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 それはいつからのことを指しているのだろう。今現在、国軍が公爵家の私兵を制圧するという任務を遂行すべく、作戦の途上、アクシデントによる休止状態にあるわけだが、まさかそのことだけではないだろう。


 公爵令嬢サリエルが捕らえられた辺りが発端と思われる。いや、しかしイルヴァの逃走劇の実態すら正確なところは知らされていないのだ。もっと根の深い部分からそれらはずっと繋がっているのかもしれない。


 ランスと大地が、眼差しだけでイルヴァに話の続きを促す。


「サリエルは、単純に言うと敵の罠に掛かったのよ。偽の情報を受けて、独断で兵士を出すように仕向けられた」

 敵、と言ったか。


 国王の忠実な臣下であるらしい公爵ウィングロム。その娘に、謀反と誤解されるような行動を取らせるだけの重要な情報とはいったい誰がどんな目的で出すというのだろう。


「令嬢がクアルニィグのために良かれと思って派兵した?」

 大地がつぶやいた。


 これまでに見、聞き及んだ断片的な情報の中からは、サリエルが愛国心に由って行動を起こした可能性を拾い上げることはできる。それが謀反と扱われたのなら、国軍にも偽の情報が流れたということになる。


「なら、目的は内乱を勃発させることか」

 ランスが付け加えた。


「そう。だから、どうしたってここでの衝突は防ぎきらなくてはならないの」

「なるほど」

「わたしがここへ来ているということは、国軍に薬を盛ったのがイルヴァ・ロビだと知られていないということよ。つまり、あなたたちはもう、今すぐ国に帰るか、わたしに協力するかを選択する必要があるってこと」

「なるほど、二択か。なら協力するしかないな」

 大地は迷わず言った。


 イルヴァが目的を遂行するために努力しているのと同じように、敵もすんなり手を引くとは思えない。しかし、平和のためである崇高な目的への努力は報われるべきだ。可能性がある限り、あきらめてはならない。未来は自分が歩んだ道の先にある。


 仮に再び襲撃を受けても、あるいはたった今エスネムから、宙航管理局からお待ちかねの通達がありましたとの連絡が来て、現時点で選びようのない選択肢が選択可能になったとしても、乗りかかった船だ。自分にやれることはしたいと思った。ランスの方へ顔を向けると、相棒はしっかりと頷いた。


「いいだろう」

「ありがとう。心強いわ」

 イルヴァはようやくくったくのない笑顔を見せた。


 それにしても、通商条約を締結するための使節団が来訪しているさなかに敢えてことを起こすというのは、クアルニィグとツェイン・マルギアナとの関係性にも影響が出るのではないのか。しかも密輸との噂もある。この国の商人だけでなく、向こうの商人、或いは疑いを持たれている兵士たちにも関わるというのであれば、内乱どころか両国の戦争にも発展しかねない。


「令嬢が受け取った情報の具体的な内容は判っているのか?」

 ランスが訊ねた。


「ええ」

 イルヴァは即座に答えた。



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