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村にもどってから僕たちは、親の手伝いをしながら本(指南書)を読み技術を自分のものとして身に付けていった。


教会から帰った翌日、僕は初めから行き詰まっていた。


「魔素を感じる...?」


本(指南書)の初めには、体内の魔素を感じ、それを操り支配下に置くということしかわからず、どのよう感じることができるのかは書かれていなかった。


「感じる、感じる?うーん...」


グーパーグーパーと手を握る、開くを繰り返す。


「全然わからない」


もう一度、本(指南書)を読んでみる。

本(指南書)には、一章「適性を持つものには第六感の魔素を感じる器官の感覚が強い、それを用いて感じる。又は、他者から干渉を受け感覚を掴む。」としか書かれておらず、魔素を感じるのに一週間かかった。


掌に熱がある。それが離れ、戻ってくる。それを繰り返す。

そうしているうちに本当に掌が熱くなる。


「熱っ!」


やけどはしていなかった。


魔素を感じるのに役立ったのが、二章だった。

「魔法は想像を具現化するもの、想像力次第で魔法の形質が変わる」という文言。

そのお陰で身体から力が抜けたり、入ったりを想像することで魔素を把握できた。


把握してからは順調だった。

三章の「掌などの狭い範囲から魔法を発揮することで、魔素操作が乱れず魔力が上がる」というものも、想像力のお陰ですぐに実践できた。


掌に意識を集中させて、目標に放出!


