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「薬の時間だ」

 何等かの役職のあるように見える兵士が言った。


 介護にあたっていた数人がそちらの方へと移動した。ごく薄い紫を帯びた液体が樽に入っている。それを大振りのポットに小分けにしてはどんどん渡していく。


 注ぎ口の長い入れ物に移し、横たわる兵士の口へ流し込む。シャルジュが、体温を下げる効果のある薬草を煎じ詰め粉末化したものを、さらに水に溶かしたものだと説明してくれた。発熱してからの体温と時間の推移が記録されていたが、これまでのところ解熱薬の効果はそれほど出てはいないようだった。


 クアルニィグの単位で四十度ほどの熱は、脳に致命的ダメージを及ぼす値にまでは上昇しないようである、というのが医師たちの共通の意見だった。熱冷ましを与える以外に経過観察しか術がないというのも、大地にとっては歯がゆい思いのする状況だった。


 スビニフェニスの、いや地球の医療、研究機関の設備がここにあれば、原因を突き止められるのかもしれないというのに。セルククのような星々への関与が宇宙連合によって制限されているのは、生命のひとつひとつを単一の存在としてカウントはせずに、星という大きな括りの中の一というデータでしか見做していないという理屈なのだろうか。


 それは大地の感傷にしか過ぎないのかもしれない。


 この宇宙に、いったいどれだけのものが存在しているのか。人間が崇める全知全能の神などという存在さえもミクロな一分子にしか足り得ないほどにこの大海は未知であるのだ。人間がラットを観察するようなことが、星単位、銀河単位で行われているのかもしれない。


 大地はこの一件で自分の中に急に芽生えた宇宙の大きさというものを改めて、概念でしかないが、感じたのだった。


 イルヴァはクアルニィグにとてもよく溶け込んでいるようではあるが、やはり内在する意識を完全に消すことはできていない。分かるものには分かる何かがそこはかとなく漂っている。


 大地にもランスにもきっと同じことが言えるのだろうが、何しろ余所者という立場の観光客が現在の実際の立場である。クアルニィグの人間から珍しいとか変わっているだとかおかしいだとか、たとえどんな違和感を抱かれようが、二人は異境の人で済まされる。


 シャルジュやさっきの水汲みの兵士のようすからは、セルククの外を匂わせるものは感じられない。この星の人間であることに間違いはおそらくない。


 そうした、ある意味勘頼りのアンテナを、大地は四方に張り巡らせた。


 と、違和感を覚える。


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