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 この時を待ってましたとばかりに、生き生きと輝きだしたシャルジュの表情が大地たちに向けられる。


「俺が酒館でもうそろそろ食べ終わるって時に、マルギアナの人たちが入ってきてさ、ガチ地元の言葉だから、ちょいちょいしか聞き取れなかったんだけど、まあ、大体は仕事の話っぽかったな。で、ものすげえべっぴんさんがいてさ、つい見惚れちまったらさ、なんと、男だったぜ。しかも、劇場でちらっと見かけたあの人さ」

 シャルジュの興味の対象が、美貌なのか、女装なのか、それとも他にあるのかは置いておくとして、大地に、イリアの変身を見抜けなかったのは自分だけなのだろうか、という思いが過った。


「ほう」

 ランスのそれは、おそらくイリアの目的に対する興味だろう。


「仲間と最初は一緒に食事してたんだけど、後から入ってきた男に呼ばれて二階席へ移ったよ。男の方は、最近この界隈で名前を聞くようになったアーヘルって人で、あちこちの問屋に顔を売り歩いてるって噂だ。何でも資金はたっぷりとあって、金に物言わせて……、まああんまり褒められたもんじゃないこともしてるとか、してないとか。で、そいつと綺麗なお兄ぃさんが、すっげえ親しそうでさ、ってか、ありゃアーヘルさんの一方通行だね。ずいぶんと機嫌取りしてたぜ。でも、いったいあの綺麗な人は何者なんだろうねえ。サリエル様とも関係がありそうだし、王宮への出入りを許してもらうために口利きを頼んだとか……、それはないか」

 あながち無きにしも非ずというところか。


 商売が関わってくるなら、王宮への近道は公爵家への袖振りというのも一つの手であろう。将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、だ。公爵の懐に入り込むために、美しいイリアがサリエルを陥落するという手立ても攻略法として当然考えられる。


「どうだろうな。ないこともなさそうだ」

 ランスがシャルジュに笑い掛けた。


「え? そうかい? へへへ」

 賛同を得たのが嬉しかったのか、照れ臭そうにシャルジュは頭を掻いた。


「シャルジュ、夕べの例の女性については何か聞いてないか?」

 相関関係にあるはずだという思いがどうしても消えない。


「ああ、あの人、そうそう。あの人。なんか、王宮に仕えてる、じゃない仕えてたっていう人もいるし、馴染みの御用達だっていう人もいるし、よく判らないんだ。きっと、元々が正体不明なんじゃないの? あっちには何某、こっちには何某ってみたいにさ」

「お前、想像力豊かだな」

 ランスが感心して言った。


 道行の間に、自ら学はないと言っていたシャルジュだが、どうしてなかなかいろいろなことに気を配れるようだ、と大地も感じた。処世術に長けているのは、経験の積み重ねばかりではなく、シャルジュが本来持っている才覚にもよるのだろう。


 シャルジュが案内人になってくれて、本当に良かったと大地は思った。


「まあ、想像するのはタダだし、自由だしな。ところで明日の予定なんだけど」

「ああ、そうだな。決めておくか」

 ランスは、優しい笑みをシャルジュに向けた。



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