無いそうだ。
依頼が来るかは分からないが座って待つことにした。
「暇ね...」
「そうだね、しばらく経っても依頼が無かったら、街の外で弓の練習をしよう」
「えぇ、そうする」
と言い、少し唸る。
喋る話題を考えていたようで、
「ねぇ、暇だから村での生活を聞かせてよ」
「うん?あぁ...」
村での生活を聞いてきた。
なぜ急にと思ったが、自分が村に誘ったのだ、どんな生活をしているのか説明しておくのは当然だろう。
「僕の家は村で、牧畜と農業を主にやってて」
「ジェイルの方は...」
「俺の家は、狩りが基本でな」
「獲物を捌いたりしてて狩りが無い日は、森の中で採取したり、他の手伝いをしてんだよ」
「うん、村の皆で助け合ってね」
「稼ぎの方は、取れた野菜をたまに来る商人か街で売って得てて、食事はほとんど自給自足で済んでいるから、服とか日用品ぐらいにしかお金は使わないよ」
「宿代とかの出費が抑えられそうね」
なんて話をしていると、ギルドにローブを羽織った小太りの男性が入ってきた。
男を見ると、服は上質な物のようでギルドの会員では無さそうだ。
依頼かな?と考え、男を注視しながら二人と雑談をする。
男は、受付職員に手渡された書類に執筆して出ていき、その後すぐに掲示板へ依頼が貼り出された。
依頼を確認しに行く。
その内容は、街道にゴブリンが出てきたというもの、ゴブリンの討伐依頼だった。
自分と同じように依頼を確認しに来た会員は、苦い顔をして帰っていく。
そこへミナが寄ってきた。
「ねぇ、そんなに難しい依頼なの?」
「いや、そんなことはないよ」
「魔物討伐の中でも簡単な方だよ」
「じゃあ何で?」
「それはたぶん、利益が少ないからだと思う」
「ゴブリンは、その体から取れる素材が無くて...討伐数分の報酬しか稼げないから、割に合わないだよ」
「そう、稼ぎが少ないからなのね...でも、魔物なんでしょ?放置して良いの?」
「それは、放っておいても、政府主導で魔物討伐隊が討伐してくれるからだよ」
「ふーん、そっか...」
ミナはこの依頼を受けようか迷い唸っている。
僕は、ゴブリン討伐を弓の練習にすることを、あまりおすすめできない。
魔物の中でも弱い部類とはいえ、魔物である以上、討伐することは狩りではなく戦闘となる。弓の練習は難しいだろう。
武器の扱いを覚えたばかりの者では、怪我をする。
それに、ミナには弓しか教えてない。ゴブリン相手には、剣や槍なんかの方が良い。
やめておこうと言おうとした時、ジェイルが声をかけてきた。
「ゴブリン討伐、受けようぜ」
僕達が戻ってこないから、こちらに来たようだ。
「ゴブリンならすぐ済む、暇潰しにはちょうど良い」
「いや、練習には危険だよ」
「大丈夫、ミナには戦わせない、ミナは見学だ」
「魔物との戦いを見せてやるんだよ」
見学なら魔物から離れていられる。
それなら良いのか?でも、ジェイルと僕の動きは参考になるのか?んー...
「良いだろ、ミナ」
「えぇお願い、見学させてもらう」
「よし、決まり」
「受付行ってくる」
僕が悩んでいるうちにゴブリン討伐を受けることが決定してしまった。
まぁ、ジェイルがさっき言ったように暇潰しにはなる、良いか。
依頼を受け、街道に向かった。
件の街道は、西の街との間に作られた道で、ここ、ソブラを出発してしばらくした所にゴブリンがいたという。
街道に沿って歩いていると、森の中の道にゴブリンがいた。
木に石で傷を付けたり、木の実を取って口に入れている。
「おっ、いたぞ」
「うーん...見えるのは二匹だけだな...」
依頼書の内容では三匹はいるとのことだったが、森の中へ入ってしまったのだろうか。
「よし、一匹叩いて誘い出してやる」
ジェイルが剣を抜く。
ミナには待機してもらう。
「ミナはここで待ってて、ジェイル援護する」
「おう、じゃ行くぜ」
そう言って、ジェイルはゴブリンへ駆けていく。
それに続き、自分も走り追いかける。
走りながら、拳に入るくらいの石をいくつか拾う。
足音に気付いた一匹が、ジェイルに石を投げるが、ジェイルはそれを難なく避けて、剣を振り胴体へ当てる。
ゴブリンは、脇腹から腹までに切り傷を付けられ、木にぶつかる。
隙を作ったジェイルにもう一匹が襲いかかるが、それを僕が小石を魔法で飛ばし、操ってゴブリンを地面へ押し伏せる。
「助かる」
「それより、森の中の三匹...寄って来てるよ」
「わかってる」
物音や鳴き声に気付いた残りの三匹が走って来る。
ジェイルは、目の前に伏したゴブリンの首を切ってから三匹に向き直る。
前を走っていた二匹が一気に同時に襲いかかる。
その二匹の顎へ先ほどの石をぶつける。
二匹は上を向き浮き上がる。
「ふん!」
その二匹の首をジェイルは横振りで切断する。
最後の一匹はジェイルに怖じ気づき、僕の方へ向かって来た。
しかし、ゴブリンは僕の元へは到達できなかった。
途中でジェイルが追い付き、背中を突き刺したから。
「もういないかな」
近くを探したが、この五匹以外は見当たらなかった。
燃やしやすいように森の外で一ヶ所に集める。
集める途中に討伐の証明のために特徴的な長い鼻を切り取っておく。
「ミナ、ちゃんと見れた?」
「うん、見れたけど...一連の動きがあんなに滞りなく進んで...真似できそうにないわ」
「ははっ、俺達、ゴブリン相手の戦闘は慣れてるし、別に俺達みたいになる必要はないよ」
「それより、ゴブリンの動きの方は見れたか?」
「見れた、あんなに好戦的なのね」
「あぁ、近付いたら襲って来るから今度見かけたら気を付けろ」
「えぇ、覚えておく」
枯れ葉や乾いた枝を集め、ゴブリンを積んだ山に混ぜる。
手を向け、火の魔法で燃やし始める。
「そんなに激しく燃やして大丈夫なの?」
山は大きな炎になっていることに気付き、ミナが声をかけてきた。
「うん、大丈夫」
「というか、これぐらい勢いがないと灰にならず残っちゃうのが出てくるから」
「そう...」
全て灰になり、火が残らないよう周りの土と混ぜる。
火が残っていないことを確認し、森に撒く。
「これでよし、帰ろう」
ゴブリンの鼻を五つ持ち、街へ帰った。
ゴブリンの鼻を受付へ見せる。
「ゴブリンの鼻が五つ...五匹の討伐ですね、お疲れ様です」
「そちら、お預かりしますね」
鼻を全て渡す。
「少々お待ち下さい」
しばらくして、
「こちら、報酬金となります」
「ありがとうございます」
報酬を貰い、二人の方へ向かう。
「新しい依頼は来ていないようだし、残りの時間は弓の練習をする?」
残念なことに掲示板には依頼が載っていなかった。
もうすぐ昼だが、この時間まで新しい依頼が来ないとなると、もう今日は無いと考えてもよさそうだ。
「えぇ、私もそうした方が良いと思う」
「よろしくね、ジェイル」
「あぁ、わかった」
昼食を取ってから、練習を始め日が暮れるまで続けた。
そして、また明日と言い別れた。




