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 まさか文明の利器をこっそりと使ったとでもいうのだろうか。まあ、この場では追求しないことにしよう、と大地は思った。


「で、公爵家の私兵の目的というのは分かったのか?」

 そもそもの発端だ。


「大体のところはな。兵たちは今、公にできない荷を保管している」

「公にできないって、まさか密輸品だとでも?」

 傭兵たちの噂話を思い出す。


「いや、それがちょいと複雑らしくてな、イルヴァが今こっちへ向かっていて、公爵家の兵士たちと合流することになっているそうだ」

「ランス、悪い、全然相関関係がつかめない」

「ああ、俺もだ」

 こともなげにランスは答えた。


「って……」

「とにかく、俺たちは自分たちの身を守りつつ、国軍と公爵家の部隊との衝突の回避に努めればいいってことだ」

 まあ、分からないでもない。


 仮にイルヴァが志を掲げて何かをしようとしているのなら、たまたまイルヴァと同じ異星人という立場であったとしても、一介の旅行者である自分たちが図らずも関わることになったというだけで、兵法にもあるとおり、詳細を教えたりはしないだろう。


 さきほど大地を狙った不審者の存在しかり、どこに敵方のスパイや刺客が潜んでいるか分からない。男たちの話題に上る噂話は、攪乱、揺動目的で真実も虚偽もないまぜになり、広められたのだろう。情報をすべてうのみにはできない。


 セルクク星のためにというイルヴァの志を信じるとして、大地たちを駒とするなら喜んでなってやろう、と思う。それにイルヴァはきっと、口に出して自分が異星人であるとは決して言わないだろうと思えた。


「さすがにすっきりはしないがな」

 大地は好奇心が掻き立てられるばかりで、一向に全容が見えてこないもどかしさについ不満を漏らした。


「よし、このくらいでいいだろう」

 大地のつぶやきが聞こえなかったのか、聞こえなかったことにしたのか、ランスが、ひとまとまりになった廃材や資材を算定したらしく、シャルジュにも聞こえるように言った。


「ねえ、いったい何を作ろうとしてるんだい?」

 シャルジュが、ようやく顧客の外国語の会話が終わったことに安堵したのか、興味深そうに訊ねた。


「楽をするための道具だよ」

 ランスはにやりと笑ってそう答えた。


 翌日使う荷車にかき集めた材料を放り込み、三人はテントへと戻った。


 まだ話に高じている者、何かの賭け事に夢中になっている者たちもいる。そろそろ眠りについた者、眠ろうとして慣れない環境のせいかしきりに寝返りを打つ者もいる。


 そうこうしているうちに、国軍の兵士が消灯を告げに来た。テント内の灯が消された。ひそひそ声の会話もいつしか止み、寝息やいびきが聞こえ始める。


 大地は無理に眠ろうとはせずに、ただ暗闇とそこにある音とに身を委ねた。


 朝、目が覚めたとき大地は、寝落ちする瞬間のかすかな意識のどこかで、ランスが寝床を出て外へ行ったような気がしたのは、夢だったのか現実だったのかと思い巡らせた。その答は、作業に取り掛かるというときに明らかになった。


 集めておいた材料は、すでに形になっていた。夜の間に、ランスが一人でこれをやったのだ。本当に、いつ眠っていつ起きているのか分からない。いっそナポレオン並みに、眠らなくてもいいのだろうかとさえ思う。自分に声を掛けなかったのは、大地の手を借りる必要もないからだろうが、少しばかり寂しい気もした。


 シャルジュは昨日の状態と今とを比べて、これがどんな使われ方をするのかとしきりにああでもない、こうでもない、と予想を立てている。ランスはわざと回答をせず、シャルジュの思考のプロセスを測っているようだった。


 昨日の兵士が再び同行することになった。もう充分だというのににランスに礼を言い、それから例の不審者のことも話題にして、すでに彼の中でランスは英雄になっているようだ。


「今日はこれを使おうと思う」

 ランスの一言で、荷車に積んである使途不明な工作物について、兵士は一切の疑問も意見も口にせず、まるでランスの直属の部下ででもあるかのように付き従う。


 大地は現場についてからのことを想像し、つい笑みをこぼした。シャルジュがそれを見て、自分でも明らかになっていないすぐ先の未来の兵士を想像したのか、それまでに増して道行く足取りを軽くした。



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