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シャルジュが持たせてくれたクアルニィグの土産物は、大地には美しい瑠璃色の玉ひとかたまりから削り出した瑠璃鳥のオブジェ、ランスには柄の端に一つと鞘の部分に色とりどりの玉のはめ込まれた短刀だった。
翼を広げ、今にも飛び立とうとしている瑠璃鳥の姿は躍動的で、ともすればそこに生命が吹き込まれているような気さえした。短刀の方は観賞用と言っていたが、もちろん使用にも充分耐えられるものだという。
『大市で持ち込まれた新しいやつだぜ。リーガスのおっちゃんが仕入れたんだ』
寂しさと、喜んでくれるかという期待とが入り混じったみょうちくりんな表情でシャルジュは土産物を大地たちに差し出したのだった。
二人に向かって「また来てくれよな」と言うシャルジュへ、「またいつか」と答えた大地に、それはとてつもなく切ない思いを抱かせることとなった。いつかは多分来ない。それに、シャルジュにもなんとなく分かっていたことのような気もする。
ひとしきり眺めたあと、美しいクアルニィグの土産物はライブラリーとして使用している一室に収めることにした。
「さて、お待ちかねの回答。といきたいところだが、その前に大地に一つ聞いておこう」
ランスがおもむろに口を開いた。
「うん?」
「俺は大地にとっての何者であるか」
真面目な顔つきでランスが言った。
大地にとってランスは何者であるか。問を向けられて大地は思考を巡らせる。
──救済者。生命の恩人と同義だ。主の命を受けて、地球を共に探してくれる者。知を与えてくれる者。クアルニィグで共におかしな体験をした。ヒトとは違う者。身体を、外見を自由に変えられる者。ああ、あの落雷を装った不可視の波動……。
思考の連鎖が、そこで止まった。
ある一つの考えが大地を支配した。
何にでも変え、何にでも変わるもの。本来隠しておくべきものを敢えてランスが大地に見せた、唯一スビニフェニスに存在するもの。
──ヒト、と括って悪ければ、生物じゃないのか。
「ランス、君はもしかして……」
「そのとおりだよ」
ランスはまっすぐに大地を見て言った。
「はっ……」
大地は驚きながらも笑いそうになった。
──そうか、そういうことだったのか。
夜目が聞くのも、耳がいいのも、食が細いのも、睡眠不足を心配させるのも、図形や数字に強いのも、すべて納得がいく。
「オーケー。分かった。形を保つこととその逆との違いは、説明は、聞かないでおく」
聞いたところで一から十を理解できるとは思えなかった。それよりも概念で充分だ。
「で、どうだろう?」
ランスは訊ねた。
「これからも頼りにしてるぜ、相棒」
すっきりした笑顔になって、大地は答えた。




