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僕たちは、幼い頃から仲が良く村で兄弟のように育った。
いつも一緒に遊び、村の手伝いも協力していた。
僕たちが八歳になった年、国の習慣で王都の教会へ訪れることになった。
国の習慣というのは、八歳になった子供が未来を祈り聖母ダリアへ祈りを捧げることをさす。
月始めの数日間に行われ、国内のほとんどの子供は参加していて、毎度混雑する。
金銭を奉納することで教会にいる神父様、又は聖女様に将来をお祈りしてもらい、言葉をもらうこともできる。
初めて来た王都は、想像よりも人で溢れていた。
こんなに人がいるのは、今まで見たことがない。
父に手を引かれ、教会を目指す。
王都の教会には聖女様がいるそうだ。
何でも、聖母ダリア様の直系の子孫が務めているのだとか。
聖女様に興味がでて、ワクワクしながら向かったが、教会に着いてガッカリした。
「聖女様はどこにいるの?」
教会の中には、石像に向かって手を握り祈っている人たちがいたが、教会の関係者らしい人はいなかった。
父が言った。
「ここにはいなみたいだね」
「探してみたけど見つからないよ」
「ふーん...そっか...」
残念だけど、会えないのなら仕方ない。
そう落ち込んでいると、
「そんなに会いたかったのか?」
「それなら、昼過ぎに祈願をしてくれるらしいから、お祈りした後近くを見て回りながら待つか?」
「うん!」
これにジェイルも誘い一緒に、聖女様に祈願をしてもらうことにした。
王都を回るのはかなり楽しかった。
ジェイルと一緒に来たのもそうだが、普段来ることがない場所、目にしないものをたくさん見たのもよういんだった。
あれは何?これは何?と歩き、遊んでいるとすぐに時間が経ってしまった。
教会へ向かうと、すでに聖女様が来ていて教会の隣の建物で祈願をしているようだった。
建物の前には列ができている、あまり並んではいない。
祈願をしてもらうには、奉納が必要なようだった。
奉納は任意の金額だったので奉納して列に並び、順番を待つ。
父さんたちと話しているうちに自分の番が来た。
聖女様はきれいな人だった。
雲みたいに白いきれいな人だった。
少し緊張した。
「こちらへ」
聖女様が椅子を指す。
建物の中には椅子と机があり、聖女様の案内で聖女様と向かい合う形で座った。
「こんにちは」
「こんにちは」
聖女様は笑顔で挨拶をくれた。
それに答え自分も挨拶をする。
「それでは手を前に」
その言葉と共に差し出された聖女様の両手の間に右手を差し出す。
右手を包んだ聖女様の両手は、暖かく柔らかい。
異性であることを意識してしまい、照れて顔が暑くなったのがわかった。
その様子に気づいた聖女様がクスッと笑って、僕は恥ずかしさで耳まで暑くなった。
当代の聖女は、ダリアの直系の中で数世代ごとに現れる未来を見る能力を持った女性だった。
聖女が未来を見られる人数は限られる。
未来を見る条件は相手に触れること、一度に一人のみ見ることができる。
この能力を公表していないため、知っているのは国王をはじめとした国の上層部、教皇である父などの親族ぐらいだ。
私が見ることができるのは、未来の断片。
映像ではなく、写真のような一枚の絵のように見える。
断片は連続していたり、一部のみだったりするが内容は内容はわかる。
次の子が私の前に来てすぐに、秘めている可能性の大きさを感じた。
先ほどの子達より迫力がある、どんなものが見れるのか楽しみになる。
早く見たい。
差し出された手をギュッと握るとその子は照れていた。
可愛いところがあるのねなんて思いながら目を閉じる。
だんだんと見えてくる未来の断片の数々。
驚いた、この子は魔法が扱えるようになるのね。
断片の中には魔法を扱う様子が見える。
平民で魔法の才能があるのは珍しい。
他の子と違うあの迫力は、魔法に依るものなのかと納得する。
魔法意外にも気になることがある、ほとんどの断片に写る男の子。
いつも二人一緒にいる。
これだけ写るということは、とても仲が良いのでしょう。
微笑ましいことです。
断片を見終わり、目を開ける。
この子、アレンは素質を持っている。しかし、それに気付くことがなければ魔法に触れずに生涯を終えることになるかもしれない。
勿体ないことだ、伝えてあげた方が良い。
通常なら「幸多からんことを」と、当たり障りの無い言葉を伝えるのですが、少しぐらい私情を挟んでも良いでしょう。
この子に伝える言葉はまとまった。
では早速伝えようとするが、断片見たさに名前を聞くのを忘れていた。
「失礼、名前を聞くのを忘れていました」
「あなたのお名前は?」
「アレンです」
「ありがとう」
「ではアレン、少し驚かせてしまうのですが、あなたには魔法の才を感じます」
「えっ?」
当然、驚いている。
お父さんの方も驚いて肩を揺らしていた。
「ほんと?」
「ええ、本当ですよ」
「あなたからは内に秘めた力を感じます、他の魔法を扱える方々と似た感覚です」
「その力があれば善き日々を作り上げることができるでしょう」
「頑張って下さいね」
「は、はい!ありがとうございます!」
祈願は終わり、帰りなさいと促す。
嬉しそうにしながらお父さんと共にアレンが出ていく、その後少し考える。
ちょっと強引だったかな?
