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イルヴァを見送り、大地は部屋の鍵を掛けた。ランスは鳥笛を大地に返したが、特に感想も評価も言葉にしなかった。
「案件の重要性はどこに線を引けばいいんだ」
大地がポケットに鳥笛を仕舞って、独り言のように言った。人の主観は驚くほどにさまざまな基準を設けているものだ。
「まあ、イルヴァが異星人だと俺たちは仮定しているが、つまりはチャットみたいには使うなということなんじゃないか?」
「チャット?」
「ああ。予定通りに事が進んでいるならいちいち報告は必要ないってことだろう。プランAがBに替わる場合とか、互いが知っておくべき情報を得たときに知らせる、でいいだろう」
「なるほどね」
大地は腑に落ちて、ランスの思考パターンの客観的な部分を見習いたいと思った。
自分は重要性という部分にフォーカスしてしまったが、もっと俯瞰してみればなんのことはない。ものすごく単純なことだと解る。極めて速い通信事情に慣れた者にとってセルクク星のような環境下では、少しでも利便性の高い物を活用したくなることによる印象の乖離、認識の落差を示唆したのだろう。
ランスがモタルドクを起動させた。揺らぎの空間がアーヘルの動きを追っている。
「人の出入りはあるようだが、行動半径は狭いな」
「荷を受け取りに行くのに人手が必要だろう。まさか一人では……」
「ああ、無理だな」
アーヘルがどういうふうに荷物を運ぼうとするのか想像するのも面白い。
なんとか商会などと組織だっていないという一匹狼のアーヘルなら、雇うのは口を閉ざすのに充分な報酬のみによって動く者たち。もしかしたらこの国の者を避けるのかもしれない。国境に滞在する大義のなさそうなツェイン・マルギアナの兵士たちの中に、こっそり抜けて来るものを募ったりするのではないか、とか、大地の妄想は広がっていく。
「すぐに動く気配ではないな」
「そうみたいだ。少し休んでおこうかな」
夜になるかもしれない捕物劇に備えて、大地は休めるときに休んでおこうと思った。
「ああ、それがいい。エスネムに任せて、シャルジュが来るまで眠るといい」
ランスがモタルドクを閉じて言った。




