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「チャーター便のご利用、誠にありがとうございやした」
定期便以外の運行がよほど珍しいのか、楽しそうな連絡船操縦士の挨拶を受けて、大地とランスは駐船ポート管理棟へ向かった。
「一人ずつ順番にそこのゲートを通ってください」
係員の指示に従い、ランス、大地の順に短いトンネルのような通路をゆっくりと進んでいく。
トンネルを抜け出たすぐ脇で、二人は止められた。
「持ち出し禁止物がありますので、提出していただきます」
税関ならば強い口調で言われそうなシチュエーションだが、係員の言葉は穏やかで、日常的だった。
「持ち出し禁止物?」
大地が聞き返した。心当たりはある。
二人の所持品と言えば、イルヴァからの預かり物、帰り際にシャルジュからもらったクアルニィグの土産品だ。
「そちらの方は、カプセルを、あなたは鳥笛を」
ふと大地は、イルヴァは最初からそのつもりで自分たちにそれらを預けたのだろうか、と思った。
ランスは例のこぶし大の金属製らしきカプセルを、大地は結局鳴らすことのなかった鳥笛を臆することもなく、言われるまま素直に提出した。
「では、以上です。お疲れさまでした」
係員は職業的微笑でそう言うと、二人を解放した。
クリーニング品を受け出し、着替えてから連絡通路の接続を待つ。セルクク星を去るという間際になって、大地はなんだかとても心がふわりと落ち着かない自分を感じた。普通の旅行をしていたって、こんなふうに気持ちが引きずられることはない気がした。
ランスは相変わらず冷静さを保っている。
「行こうぜ」
進入可の合図灯が青くともったのを確認してランスが言った。
帰りの連絡通路はとても短く感じられた。
<お帰りなさい、大地、ランス>
エスネムの声が弾んで聞こえる。
「ただいま」
大地は、実体のないエスネムに向かって話すのにもだいぶ慣れた。誰かに、何か物に向かって話すというより、概念に向けて、あるいは独り言のような感覚だ。
<よろしいですね。隔壁閉鎖。連絡通路、接続解除。外部ハッチ閉鎖……>
自動制御が実行され、エスネムがアナウンスを開始した。
<それでは、発進します>
シヴァン・アルレットはその場で百八十度方向転換し、駐船ポートのゲートへと向かった。
帰りは来たときとは違い、停止を求められることもなく通過した。管制塔から見守る小さな人影は、スビニフェニス船籍に多大な興味を示したあの若者とは違うようだ。
ポートを出ていくらも経たないうちに、一隻の船とすれ違った。武骨な印象の船だった。
「また珍しいお客さんかな」
大地がつぶやいた。