目標にしていた枯れ葉の山は燃え上がった。

想像していたのは、熱を飛ばすことだ。

掌の前から熱を飛ばし目標に当てる、上手くいったようだ。


その後の四章「呪文もしくは、起こしたい事象を言うことで魔力が上がる」まで終了した。


「風よ巻き上げろ!」


今回も枯れ葉の山を目標にした。

詠唱無しでは、枯れ葉の山は木よりも下までしか浮き上がらなかったが、詠唱有りでは木の上まで浮き上がった。

比較すると確かに詠唱有りの方が魔力が上がっていた。


魔術の習得もここまでだった。

五章以降は別本であり、これ以上魔術については、知ることはできなかった。


本(指南書)を読破した後は、生活の中で魔法を活用し、ジェイルと共に魔物の狩りなどで魔力を鍛えていった。


ジェイルの剣術の習得は、最初は順調だったものの次第に遅くなっていった。

原因がいくつかあり、その一つがジェイルの読解力。

最初の剣の振り方、身体の鍛え方は単純な文言ですぐにしっかり実践できたのだが、技となると複雑で正確に読み解くことができなかった。

それは、僕や親が読むことで直していった。


二つめが対人用の剣術であったことだ。

対魔物の剣術を覚えるつもりが、対人用の本(指南書)を買ってしまっていた。

狩りに剣術を用いた参加ができなかったジェイルは、暇な時に大人に対戦してもらう必要があり、鍛えるのに時間がかかった。

大人に対戦してもらえないときは弓などにも手を出して暇を潰していた。

驚くことに剣の才能があったのか、ジェイルは少ない経験ながらもみるみるうちに技を覚え、強くなっていく。

しかし、周りにはジェイルと対戦できる者が減っていき、ついに誰一人として居なくなったとき、鍛練のみになった。

そうして、対人経験が積めなくなってしまった。


鍛練のみになってから数十日たった頃、街へ行く算段が整い今度はしっかり対魔物の本(指南書)と対獣の本(指南書)を買って、それぞれの技を覚えていった。


僕たちが十三歳の頃、二人の間で夢ができた。


「なぁ、アレン...何て言うか、俺たち強くなったよな」

「本を読んで鍛えて、色んなことができるようになって...」


「そうだね...」


ジェイルの言葉に同意する。

そう、僕たちは強くなった。

ジェイルの剣術は村の人では決して敵わず、弓術も鍛え村の立派な狩人となった。

対して僕は、ジェイルと一緒にいたお陰である程度の剣術と弓術を覚え、魔術も鍛え上げられ狩りに役立っている。

しかしそれは、村で得られる経験のみの力だ。

自分たちの才能はどれほどまでなのか知ることができない。

だから、


「僕たちと同じように技術を修めている人たちに、会ってみたいね...」


「どんな人たちがいるのか見てみたい...その人たちと対戦でしてみたいな...」


自分の才能を育ててみたい。

そんな小さな夢、小さな夢だったからこそ簡単に諦められる。

村を離れる理由は小さく、必要もない。

村で静かに暮らしていればいい。

そのまま、夢への熱は冷めていった。


ある旅商人が村に訪れたことがきっかけで、夢への熱が以前よりも強くなっていった。


いつもであれば、旅商人からは生活必需品のみを買うのみ、それ以外は無視していた。

いつものように買い物を済ませようとしたが、


「いらっしゃいませ、沢山の商品を取り扱っているので、どうぞ見ていってください」


「塩と...石鹸を下さい」


「塩と石鹸ですね、以上ですか?」


「はい、それだけでお願いします」


「あっ、お客さん、ちょっとオススメの商品があるのですがいかがです?」


「オススメ?」


「はい、こちらの商品なのですが...」


と言って商人が取り出したのは本。


「「私の見た世界」プトレウスって人の本ですが、どうです人気なんですよ~」

「世界中のことが書いてあって、国や種族などの絵もあって結構楽しめますよ」


商人はニコニコしながら勧めてくる。

だが、いらない。


「いや、必要ないな」


「そうですかぁ、あっ家族に小さな子いませんか?絵が小さな子に人気で、最高峰の魔術師だったり剣豪だったりの話があるんですが」


魔術師、剣豪という言葉にピクリと反応する。


「魔術の話とか剣術の話とかってあります?」


気になって聞いてしまう。


「はい!ありますよ~、国特有の魔術、地域独自の剣..あー..刀?だったかな、かなり詳しく載ってますよ~」


商人の返答を聞き、迷ってしまう。

買いたい、けど勝手に買うのはダメだろう。

その葛藤で悩んでいると、


「お客さん、そんなにお悩みならサービスしますよ」


えっ?と顔を上げ、商人を見る。


「追加で砂糖とタオル、買っていただければ差し上げますよ」


この条件は自分にとって特しかない。


「買います!」


すぐに購入を決定した。


家への帰り道、本の購入を後悔しながら帰っていた。

あー、まずい。お母さんに起こられる。

必要以上に買ってしまった。あー。

お母さんにどう謝ろう。そんなことを考えながら帰宅した。


以外にも怒られることはなかった。

要らないものは買ってないし、損はしていないからと。言ってくれた。

早速読もうと思ったが、せっかくならジェイルと読みたい。

あいつならこの時間、いつもの場所にいるはずだ。


「ジェイル!」


やっぱりこの場所にいた。

日に当たって暖かいこの場所。

僕たちが技術を鍛える時に立ち寄る場所。


ジェイルは素振りをしていた。

僕の声に気づき素振りを止め、手を振る。


「アレン、どうした?」


「見てくれ、この本!」


「なんだこの本?」


先ほど買った、プトレウスの本を見せる。


「世界のことが載っているんだ!」


「世界?」


「あぁ、遠く離れた場所、色々な国のことが乗っているんだ」


「そうか、だがなぜ買ったんだ?」


「それは、この本にはな、魔術師、剣豪のこと、それに魔術、剣術が詳しく載っているらしい」


ジェイルも興味を持ったようで、


「なっ、そうなのか!早く読もう」


二人で一緒に本を読んだ。

僕たちが欲しかった魔術や剣術の話は知ることができなかったが、改めて自分たちが小さな世界、村に近い狭い範囲の世界しか知らないことを自覚した。

美しい景色を持つ自然、各地に住む様々な種族など、自分たちから遠く離れた存在の数々が本には書いてあった。

本を読んだことで二人の夢が大きくなった。

自分たちの目で見たことがない、耳で聞いたことがない、村の外、広い世界が知りたいと。自分たちの足で歩いてみたいと。

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