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 馬場にいる馬はすべて駆り出され、大地、ランス、シャルジュは国軍の兵士たちと共に、公爵家の私兵の消えた場所であり、国軍の兵士たちの駐留している場所である国境へと向かった。


 初め、馬で行こうとしたシャルジュだったが、大地自身が足手まといになるのを嫌ってランスと共に馬車で行くことを選択したため、それに合わせて馬車上の人となった。


 乗合馬車のように乗り心地を考慮した造りではない積荷専用の馬車は、揺れや跳ねには強いものの、何しろ人が座るようにはできていないため、身体の納まり具合でいうと目的地までの行程がおそろしく長く感じられるものだった。


 それでも普段経験することのないこういった事態に、少しばかり沸き立つ思いを抱いて、大地はしっかりと荷台の縁につかまり、乗り心地の悪ささえも体験とばかりに受け止めていた。


 数台の荷馬車と、かき集められるだけ集めた馬たちと兵士、十数人の()()。具体的な指示は受けていなかったが、話の断片から察するに、どうやら動きの取れない国軍の兵士たちの救護が目的らしい。民の見かけた早馬は、伝書の鳥に託された救援要請に対する第一陣、詳細な状況を把握するための先発隊だったようだ。


 ランスが最後に確認したシヴァン・アルレットからの画像から想像するに、ほとんどの兵士が高熱に苦しんでいるはずだ。幌の付いた小振りな馬車には医師たちも搭乗していると聞いた。動かせない者については現地での養生が必要となるのかもしれない。


「ウィルスや伝染性の疾病じゃなきゃいいんだがな」

 ランスが危惧しているのは、それなりの防護設備の整わないセルクク星の環境だろう。


 クアルニィグの医療がどの程度のものなのかも分からない。大地はワクチンを接種しているが、現段階でそこにある高熱の原因が、かつてあるものだと断言できるわけではない。ミイラ取りがミイラになるような状況だけは避けなくてはならない。


「ああ、ケツが痛え」

 シャルジュが座り心地の悪さに辟易したようすで、体重のかかる位置をずらしながら言った。


「まあな、しょうがないさ。馬に乗ればよかったのに」

「いやあ、俺だけそんなわけにはいかないさ。大事なお客様たちを差し置いて」

 大地が言うと、シャルジュは苦笑いをしてそう答えた。


 くすっと笑い、大地はそれ以上は言わなかった。自分でも身体の位置を調整しながら、これもまた経験、と楽観的に考えるようにする。


 どれだけの時間が過ぎただろう。途中一度の休憩をはさみ、さすがにもうダメージのない部位がなくなったと感じた頃、ようやく一行は目的の場所へと到着した。


 待機を命じられ、他の臨時労務者たちから少し離れて三人は木陰に腰を下ろした。


「兵隊さんたち全員が熱を出すって、そんなことあるのかな」

 シャルジュが周りに気を配り、小さな声でつぶやいた。


「人にうつる病気や黴菌ならな」

「そうか、その手があったか」

 セルクク星で、例えばチフス、ペスト、流行性脳脊髄膜炎、ポリオ、インフルエンザ、コロナなどに相当する伝染性の疾病等があったのかどうか大地は知らない。しかし、シャルジュの言葉からは、たとえあったとしても全世界を同時に震撼させるほどの大事に至る規模ではないように感じた。


「なんなら俺が確認してこようか?」

 ランスがいとも気安く言った。

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