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魔女の狩人  作者: 林景太郎
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第二話 『神の懺悔』

しばらく歩いてみてわかったが、この森にはほとんど動物がいない。

かろうじて空に鷹ほどの大きさの怪鳥が何匹か飛んでいるのは見かけるが、それ以外に動物は一切見当たらない。


ただ、植物はたくさん生えているので単純に動物が住んでいないだけなのかな、と思った。

その植物も、地球では見たことのないようなものばかりで、やっぱりここは異世界なのか、という気持ちが強くなる。まあ、まだ凄く珍しい植物や生物(鳥)が生息している地球の森説も多少はあるが。





歩き始めてから小一時間が経ったころ、俺は古びた教会のような建物を見つけた。

「なんだ、ここ?」

俺は何故か妙にこの教会が気になって、教会の入り口に近づいてなかを覗いた。


「うっ、」

俺は思わず口に手を当てた。

なかは酷い惨状だった。椅子は壊されシャンデリアも割れ、血が至る所に付着していて、そして、人のものらしき死体があった。


「……」

俺はしばらく呆然とその場に立っていた。

何故だろう、普通、俺みたいな普通の高校生男子が人の死体なんて見たら失神もののはずだ。


だが俺は、自分でも驚くほどには落ち着いていた。

まあ多少は震えていたが、それにしてもおかしなほど落ち着いている。


いったいどうしてだ?そう思いつつも、俺は死体の近くに落ちていた本が気になり、それを手に取った。


「本のタイトルは『神の懺悔』、か。いかにも宗教っぽいけど…この人神父かなんかか?格好もそんな感じだし」

そう言って本を開こうとして、俺は一つの違和感に気づいた。


「なっ、よく見たら日本語じゃないぞ、この文字。普通に読めたから一瞬気づかなかったけど。……なんで読めてんだ」

やっぱり記憶がない間に何かがあったとしか思えない。いったい何があったのか。

考えても結論は出ない。


俺は、かなりの引っ掛かりを覚えつつ、本を開く。

「えっと……はるか昔、我ら人類を創生せし偉大なる神、マートティマは後悔なされた。何故我は愚かなるシルグディアに力を与え、恐ろしき"魔女"を生み出してしまったのか…」

そこまで読んで俺は、決定的な違和感を覚えた。


"魔女"という単語にだ。

どうにもおかしい、魔女という単語を見た途端に、何故か、全く知らない少女の、笑った口元が頭に思い浮かんだのだ。


魔女、いや、この頭に浮かんだ少女は、俺の記憶喪失と何か関係があるのか、いや、そもそも俺がこの世界に来た事情も、何か知っているのかもしれない、そんな予感が、俺にはあった。


「…しっかし、手がかりも何もないんじゃなあ」

もう一度『神の懺悔』を開いたが、これ以降は

その魔女がいかに恐ろしいかを淡々と語っているのみで、大した情報は得られなかった。

そして最後に、書にはこう書かれていた。


ーーーだから、我らは魔女を狩らなければならない


俺はその文字に、ひどい憎悪を感じた。


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