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「急に景色が変わったな...」
「見渡す限り緑ね」
サンツマルに到着し、馬車を降りる。
地面に広がる草を踏むと柔らかい感触が返ってくる。
豊かな土地だとは聞いていたが、これ程とは。
サンツマルの外観は、王都とあまり変わらないが、建物の外装と道路なんかには、花や木などの植物が植えられている。
噂の花園へ行く前に、腹ごしらえを済ませよう。
飲食店のある通りへ、方向を聞きながら向かった。
「ん...」
「おい、あれ」
ジェイルが一組の男女を指差す。
「え?」「何?」
「って、ナンパ?」
「ナンパなんか指してどう.」
「違う、女性をよく見てみろ」
通りへ向かう道中、ナンパされている女性を見かけた。
女性は長く尖った耳をしており、エルフの特徴に似ている。
実際のエルフに会ったことがないが、あの耳だ、多分エルフだろう。
チラリと見えたその顔は、目鼻立ちが整っている美女だった。
エルフは皆、美男美女だと言うが実物を見たせいで、あれ程の美人がたくさんいるのは無理があると、余計に怪しく思った。
「エルフ...初めて見るね」
「あぁ」
「えっ、あの人エルフなの?」
「多分ね」
女性は男を無視したり、拒否したり避けているのだが粘着され、しつこく絡れている。
可哀想だが、関わっても上手く解決できないと思い通り過ぎようとする。
「あっ、良いところに」
すると女性は、こちらを見てジェイルに飛び込んできた。
「うぉっ、なんだ?」
「君、悪いけど、この子達と予定があるから」
そのままナンパ男から離れるように歩き出す。
男は、は?とか嘘だろとか文句を言っていたが、無視して歩く。
男が見えなくなったところで、
「ごめんね、ありがとう、助かったよ」
「頼れそうな子がいたから、腕を借りちゃった」
「ありがとねー」
と、感謝を言いながら去っていった。
「なんだったんだ...」
怒涛の展開に呆気にとられたが、気を取り直し店に向かった。
「かなり匂いが強いな...」
入った店の中は、香辛料の匂いであろう香りが充満していた。
料理は野菜が主で、どれも美味しかった。
花園には、花のトンネル、生垣の迷路などがあり、とても美しかった。
中でも特に気に入ったのは、一面に広がる色とりどりの花畑。
海のように果てがなく見える、迫力ある景色だった。
「あっ見て、この花、花屋にあったものと同じ」
「こっちの花もそうじゃないか」
花畑内を見て回る。
どの花も綺麗に咲いている。
花畑を歩きながら、花に近付いて見ていると、一輪の花が蠢いた。
見間違いかと思い、確認してみると確かに小さく横にぐねぐねと蠢いた。
風に揺らされているように見えないし、これが何なのか調べたいが、職員から花を傷つけないよう注意をされている。
いや、気になる。
触れるだけなら大丈夫だろう。
指先で花弁に触れる。
そうすると、花はビクンと跳ね、茎はまっすぐ伸び飛び出してきた。
飛び出してきたのは植物型の魔物だろう、太い根のような体をしている。
その魔物は花の密集する中へ逃げようとする。
逃さないよう風魔法で花をかき分け、魔素を具現化した触手を絡ませ魔物を掴む。
魔物は引き寄せる力に抵抗できず、僕の手に収まった。
「そんな体勢で何してるの?」
ミナが声をかけてくる。
「これがいたんだ」
魔物を見せつける。
「魔物?」
「うん、植物型のね」
「僕が知っているのと違う姿してるけど」
知っている魔物より明らかに太っているのと、頭に花が生やして擬態?してるのは初めてだ。
知っているのは、細くて頭に雑草みたいなのを生やしてるような姿の魔物。
「それどうするの?」
「職員に渡すつもり」
「頭のは抜いておいた方が良いじゃないか」
寄ってきたジェイルが花を抜くよういってくる。
似た魔物は、頭の植物を抜くと弱るから有効だけど、
「いや、このままにしておく」
「勝手に退治したらダメかもしれないから」
魔物を引き渡しに、花園の入り口に戻った。
「すみません、魔物を捕まえたんですけど」
魔物を見た職員は少し硬直した。
「捕まえてくれたのですねありがとうございます」
「聞きたいのですが花畑内に入ったり、傷付けたりしてませんよね?」
「はい、そこは大丈夫です、心配いりません」
「そうですか、ありがとうございます」
「では、魔物はこちらで預かりますね」
魔物を受け渡す。
「少々お待ち下さい」
そう言って席を離れ、何かを持ってきた。
「こちら、園内のカフェで使える割引券です」
「よろしければお使い下さい」
魔物捕獲の礼をもらった。
「せっかくもらった割引券だから、もう少し見て回ってからよろう」
「あぁ」「さんせーい」
休憩するためカフェへ向かった。
「うん、美味しい」
「こっちも香りが良くて美味しい」
「落ち着いたところで、これからの予定だけど...」
飲みながら今後について話す。
「ヴェルメイユに行かない?」
「元々行く予定ではあって、あらゆる水準が他の国より高いって聞いて気になっていたからさ」
「行く、腕試しだったか...それも気になるしな」
「私も異議なし、行きたい」
「次の目的地が決まったから、もう一つの話をするね」
「サンツマルを去る前に、ギルドで仕事をしよう」
「資金が心もとないからね」
「はーい」
「あぁ、わかった」
「それで今からか?」
「いや、明日で良いかな?」
「今日は観光だけにしたいし」
「そうか」
「じゃあ、休み終わったら観光の続きしようか」
今日の残りは観光に使った。




