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「シャルジュは大地を手伝ってくれ。あんたは俺と一緒に地均しだ」
目的の場所に到着し、ランスが現場監督よろしく指示を出す。
大地には、ランスから伝えられた概要が自分のイメージしていたとおりだったことで、差し障りのない円滑な作業が見込まれた。
力仕事は任せろとばかりに、ランスと兵士が雑草を刈り払い、数カ所ある段差を均していく。
シャルジュはランスの作った滑車を興味深げに眺めていたが、大地の指示に従って作業を進めていくうちに、自分の描いていた完成予想図が刻々と変化していくのか、しきりに感嘆詞を連発していた。
勾配の上側に少しずつずらして地面からの定滑車を二カ所、下側の一カ所と高低差をつけて近くの木を利用した一カ所に合計四つの滑車が設置された。台車を降ろし、いよいよロープを張り渡す。
完成形を見たときに、シャルジュと兵士はまだ、それがどれだけの労力を軽減してくれるのか想像はできていないようだった。
勾配の下で高い方の滑車から垂れ下がるロープを下に引くのと同時に、上では滑車とは別にもう一本台車に繋いだロープを持って引き上げる。台車には積荷の落下止めも装備され、水樽の移動は各段に楽になった。
測量をしたわけでもないのに、いくら暫定とはいえランスの計算の速さと確かさには舌を巻く。
「ええ~? いいんだろうか、こんなに楽をしちゃって」
兵士が弾むような声で言った。
「仮設だからな。耐久性はないし、使ってみて不具合も出てくるだろう」
常設にできるほどのものではない。
すでにある素材と仕組みを応用したというだけのことだ。しかし、これがきっかけになって改良を加えていけば、もっといいものが造れるだろう。ロープの強度が足りないと思えば金属糸のワイヤーが発明されるだろうし、悪路での安定性が欲しければゴムタイヤができるだろう。
関与を制限されている星々では、生命の淘汰も、進化も、あるいは変異も、宇宙連合の管理の下、すべて統計のため吸い上げられることになっているらしい。が、これくらいなら干渉のうちには入らないだろう。
ただ、ニュートンが目撃した落果するりんごのごとく、きっかけを作ったに過ぎない。
いや、それとも地球においても、時代の早過ぎた発明や、人々の理解の追い付かない論説や思考などには、もしかしたら外宇宙からの関与があったのかもしれない。自分たちがそれと知らないだけで、物事への視点を単に他へと誘導されたことによるのかもしれない、とふと大地は思った。
「これ、上に報告していいっすか?」
兵士がランスに伺いを立てた。
「あんたの思いつきってことにするならな」
宙航管理局からの通行止め解除の連絡が入れば、大地たちは再び宇宙の旅人となる。今でも充分に目立ってしまっているのに、これ以上この星に名前を残すわけにはいかないだろう。
「いやあ、それはちょっと信用してもらえそうにないかもっす」
でへへ、と兵士は笑った。




