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 通行止めによりワープ航路を降りた宇宙船のうち、セルクク星へ向かったのはシヴァン・アルレットの他にはなかった。多くの船は、ゲート近くの駐船ポートで時間をつぶすか、商業船なら災い転じて福と為せとばかりに新規開拓や予定外の商売を画策したりもするのだろう。長期戦になるなら、次のゲートまで通常航路で迂回するという選択肢もあるだろうが、二、三日程度ならゲート付近で待機しているほうがいい。


 セルクク星は海と陸との比率が半々ほどの星だ。エスネムによる自動操舵でセルクク星の駐船ポートへと乗り入れる。


 ポート入り口で船の鼻先を遮断機が遮った。船籍票スキャンが開始されたのだ。


<セルククに降りるのか? 目的は?>

 通信機から誘導係員の、緊張感とは無縁のけだるい声がした。この未開の星を訪れる者は少ないのだろう。


「降りる。観光だ」

 ランスが答えた。


 スキャンが終わったのか遮断機に埋め込まれたパネルが船籍クリアを示す青い表示に変わった。と同時に係員の驚きの声がした。


<おいおい、おいおい。アルレット号さんよ。スビニフェニスだって? うっそお。まじか。実物を見るのは初めてだ。幻の星。すげえ。なんだって後生大事に籍をそのままにしておくんだ? どこか別の星に落ち着く気はないのか? それにしてもずいぶんとご機嫌な船じゃないか>

 一気にまくしたてた係員の声が、ちょっとした興奮で昂っているのが判る。


「旅の途中なんでな。あれこれいじってあるのさ」

 にやりと笑って答えたランスを見て、大地はこの係員をこうも興奮させる理由を、この船は持っているのだろうと思った。


 ランスとエスネムから聞いたところによれば、スビニフェニスは宇宙連合の登録上、すでに存在しないとされている。それも爆発などではない。消失だ。ある時突然にこの宇宙空間からその姿を消してしまったのだ。かつてスビニフェニスから出航したたくさんの船が、戻るべき故郷を失って、居場所を新たに求めざるを得なかったことは想像に難くない。


 ものごとの便宜上、船籍を登録しなおす船が圧倒的に多かったのだろうと思えた。それにしても大地はランスの主のことを詳しくは聞いていないが、この船の新しさ、もしくは珍しさ、あるいはその存在自体を考えると、現役として稼働しているということがどれだけの技術、あるいは財力を持っているかの証なのではないかと思う。


<へえ。まあ、うん。そっか。じゃあ、よい旅を>

 なんだか楽しそうに、係員はそう言うと遮断機を上げた。


「どうも」

 ランスが言うと同時にエスネムはシヴァン・アルレットを前に進めた。


 誘導灯に従って指定の場所に船を停めると、シヴァン・アルレットの側面連絡扉に、するすると伸びてきた連絡通路が接続された。


「じゃあ、行ってくる。留守番頼むぜ」

「よろしく、エスネム」

<了解。お任せあれ>

 大地はランスの後に続いて、連絡通路をとおり、駐船ポート管理棟へと移動した。


 管理棟ではセルクク星の通貨への両替と、現地人っぽい衣服を調達する。国々を渡り歩くのでなければ、直接目的地の通貨や衣服を選んだ方が面倒くさくない。


「どこがいい?」

 ランスは観光自体には積極的な興味を抱いていないようだ。大地は壁に設置されたざっくりとしたセルククの大きな世界地図を眺め、地区ごとに色分けされている理由を尋ねた。


「ああ、これは治安の度合いだな。どうする? 景色重視か、安全性重視か」

 宇宙標準語で地図に記された情報を読み取って最も景観のよいらしい場所と、それから現在戦時下にない場所とを順に指さして、ランスは大地にとっては聞くまでもないことを尋ねた。


「こっち」

 大地はランスが安全性を示した地区を指さして答えた。


「オッケー。では、クアルニィグへ行くとするか」



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