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 微かに光が走ったと思うと、あまり間を置かずに雷鳴がした。樹々の隙間から見上げると俄かにふつふつと湧き出てきた雲にこちらの空は青さを失いつつある。


「うひゃあ、こっちも降りそうだな」

 シャルジュが向こうの空からこちらへと視線を移して言った。


「急ごうぜ。予備のロープを持ってきてくれないか。先に樽を上げちまおう」

 シャルジュはランスが言い終わらないうちにもう、傾斜を上り始めた。大地はランスに手を貸して、二股に分かれた樹の根元でかろうじて落下を止めた樽を台車の上に戻した。水はこぼれていなかった。どうやら頑丈かつ精密な造りらしい。


「どうする? 起こす?」

 ロープを取って戻ってきたシャルジュが兵士の方を指して訊ねた。


「いや、樽を運び上げてからでいい」

「了解っ!」

 三人で最後の樽を上まで引き上げながら、大地は、押し上げるのがランス一人になっても、自分の、そしてまたそのようすから判断するにシャルジュも、先ほどまでと同程度の力で済んでいることに気づいた。


 ふと、ランスが実は底知れない怪力の持ち主で、さっきは三味線を弾いていたのではないかとさえ思ったくらいだ。


 荷車に樽を納め、ランスは川縁へと降りた。


 軽く刺激を与えて兵士を起こす。意識が戻った兵士はあたふたと周囲を見回し、自分の現状を認識するまでに少しばかりの時間を要し、それからランスに助けてもらったことの礼を言った。


「雨が降りそうだ。早く戻ろうぜ」

 手をひらひらと、大したことじゃない、と示しながらランスは兵士を促した。


 濡れた衣服が身体を冷やしはしないかと、大地は二人を案じていたのだが、ランスはどうせ降りそうだからとさして気にも留めない。


 帰りの道行きは通常往路より復路の方が時間的に短く感じるものであるばかりでなく、心なしか足取りも急き気味だったのか、思ったよりもずっと早く野営地に到着したような気がした。


 ずぶ濡れの二人を、兵士たちはいったい何事が起ったのだと興味深げに見ていたが、それでもランスと兵士に着替えを用意してくれたし、温まるための毛布も貸してくれた。


 折しも雨が降り出した。


「作業中止~! 全員待機!」

 どこかから良くとおる声が大きく響き渡る。


 わらわらとみなが、十数人ずつテントへ入り当分雨宿りとなった。馬たちは簡易な屋根の下に繋がれた。大地はランスとシャルジュと共に、高熱を出した兵士たちのいるすぐ横のテントを割り当てられた。


「気になるだろう」

 ランスはにやりと笑みを浮かべ、一瞬だけ隣のテントに視線を動かして大地に言った。


「まあね」

 かと言って部外者が勝手にテントを行き来することもできない。この雨でもなければ、人目につかない場所を探してモタルドクを起動するのに、と大地は思った。


「ちょっと用足し」

「え?」

 大地が反応するより早く、ランスは毛布を大地に投げ寄こし、テントを出て行った。



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