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「現状維持がいいとは、一体どういうことだ?」

 タレスターフの言葉での会話なら、シャルジュには聞かせたくないことでも配慮せずに済む。


「まず、国軍の兵士たちの発熱は、イルヴァの仕業だ」

 ランスが特段の感慨も含まずに言った。


「イルヴァの?」

 大地は思わず聞き返した。


「ああ、最初にやってきた国軍に、イルヴァが薬剤を仕込ませたそうだ」

 それならさっきの不審者が混入させたという薬物とは別物なのか。


 大地は疑問を口にはせず、ランスの言葉を待った。


 シャルジュはこちらのことなど気にせず、与えられた作業をしっかりとこなしているようだ。もちろん、大地もランスも口だけを動かしているわけではなく、使えそうな材料を選んでは一カ所に寄せていく。


「この星で調達できるものだけで調合した、高熱が続くだけという薬だそうだ。目的は国軍の足止めで、ここに留まらせておくことで、公爵家の私兵との衝突を回避している」

 なるほどそれなら解る。


 イルヴァが自身の大義に則って行動しているのなら、どちらか一方のみに有利に働くようにしているわけではないはずだ。一見国軍に害を及ぼしているのではないかという疑問も、解消する。エスネムが送ってくれた映像で観たあの場面は、薬剤が投与されたときのものなのだろう。


「じゃあ、さっきの不審者が入れたというのは?」

「そう。それが問題で、イルヴァの薬剤の解毒剤というか、早い話が熱冷ましだな。やつが入れる前に奪取できたから、別なものとすり替えておいたのさ。で、大地はイルヴァと間違われた可能性が高い」

 不審者は国軍の活動──私兵の討伐、あるいは捕縛──を再開してもらわなくては困る立場ということか。


「ということは、不審者も異星人ってことか」

「そういうこと」

「なにがどうなってるんだ。この星は介入禁止じゃないのか」

 セルクク星の二つの都市が、平和の名の下の均衡を星外からの意図によって破られようとしているのだろうか。


「禁止事項が常に遵守されるとは限らない」

 そうだ、よく聞いた話だ。もし~なら警察は要らない。


「情報はどこから仕入れたんだ?」

「公爵家の私兵のいる場所だ」

 先ほど外へ出たときであることは間違いないだろう。平然と答えるランスだが、しかしモタルドクで確認した限りではこことは距離的に離れていて、時間にはそんな余裕はなかったはずだ。


「いったいどうやって」

「なあに、ひとっ飛びさ」

 ランスはにっこりと笑って言った。



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