いや、そこまで不自然ではなかったはずだ。
大丈夫、大丈夫と自分を落ち着かせる。
そうしている内に、次の子が入って来た。
アレンに続きこの子も同じくらい迫力がある。
この子も見るのが楽しみね。
「こんにちは」
「こんにちは」
「あなたのお名前を教えて?」
「ジェイルです」
「ではジェイル、手を前に」
差し出されたジェイルの手を握り、目を閉じ、見えてくる断片を確認する。
初めの断片が見えたところで面白いことがわかった。
アレンの断片に写っていたのはジェイルだ。
アレンの断片に写る男の子と同じ姿が見えた。
この二人仲が良いのね。
同じくらいの迫力なのも一緒に未来を歩んで行くからなのでしょう。
笑みがこぼれる。
さて、ジェイルの断片を見ているとジェイルが様々な武器、道具を扱っているのがわかる。
ジェイルは器用なのね。
その中でも多いのが剣を扱っている。
剣の才能があるのかしら。
他にも断片を見ていく。
断片を見たが、自然に伝えられることがない。
この子にも自分の才能を知ってほしいが仕方ない。
目を開け、ジェイルを見る。
「ジェイル、あなたの未来に幸多からんことを」
「頑張って下さい」
「はい!」
良い返事をしてジェイルは離れて行く。
アレンたちの元へ合流したようだ。
よし、残りの子達も見ていこう。
意気込み、次々と終わらせていく。
「ふぅ...」
最後の子が終わり、帰ったところで腕を伸ばし、息を吐く。
月に数度のこの行事は、とても疲れる。
合間に休憩を挟んでいるが、それでも疲れる。
それもひとえに私が聖女となってしまったからなのだが。
それはそうと、今日のことを思い出す。
アレン、ジェイル、それぞれ面白い未来だった。
これから二人が何を起こしてくれるのか、楽しみだ。
しっかり二人の名前を覚えておこう。
ふとした瞬間に新聞で見たり、噂で聞くことがあるかもしれない。
忘れないようメモをとる。
僕に魔法の才能があると聞いて驚いた。
衝撃的で固まってしまった。
聖女様の言葉に返事をしてお父さんにつれられ離れてジェイルたちを待つ。
ジェイルたちを待ちながら、魔法の才能があることに心の底から嬉しい気持ちが沸き上がってきた。
具体的な嬉しさはなく、ただただ嬉しい気持ちでいっぱいだった。
ジェイルも終わったようで、こちらに向かってきた。
ジェイルに魔法の事を伝えると、自分のことのように喜び、祝ってくれた。
「あの、お父さん」
「どうした?」
「その、魔法の本を買ってほしいんだけど」
「そうか...」
村に魔法について知っている者はいない。
だから、魔法を知るためには魔術の本(指南書)を読む必要がある。
しかし、魔術の本(指南書)は身分の高い者が取り扱うため、他よりも割高だったらしいのだが、
「よし、買ってあげよう」
「元々お土産を買うつもりだったし、金はある、ついでに本を買ってあげるよ」
「ほんと!ありがとう!」
お父さんは、予想外の出費に目を瞑り本を買うことを許してくれた。
「あっ、俺も剣の本ほしい!」
「わかった、わかった、買ってあげるから落ち着け」
ジェイルは自分も本がほしいと繰り返していた。
もうすぐ狩りの手伝いができるようになる。
狩りの助けになるよう剣が使いたいと思ったのだろう。
けど、村には剣を使う者はいるが、剣術を教えられる者はいない。
そのため、剣術の本(指南書)を欲しがった。
僕たちは本屋に立ちよった。
それぞれの本(指南書)を持ち、ワクワクしながら村へ帰った。




