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土産物を見繕ってもらうのも、何かのイベントのチケットを取ってきてもらうのも、夜の夜中では無理だ。貴重品の類など何もないのだが、いっそこの部屋で待機してもらうか。
「ここで留守番してもらうのはどうだろう?」
最初ほどの感激はないにしても、シャルジュにとっては面白いミッションかもしれないと思う。
──待てよ。
言ってから大地は思い出した。幕舎での刺客の件もある。それにランスが預かった例の危ない物を、捜しに来る者がいるかもしれない。もちろんタイミングの問題ではあるのだが、自分たちの代わりに部屋にいるシャルジュが危険な目に合わないだろうか。
「いいんじゃないか?」
大地の不安をよそに、いともあっさりとランスが答えた。
「ああ、その。預かり物とか、刺客とか……」
「あれは俺が持っておくさ。それにアーヘルが箱を開けるまでは大丈夫だ。その前に片を付ければいい。それに、最後の夜に怪しい奴は処理しておいた」
「ええ?」
一瞬大地は耳を疑った。
やはり再び襲撃者はやってきていたのだ。眠りに落ちるときに感じた気配は、夢などではなく本当だったのだ。それにしてもそんなことがあったなど、一言もランスは言わなかったではないか。これ以上の襲撃はないと確信したのか。それともいつでもかかってきなさいという余裕なのか。
「そうだった、言うのを忘れていたな。まあ、そういうことだ」
大したことでもないようなものの言い方をして、ランスが軽い笑みを見せた。
「そうか。ならオーケーだ」
驚きはしたが、ランスならあり得そうだ。
刺客の件は解決済み。預かり物についても、箱の中身、おそらく密輸のメインであるはずの物が消えたことが、アーヘルに知られるまでは安全というわけだ。ランスの中で処分のタイムテーブルはほぼほぼ出来上がっているようだ、と大地は思った。
コン、コン、コン、コン、コン、コン、コン、ココン。
リズミカルなノックの音がした。シャルジュが来たのかもしれない。
大地は立って行って扉を開けた。予想を裏切らずにシャルジュがうきうきしたようすで立っていた。
「お待ちどお」
相変わらず元気いっぱいだ。
街に戻ってきたときのほこりにまみれた姿とは打って変わって、もちろんこっちが平常なのだが、こざっぱりとしている。
「どうする? おすすめはあるか?」
ランスが最初に大地の方を向き、それからシャルジュに訊ねた。
「外へ出るかい、それとも隣?」
指先で酒館のある方を示し、シャルジュが夕食のプランの絞り込みを促す。
「そうだなあ……」
いつの時点で行動開始になるのかが不確定であるため、あまり遠くへ足を延ばしたくもない。
「隣にしようか」
大地は親指だけを立てて示し、言った。
「オッケー。すぐ出られる?」
「ああ」
「行こう」
三人は酒館へと向かった。
夕食時とあって、客の数は多い。食事をしている者が多いが、晩酌目当ての客がまだまだこれから増えそうな様相を呈している。一階の席は三人で座れる場所がなく、二階へと上がる。吹き抜けの真ん中を通るオープンな階段を上って行くと、幾つか空きがある。手すりのすぐそばの、一階を見下ろせる場所に陣取った。そういえば、イルヴァたちもこの辺りに座っていたな、と思い出す。




