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 きっかり一時間後、ノックの音がした。


「こんばんは!」

「中へ入って」

 元気すぎるほどのシャルジュの声に、大地が室内へと招いた。部屋のロックはモタルドクをオフにした後解除してある。


 挨拶の声とは真逆に、そうっとドアが開き、部屋の中を覗き見でもするようにして扉の陰からシャルジュが顔をのぞかせた。


 大地はベッドの端に腰かけ、膝の間で両手を結んだままシャルジュを見た。コソ泥ふうな動きにくすっと笑う。


「こっちへ来なよ」

 ソファに深く身体を預け、片方の脚をもう片方の膝の上で組んで、ゆったりとくつろいでいたランスが、前方斜め下に向けた人差し指で自分の向かいのソファを指示した。


「おっじゃまっしま~す」

 それが彼本来のふるまいなのだろう。シャルジュは軽快な足取りでランスの方へと向かった。


「時間どおりだな」

 ランスがソファに落ち着いたシャルジュに言った。


「まあね。これが仕事だからな。ご用命いただきありがとさんです」

 言葉の使い方とは別に、それがシャルジュなりの本音だろうと思える。裏表のなさそうな少年だ。


「この街のこと、詳しそうだからな」

 言いながら、ランスはクアルニィグのいちレグ金貨を一枚、シャルジュの正面を避けて親指でピンっと弾いた。


 シャルジュがさすがの反射神経を見せて、さっと腕を振り上げ自分の頭の少し上辺りで見事金貨をキャッチした。


「毎度! いいのかい、こんなに?」

 手のひらの中にある金貨を今一度しっかりと確認して、シャルジュは予想外の金額に嬉しそうに笑った。


「ああ。その代わり、お前が紹介した店に不満があったら、明日は用無しだ」

 ランスがぴしゃりと言った。


 金貨一枚が紹介料という対価として釣り合いが取れているのかは判らなかったが、素直に喜んでいるのを見ると、大地は出逢って間もないこの少年に妙に親近感を覚えるのだった。


 少年の持つ雰囲気だろうか。あけすけなもの言いだろうか。屈託のない素直さだろうか。おそらく、幼い頃から、貧困だのいじめだの体罰だの悪徳だのと一切関わらずに生きてこられたのだろう。


 クアルニィグの治安の良さは、押しなべて裕福とまでは言わなくても豊かな生活を可能にしてくれているらしい。


「お兄ぃさん方は、どんなとこが好みだい? 予算は?」

 早速、シャルジュがたずねた。


「大地?」

 ランスが大地の意見を求めた。大概いつもそうだ。自分のことよりも先に大地の意向を確認する。宇宙空間で遭難し、救助された自分がまるで賓客扱いだ。


「そうだなあ。……、この街らしいところがいいかな」

 地球型──と言ってよければ──の動植物、人間の腹を満たすものの生態はおそらく驚愕するほどの違いはないのではないかと思える。というより、基本的な部分では似通っているのではないか。陽の光があって、水があって、酸素があって、諸々、諸々。


 それなら、自分の持っているイメージでシチューとかオムライスとかを期待するよりも、シャルジュに丸投げする方がいい。


「お前に任せる」

 ランスも同意し、シャルジュに向かって言った。


「分かった。じゃあ、行こうぜ。味も、客も、この街らしいとこに連れてってやる」

 シャルジュが楽しそうに言った。



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